第十六話 『最弱の戦い』
「アルフ、そのまま真っ直ぐゆるゆるっとした感じで進んで。五十メートルくらい進んだ後に二時方向へ転進。第三班は進行方向に風魔術を投射して第一班の進撃を補助。アルフ達が食いつく隙間くらい開ければ良いよ。はい、スタート」
視界の片隅に表示させた戦術情報に視線を移し、僕は最前線のアルフ達に指揮を投げる。直接声を飛ばすには随分離れているので、僕の指示は『パーティ管理』スキルで習得できる『ダイレクトボイス』で通達される。
現在、システム機能のウィスパーチャットやパーティチャットは使用できないが、技能による情報伝達は可能なようだ。同じ戦場内にいるパーティメンバーに雑音無しで明確に言葉を伝達できるだけの技能であるが、今はそれだけでもありがたい。
「今行きますユーゴ殿! さあ、道を開けてもらいますよ!!」
先陣を駆るアルフが、その容姿に似合わない雄叫びを上げて道を切り拓いて行く。
僕らが降下したのは戦場の北側――レスタール北方騎士団左翼の前方百メートルの地点。先行した『風見鶏のとまりぎ』駐屯部隊十八人は、戦場を挟んで六百メートルの反対側の右翼に戦線を展開中だ。後一時間は持つだろうと踏んでいる。
「咲耶、転進方向に『ヒルジャイアント』が一匹居る。『震雷符』のリキャストは?」
「くふふ、あと五十秒ほどじゃ。威力は申し分無いが、連射できんのが珠に傷じゃのう……『落鵬符』でも撃っておくかえ?」
何故降下の時点で彼らと合流しなかったのか。それはクォーツの多くが北方騎士団の左翼へ集中していた事が原因だ。
駐屯部隊は少人数ではあるが、一人一人が平均レベル280オーバーの猛者の集まりである。その強さと堅さが防波堤のような役割を果たし、彼らに攻勢を阻まれたクォーツ達は、さながら傾斜陣地に流されたのかのように騎士団左翼に攻撃を集中させていた。
「いや、付帯属性無しの風属性じゃ一確出来ない。ここはまかろん特製の術珠で……」
騎士団左翼前方に初期展開した僕達の目的は、左翼のクォーツの注意をこちらに向けて騎士団の戦線を立て直す猶予を与える事だ。故に、敵の真っ只中を掻い潜るには悠長なスピードで進軍をしている。
「第二班――おかゆさん、処理の状況は?」
「ひぃぃぃ、順調ですぅ……アルフさん達が左側に敵を流してくれているので、そっちから中にちょびっと漏れちゃってますけどー!」
「もうちょっと騎士団に引っ付いてるクォーツを引っ張るから、右側もそれでトントンになるはずだよ。ちょっとキツいかも知れないけど頑張って」
「そんなぁーっ!?」
EGFでは八人のパーティを基本構成とし、パーティが複数合体する事によってマルチパーティ(24人)・レイド(80人)・マルチレイド(200人)・レギオン(1000人)という単位で管理される。
駐屯部隊にまだ合流していない今の僕らは三十人で四個パーティ弱分。マルチパーティより多く、レイドに足りない人数――ニアレイドという状態にある。EGFに存在するコンテンツの八割強は攻略できる人数だ。
「一番弱い『ゴブリン』なら僕でも行けるみたいだなぁ。『最終試練』と同じ位の難しさって言う位だから、『レガシー・ゴブリンロード』あたりがわんさか出てくると思っていたんだけど……ひょっとしてユネ達だけじゃなくて、僕も強くなってる?」
「ヒビキ様! 『ゴブリン』よりちょっぴり強い『オーク』が抜けました!」
「ごめんユネ、あとよろしく!」
「はいっ!」
パーティ編成にあたり、僕は四つのパーティにそれぞれの役割を与えた。
「かつてリィ様が率いた嚮導の務め、存分に果たさせていただきますよ!!」
アルフの指揮する第一班が嚮導役だ。進行方向前面に展開してクォーツ達を掻き分けて進軍する役割を持つ。必然的にノーダメージの敵と正面衝突せざるを得ないため、防御役系のフェロー達を中心に配置した。
「わ、私なんて食べても美味しくないですよぉー、びえええーん!!」
おかゆさん――『料理人』のおかゆ・オートミールさんがリーダを勤めるのが、両翼に展開する処理役の第二班である。アルフ達第一班が痛めつけて両側に流したクォーツ達を処理する役目を持ったパーティで、『剣士』や『武闘家』等の物理攻撃役が担当である。
何故料理人のおかゆさんがリーダーを務めているのかは、まぁ色々とあるのだ。
「さあさ、灰も残さず燃えろ燃えろ。落日にはまだ遠いが、汝らが燃ゆる焼滅の灯は我が遊興の慰め位にはなろうて」
嬉々としてクォーツ達に盛大な雷撃や火炎を浴びせる『仙術師』の咲耶には、第三班のリーダを任せてある。第一班と二班が作る壁の内側からの技能による遠距離攻撃で、クォーツの集団を面制圧する役割を持たせたパーティだ。
