謎めいた視線
例のテストの結果が戻ってきた、直後の休み時間になった。
「はぁ…」
小型媒体に受信した、テストの結果を見つめていた。
初等科だからどうにかわかるだろうと高をくくっていた僕が馬鹿だった…
「強!!」
いきなり声をかけられ、ビクリとする。
「いちいち大きな声を出すなよ…」
呆れ果ててまったく迫力のかけらもない声になってしまった。
「どうだった?俺は一桁がなかったから、安心したぜ。」
「まあ、僕は大体50位だな…」
そんな事を言いながら、チラリと龍の近くの健太を見た。
健太は視線に気付くと、なぜか恥ずかしそうな顔をして答える。
「大体80位だよ…」
龍はその一言を聞くと、軽く舌打ちをした。
「みんな、頭いいんだな。俺はどうせ馬鹿ですよ。聞いた俺が間違いでした。」
明らかに演技的に言うやつだ。
健太は軽く困ったような顔をして僕を見たがさりげなく目をそらしてごまかした。
僕ら三人は見事に成績が上、中、下のようだ。
僕は席を立つと、美麗の席に駆け寄った。
なぜ、わざわざ声をかけようとしたのかは自分でもよく分からなかったが、多分皆が話している時に、美麗だけが一人でいたからかもしれない。
「美麗はテストどうだったんだ?」
その僕の一言で、数人が驚いた顔でこちらを見る。
僕は理由が分からなかった。
その中で特に、赤川 緑と杉吉 美香子が眉間にしわを寄せ、悩ましげな表情で僕を見ている。
体育館の前で会ったあの赤川と違い、今は大分青ざめて、そして何かを恐れている様にも見えた。