感じる
その後の入学式は何事もなく終わった。
この後は学校探検だ。
わざわざこんなことをしなくてもいいと思ったが先生が決めたことだから仕方ない。
そんな事を考えながらため息をついていた。
「何ため息なんかついてんだよ、また同じクラスじゃないか。俺ら腐れ縁だな。まさか7年間クラスが同じとはな。喜ぼうぜ。ハハハ。」
そう話しかけてきたのはなぜか入学式から髪を染めているいつもうるさい奴だ。
ニヤニヤしていて気色悪いが、悪い奴ではない。
小池 龍というそいつの後ろには北上 健太がいた。
二人とも、小学校から仲が良い。
よくよく考えると美麗のことばかり気になっていて、友達と話していなかったことに気づいた。
「確かに腐れ縁だな。そのせいでいつも僕まで悪影響だ。」
そうやって悪態をついても動じる風もない。
こいつのせいで授業中にうるさいと怒られたことが何回もある。
少しは健太を見習って授業を真面目に聞くか、と思いチラリと健太を見ると、学校の構造を一日で覚えつくすという決意でもあるのかよく学校を見ている。
廊下は寒くも暑くもなく自動で温度管理がされている。
一つのボタンを押せば、クラスの電気やら、電子黒板などのスイッチがつくらしい。
小学校よりは機能が充実かつ便利なようだ。
その時、いきなりほんの数秒の間沈黙よりももっと音がないような、世界の全機能が停止したように感じた。
目の前の景色がゆがんで揺れているような気がする。
だが、ほんの数秒後にはいつもと変わらない日常が広がっている。
誰も何も言わない。
自分だけが感じた?
地震なら高い技術によって作られたこの建物がある程度揺れを吸収してくれるはずだ…
今までも何回か体験したことがあるこの現象。
今がこれまでで一番世界が歪んだ。
「大丈夫?具合でも悪い?」
健太が心配そうな表情で顔を覗いてくる。
その声で我に返った。
「大丈夫。元気だ。それより、今何か揺れなかったか?」
「えっ?揺れてないとおもうけど。」
健太がますます心配そうな顔をする。
「保険室でも行ってきたらどうだ?前もそんなこと言ってたよな、確か。おまえだけ他の人には感じない何かを感じてるのかもな。」
ニヤリと冗談めかして言うと調子を伺うように龍も顔を覗いてくる。
二人には、心配をかけたくはなかったからこれ以上は今の現象には触れなかった。