遠距離攻撃が可能で水準以上の攻撃力が必要と言う条件のため、『四元魔術師』や『仙術師』等の魔法攻撃役のフェローが多い。
「マスター、少し左翼の支援に行きます。危なくなったらすぐに大声で助けを呼んでくださいね!」
「完全に守られてるなぁ……」
僕の目の前に迫った『オーク』を銀剣の一振りで葬り去ったユネは第四班のメンバーだ。第四班の役割は遊撃。第一班と第二班が構築する壁の間を擦り抜けて、各班後列の回復役や第三班の魔法攻撃役を護衛する役目を与えた。
壁の内側を忙しなく動き回る関係上、ユネのような『術法剣士』や『ナイトウォーカー』等の小回りの聞く万能職が充てられている。なお僕とラシャも第四班に組み込まれている。
「ヒビキ様! 前面の敵密度上昇に伴い、第一班の進軍に若干の遅延が発生しています!」
「横の接敵面積が広すぎるね。少し内側に寄ろうか。もっと鋭い楔の形になろう。三十秒で終わらせるよ。第三班は他班の陣形変更を補助して」
そして、第四班に居候するこの僕がこの四パーティ計二十八名の指揮を預っている。
MP以外の突出したパラメータは無く、雑多なスキルを浅く広く取った僕は攻撃役・防御役・回復役のどれにも適さない。戦士よりは魔法が使えて、魔法使いよりは剣が使えるという中途半端なステータスだ。
何か一芸に秀でていれば、それに相応しい役割が必ずあるのがEGFというゲームの良い所であるが、残念ながら僕にはそれが無い。唯一『パーティ管理』スキルだけはマスターレベルまで上げてあるので、こういう中規模以上の戦闘ではいつも指揮官のような役割を担ってきた。これも一芸と言えば一芸か。
「『最終試練』とほぼ同じ難易度って聞いたけど、そこまでの手ごたえじゃない……」
第二班が構築する右翼の壁を擦り抜けた『ゴブリン』が眼前に迫る。
雄叫びとも思えない奇怪な音を声帯器官から発し、紫色の水晶が打ち付けられた棍棒の一撃が僕に振り下ろされた。
「敵のステータスはフォルセニア大陸のフィールドモンスターとは思えないほど高い――」
空気を叩き潰しながら迫る棍棒を辛うじてかわす。
身体を横に流す僕の動きを『ゴブリン』が視線だけで追ってくる。血走り、どす黒い感情を宿した眼。EGFでの無機質な電子データの集合体では無い、生物特有の生々しさがそこにはあった。
右手に握った愛剣にマナを流し込むと、すかさず相手の懐に潜り込み『ゴブリン』の身体を逆袈裟に切り上げた。ファーレンハイトの炎剣の武具スキルの一つ『灼滅の刃』の効果によって炎に包まれた僕の一撃は、『ゴブリン』の身体を両断する。
皮を裂き、肉を抉り、骨を断つ。まさに生命の感触とも言える複合的な手ごたえが、剣を通して感じられた。
「物量もミドルコンテンツの大規模討伐クエストと同程度ある――」
相手のHPパラメータをゼロに書き換えたのではなく、鼓動を宿した生き物を殺したという実感が僕に宿る。しかしそれに伴う罪悪感や後味の悪さは無く、僕の内面はひたすらに冷淡だった。
「――だけど、それだけだ」
右翼で小さな悲鳴が上がった。
陣形変更の隙を突かれ、間の開いたスペースを六体の『オーク』がこじ開けようとしていた。担当のフェローが応戦するが、じりじりと隙間は広がって行く。
遊撃のフォローは間に合う。しかし、到着まで十秒はかかるだろう。
――スペースは十分。射線も取れる。
ならば、と炎に包まれたファーレンハイトの炎剣へ更にMPを注ぎ込む。その量、全MPの半分。
軽い酩酊感に襲われるが戦闘に支障は無い。
『灼滅の刃』の効果は『魔力変換(浄炎)』――簡単に言うと、注いだMPが多ければ多いほど巨大な炎を生み出すことができる。この特殊効果により、長剣類であるファーレンハイトの炎剣が、身の丈の数倍はありそうな巨大な炎の刀身を纏った。
普段は使い道が無いほどの大容量のMPが珍しく役に立つ場面だ。
「燎原の火よ、紅蓮の風を以って奔れ……」
テニスのバックスイングの要領で斜め下から上に振り抜くと、巨大な紅蓮の炎を纏った斬撃が件の『オーク』を一匹残らず飲み込んで行く。
炎の勢いはそれでは止まらず、後ろに控えていた『ゴブリン』やら『マンティス』やらを悉く焼き焦がし、二十メートル程走った所で消滅した。後に残ったのは一本の車輪が駆け抜けた轍の如き炎の残滓。
アホみたいに高いMPと『灼滅の刃』の効果、『長剣術』の下級技能『ソニックブーム』の性能に頼り切った僕の通常状態の必殺技そのいち。
通称ヒビキ砲――命名はまーくん。
攻撃力だけを見ればそこそこだが、コストパフォーマンスはお察しである。ユネやまかろんなら同条件でドラゴンを墜とすのだから。
僕の攻撃によって倒されたクォーツの水晶が一斉に砕ける。その破片を掻い潜りながら、回避に成功した『ステップウルフ』が僕に肉薄した。
