銃
しばらく銃を眺めた後、美麗に向き直った。
「銃を持つのは国に認められた組織じゃないと駄目だよな。」
「でも、持たないと危ないの。分かるでしょう。それにTTOは一般的に知られて欲しくないから、許可申請も出来ない。銃を持ってる人は沢山いる。隠しているだけでね。法律を守ってあなた死にたいわけ?」
「いや、それはないさ…でも…」
「法律を守る、国に尽すと言うのならあなたのことなんて、しらない。TTOの敵は国になるかもしれないの。もし、防衛対策班に言うと言うなら…」
美麗はナイフを強く握りしめた。
「やめてくれ、分かった。言うとおりにするさ。」
そう言いながらも、薄々気付いていた。
本気で殺す気はないのだと。
「じゃあ、ポケットに入れておくから。」
「そう、じゃあくれぐれも見つかることのないように。」
美麗は脱ぎ捨てた制服を再び着ると、出した物をポケットに戻していく。
「人のことを信じないというわりには、よく、人にナイフとか銃を渡すな。」
「あなたが私と本気で戦ったとしても、あなたが私に勝てるわけないから。」
「なるほど、そうだとしても僕を助ける理由なんてない筈じゃないか…言ってること矛盾してる。」
美麗は僕のことを軽蔑した目で見た。
「助けてあげてるのに、そういう言い方ないんじゃない?」
言葉はキツイが、声は淡々としていて怒りは感じられない。
「悪い。つい…」
美麗は僕を少しの間黙って見ていたが、やがて階段につながる扉の前に行った。
「美麗は、さっき僕のこと本気で殺す気なかっただろう。」
一瞬美麗は止まったが、僕の問いかけには答えず扉の向こうに消えていった。
それはないという意思表示だったのかもしれない。




