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みんなが見守る中で

 数日後のある日、初めての体育の授業があった。

 最初は整列運動の仕方をやったが時間が余ったこともあり、ドッチボールを男女混合でやることになった。


 試合は1対6という人数差でほとんど勝ちを諦めていた。

 僕達のチームの最後の一人は美麗だった。

 

 男子がみんな脱落というのは男のプライドが台無しだが仕方ない、そんなことを考えながら外野から見守る。

 授業終了まで残り5分ということもあったのか、ボールが追加され二つになった。

 それでも、美麗は必死と言うよりは淡々と逃げている。

 その身のこなし方は普通ではない。

 無駄な動きが何一つない様に見える。

 二つのボールを器用によけている。

 訓練されている?

 直感的にそう思った、これは素人がただ逃げているのではない、次にどうくるか予想している。

 まるで訓練されたような、鮮やかな逃げ方だ。

 美麗の目は誰もがすくみ上がるような冷たい目をしていた。


「ピー」

 僕は美麗だけしか見ていなかった。

 それほど異様な光景なのだ。

 モニターの電子音が大きな音をたてて鳴った。

 試合終了?

 まさか、美麗はまだ当たって…違うその時やっと気がついた。

 敵のコートの最後の一人が当たったのだ。

 6人もいたのに全員あてた?

 美麗が逆転させた。

 ボールから逃げながらも敵の人をあてていた。

 背筋に寒けが走る。

 怖い。

 そこにいる誰もが声を出さなかった、いや多分出せなかったのだ。

 

 授業終了の電子音が鳴ると美麗は何事もなかったように一人体育館を出ていった。

 息は言うほどきれてはいなかった。

 僕は美麗と話したくなり体育館の外に走り出した。

 自分のどこに走る力が残っていたのか不思議だ。

 雨が降っていたが、この時はそんなことはどうでもいい。

 そう思える。

 一人雨の中を歩く美麗の姿は、どこか寂しく見えた。

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