土曜日の昼食時に…
「よし。」
でき立ての匂いがキッチンに立ち込め、快く空腹を刺激してくれる。
特製スパゲッティーと美麗に言ったからには、それなりのものを作らないと立場がないので少し苦労した。
この前美麗の家に行ったことが、まるで昨日のことの様に感じる。
今日は美麗が僕の家に来る日だ。
綺麗にスパゲッティーを白い皿に盛り付けていく。
ペペロンチーノで海老や、ベーコンなどが彩り良く盛り付けられ、我ながら良く出来たと満足している。
毎朝、学校に持っていく弁当を作っていた成果が出て料理が全体的に上達したようだ。
「ピーンポーン」
ちょうど良いタイミングで異様に大きな音の呼び鈴が鳴る。
もしかしたら、システムが壊れているのかもしれない。
窓から美麗だということを確認すると、勢いよく外に飛び出した。
「やぁ」
「こんにちは。」
他人行儀に会釈をしてくる。
初めて見る美麗の私服は水色のカラーパンツにお洒落なTシャツを合わせている。
細い体型にはズボンがよく合っていた。
「昼食出来たから、冷めないうちに早く食べよう」
さっさと中に入ろうとしたが、美麗は躊躇しているようだ。
「どうした?」
「あなたのお母さん今いる?」
「いないよ。土曜日の午後は駅前の喫茶店で仕事してるんだ。」
「そう。」
そっけない返事をすると、僕に続いて家に入った。
母さんとあまり関わりたくないのだろう。
それは、ただ気まずいだけなのか、それとももっと違う理由があるのかもしれない。