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なぜ?
「それは、松原君が花園さんを美麗と呼んだから。」
「え?どういうこと?」
「花園さんは、自分に対してなれなれしくされるのが嫌なの。例えば、名前の呼び捨てとか、〇〇ちゃんとかね。だから、みんな花園とか花園さんって呼んでいるの。私達みたいな、身分が下の人は花園さんね。」
「美麗さんはどうなんだろう。やっぱり嫌なのかな?」
「さあ…考えたこともなかった。みんな花園さんのこと怖がってるとこあるから。言う人いないんだと思う。それで、松原君にだけなぜ呼び捨てを認めてるのかわかる?嫌そうにもなさらないし…」
「さぁ…さっぱり…」
「会った時の印象が良かった?まさか、あんなに人に心を開かれない方が?」
「そんなに、気になるのか?」
「まあね、いつも何を考えていらっしゃるかわからない。異様に心が冷酷そうで、真顔で何でもなさりそう。わかる?」
「まあ…でも、そこまで…」
「きっと松原君もそのうち私の言っていることわかると思う。あっごめんなさい。忘れてた。これ。」
杉吉はポケットから名刺を出し、僕に差し出した。
それは、TTOの名刺だった。