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暑さ
いきなり夏が来たと思う様な暑さが来た。
こういう一番大事な時に温度管理をする装置が故障したらしく、窓を開けて耐えている。
自分は窓の近くだからそんなに暑くはないが、みんな腕まくりをして億劫そうだ。
龍は机にだるそうに突っ伏して、先生の話は全く聞いていない。
健太は、それなりに聞いているようだが、左手のうちわはせわしなく動き続けている。
美麗は準備が良く、小型風興機が机の横に置かれ、暑さが苦でもないようだ。
僕はうちわも風興機もない。
その時、窓に一番近い列にいる赤川が目に入った。
右腕だけをまくり、左腕はまくっていないというおかしな格好だった。
僕に気付いたが、何事もなかった様に電子黒板に目を戻した。
5月になり、今日はTTOの挨拶に行くことになっていた。
実際に会議に行くのは5月の後半で、4月の会議は入学式の次の日だったらしい。
「松原。さっきから何を見てんだ。授業を聞け。」
いきなり、先生に注意されて驚いた。
中学校に入ってからは、先生に注意されないと決めていた目標も1ヶ月で失敗に終わってしまった。