組合長との初対面
青井良彦さんの年齢は30代半ばくらいだろう。
短い髪は、綺麗に整えられて清潔感がある。
しばらく観察していると、いきなり美麗が深々とおじぎをした。
僕も慌てて頭を下げる。
「君が松原強か。花園がTTOに人を連れてくるのは初めてだから、どんな人か気になっていた。」
そう言うと、こちらの方に椅子を向ける。
「君は確か松原杉子の子供だったな。」
「はい。母がいつもお世話になっております。」
数日前に美麗に叩き込まれた礼儀作法通りに答えた。
青井さんは、一瞬驚いた顔をした。
「やっぱり子は親に似るものだな。礼儀正しさは同じだな。」
関心したような言い方だった。
実際は親の影響ではないことは確かだが、あえて黙っておいた。
「組合長。松原強に名刺を次の会議までに作っていただけますか。」
「分かった。会議で紹介もしないといけないしな。」
「お願い致します。もう一つ、これは私の勝手で申し訳ないのですが、松原杉子さんには松原強が来たことは言わないでください。」
「…分かった。」
少し困っているような曖昧な返事だ。
組合長自体、対処に困るということか…
「お願いしますね。それでは、失礼致します。」
美麗は強く念を押すと軽くお辞儀をし、すぐに出て行こうと歩き出した。
「そうだ。言い忘れていた。」
組合長の一言で僕達は向き直った。
「月見 勇士が一昨日戻って来た。今、情報収集係の部屋にいるはずだ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
美麗は複雑な表情でそう言うと、早歩きで部屋から出た。