Time Limit
「Time Limit…か…」
自分にしか聞こえない小さな声で呟いた。
「それが、欠点?」
美麗は空になったコーヒーカップを答えの言葉を探しているような表情で見つめている。
「私達は時間を移動出来る。ただ、タイムリミットがある。時間を飛ぶと、体力を消耗してだんだんと疲れていく、そして疲れが限界に達すると意識が無くなり、そしてさらに体力消耗が激しくなり、しまいには…」
美麗の目にはその時確かに悲しみの色が滲んでいた。
「死んでしまう…」
美麗の人間とは思えない冷え切った声が微かに、本当に微かに揺れている気がした。
大分時間が開いた後、言葉を続けた。
「その欠点を知られればTTOに憎悪という名の矛先を向けている人達が本格的に攻めてくるかもしれない。」
美麗の言っていることが信じられなかった。
大多数の人々が知らない、暗い漆黒の世界が明るみに出た時に人々は何を思い、そしてどんな行動を起こすのか。
僕には想像もつかない。
世界が敵になる。
そんなことが本当にありえるのかもしれない。
世の中の常識が全てひっくり返るような事が…
「話を変える」
美麗は唐突に言い、思考を取りあえず停止せざるおえなかった。
僕の反応を少し窺うと、ゆっくりとした口調で話し出した。
「あなたの父親は未来からTTOを援助しに来ていたの。彼も、タイムトラベラーだから。タイムハーフは、本来いてはいけない。なのに、規則を破っただから問題になってこっちの時代には来なくなった…この時間軸のTTOに、来るのを禁じられた。」
「母さんを見捨てて自分だけ面倒事から逃げ出した訳か…
「詳しいことは知らない。でも、あなたのお父さんも、ひとりで未来に行きたくはなかったはずよ。
結局は、このことが知られないように関わりを拒絶したんじゃないかな…」
驚きを隠せない。
美麗は冷静な目つきでそんな僕をしばらく見ていた。
「あなたも時間が移動出来るかもね。あなたが前言っていた変な時間の歪みは時間が飛べる人しかわからないものよ。」
「えっ?」
そんな様に驚く僕を、美麗は冷笑する。
「だから、他言は駄目と言ったの。話した人が敵だったらどうする気?」
「誰も信じられないじゃないか。」
「それでいい。人は信じるものじゃないわ。今は仲間でも、明日には敵かもしれない」
「そんな…健太や龍も?」
「確信を持てない人は疑いなさい。自分だけを信じるの。」
「人は一人で生きてないし、助け合っていかないと。」
「狙われればそんな綺麗事は言えない。いい?」
母さんが恐れるような態度をとる理由がなんとなく分かった気がする。
「過去に何かあったのか?そして、今言ったことは自分が思ったことなのか?」
「違う。過去は忘れたわ。いらないから。」
忘れたのではきっとない。
忘れようとしているのかもしれない。
真実を覆いかくしていた霧が徐々に薄れ、全ての霧がなくなった時に自分は何を感じ、何を言うのだろうか。
今、まだ半信半疑の自分には想像もつかなかった。
美麗の表情反応一つ一つを読み飛ばさないようにおねがい致します(≧∇≦*)
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