再会
美麗は喜びととまどいが複雑に混ざったような表情をしている。
「月見勇士って誰だ?」
僕はさっきから気になっている質問を投げかける。
「私の恩人。」
それだけ答えると、両側の係の部屋を静かに見つめている。
恩人?
どういうことだろう…
情報収拾係の部屋は、組合長の部屋から一番遠い所にあった。
美麗は部屋の前で精神統一をするような表情でドアを見つめていたが、一歩前に出た。
短く電子音が鳴ると、扉は静かに横に開いていく。
入り口と同じように識別カードを読み取ったようだ。
そこは、想像していたよりもずっと広い部屋だった。
そこで、一人の人が机の上で小型媒体を見ている。
扉が閉まると同時に僕達に目を向けた。
そして、美麗に気づくと、驚いたように目を見開いた。
月見勇士はしばらくの間呆然と美麗を見つめていたが、ゆっくりと立ち上がった。
かなりの長身だ。
180cmはゆうに超えているだろう。
肌は白く、切れ長のつり目が印象的だ。
髪はセットしているのだろうか、綺麗に整えられている。
年齢は20代前半位に見える。
「お久しぶりです。あの時は本当にお世話になりました。」
美麗は過去の記憶を思いおこすかのようにゆっくりと丁寧に言った。
その瞳には、嘘ではない真の感謝の気持ちがありありと浮かんでいた。
表情を見ていると、少しずつ清水のように冷たい感情が自分の心のなかを支配していくのが分かった。
そして、暗い奈落の底に体ごと落ちていくような感覚がする。
自分でも驚いてしまった。
この気持ちはいったい何だろう。
最初は自分でもわからなかった。
でも、少しずつこの気持ちの原因が分かってきた。
僕は今嫉妬したのだ。
自分には見せてくれない表情をさせた、月見勇士に。
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