暗い世界
それからは、まるで何事もなかったように平然と歩いた。
気づくと前にはさっき入ってきた白い扉があった。
帰りは識別カードの読み取りだけで済んだ。
白い扉が開くと階段がまた上の扉に続いている。
行きも見た光景のはずだが上から見るのと下から見るのはどこか違って見える。
当たり前のことだが上の扉は中の部分はレンガではなく白い素材でできている。
この扉の向こうには何も変わらない学校があると思うと不思議だった。
美麗が壁のはじにある不気味な赤いボタンをしっかりと押した。
3秒ほど押すと美麗は扉を見上げた。
そこには、小さな青い光が点滅していた。
「今、何をしたんだ?」
「外に人がいないか超音波を扉の外の周辺に出してその反射の仕方から人がいないか確認するシステム。誰もいないときは青、誰かいるときは赤。TTOの人は反応しないように識別カードに超音波無反応チップが内蔵されていて、それを身につけている人は反応しない。」
「なるほど」
普通の生活にはないシステムばかりで圧倒される。
最新のものが適用されているのは確かだろう。
美麗がまた僕の腕をつかむと同時に無音になった。
「周辺の時間を止めた。」
上の扉の開く音だけが静寂の世界に不気味に響いた。
先には動きが止まっていることを除けば何も変わらない世界が広がっている。
これは、外見だけなのか?
全てが変わっているのか?
そのことを今になってわかっただけなのか?
「今も昔も何も変わらない。あなたが世界の暗い部分を知っただけ。これが真実。真実に打ちのめされてやっと強くなっていく。人間は、そういうものよ。」
それだけいうと美麗は階段を昇っていく。
「そうか、そうなのかもしれない。」
僕はきっとこれからこの言葉の本当の意味がわかるのだ。
きっとじゃない、確実に。