剣を振り上げた体勢の僕にはこれの一撃をかわす事は出来ない。
乱雑に生えた牙が僕に届く直前、疾風のような速さで駆け抜けた銀閃がその首を両断した。くるくると体液の跡を引いて狼の首が空中に舞う。
風の術法剣――言うまでも無くユネの一撃である。
「マスター! ご無事ですか!?」
駆け寄ってきたユネの頬の血糊を拭ってやる。
「うん、大丈夫。皆がいてくれるなら自分の身体くらいは守れそうだよ」
今まさに腹を抉られかけたのに、よくもまぁぬけぬけと言ってのけるものである。
倒せると言っても、それは『ゴブリン』や『ステップウルフ』のような弱いクォーツに限る事であり、『オーク』や『アーマーグール』あたりの少し強めのクォーツとガチンコだとちょっとキツい。
「無理はなさらないでくださいね……」
「うん、自分の弱さは僕が一番分かってるつもりだよ……だからよろしく頼むね?」
頭一つ分低いユネの頭を撫でてやると、彼女は恥ずかしそうに目を伏せた。
「うぁぁ……戦場ですよマスター……続きはお家で……」
「戦況は――把握してるつもりだけど、どんな感じだい?」
戦術情報を示すウィンドウで大体の状況は把握しているつもりだが、現在は機能していない項目も多い。HPやMPの項目は非表示になっているし、得られる情報は限定的だ。パーティメンバーの状態も生死でしか分らない。
幸い命を落とした――『昏睡』状態以上に陥ったメンバーは居ないようだが、詳細は各戦線を駆け回っているユネが一番詳しいだろう。
「全班問題ありません。軽傷以上の傷を負った人は居ませんし、回復役の手も届いています。これなら枢機司教級の更紗お姉ちゃんが居なくても問題なさそうです。あとは……えーと、なんか言葉で言うのは難しいんですが……うーん……」
ユネが少し困ったように小首を傾げる。
「楽……です?」
「楽?」
意外な言葉に、僕もユネに釣られて首を傾ける。
「全員がたくさんのクォーツに囲まれる事も無ければ、一箇所にクォーツが集中して、慌ててそこに駆けつけるということもありません。多少の波はありますが、全員が自分の仕事を淡々とこなす事ができている――みたいな……うーん、そんな感じです」
「んー……」
僕がやっていることは至極単純な事だ。
敵の配置と動向を確認し、皆が処理できないほどのクォーツと接敵しないように進軍方向や速度を調整する。必要に応じて敵の動きを制限させ、各人に技能の使用指示を出し、パーティと敵集団の動きを大雑把に掌握する。ただそれだけのことである。これには経験以外の特別な才能や能力は必要無い。
戦闘開始からそれなりの時間が経過したが、僕はこのクォーツとの戦いにフェローの皆が畏怖する程の手ごたえを感じていなかった。
一体一体の能力はEGF時代のそれと比べて数倍ほど高くなり、敵の物量に関しても二百人程――マルチレイドを組むのが妥当と思われる数だ。
しかし、それだけである。
戦場は多少の隆起や岩石などの障害物はあるがほぼ平地。EGF時代に苦労させられた、技能使用制限やダメージ地形等の意地の悪いギミックは存在しない。クォーツ達は高度なAIによる戦術を駆使するわけでもなく、ただ単調に津波の如く押し寄せ、手近なフェローや北方騎士団の面々に襲い掛かっているだけだ。
故に奴らを処理する『型』さえ決めてしまえば、後は淡々と対応できるものであり、決して無理ゲーと言う程の難易度では無い。
顎に手を当てて考える僕に、ユネが目を伏せて答えた。
「私達は誰かを指揮するという経験が殆ど無かったので……」
「あぁ、なるほど……君達はフェローだから……」
ユネの言葉で合点した。
指揮官として豊富な経験を持つフェローの数は限り無くゼロに近い。
多くのプレイヤーやフェローを自分の手足の如く操る指揮官ごっこという遊びは、ゲームならではの楽しみであり、その役割はほぼ全ての場面においてプレイヤーが担ってきたからだ。
『パートナー』とか『戦友』とか耳障りの良い言葉で装飾されてはいるが、あくまでフェロー達はEGFというゲームを楽しむためのコンテンツの一つであり、悲しい事ではあるが、客観的に見れば僕とユネの間にも『顧客』と『商品』という関係が成立している。
故にフェロー達は顧客であるプレイヤー達を差し置いて、商品である自分達が楽しむ事を良しとしない。常に彼らはプレイヤーに従い、忠義を尽くし、決して裏切らない。
元気系だったり、おっとり系だったりフェローの性格は千差万別だ。プレイヤーの嗜好が十二分に反映されるとは言え、百万人のフェローがいるなら百万人それぞれに固有の性格があり、完全に同じ性格を持ったフェローなど一人も存在しない。しかしフェロー達はどのような性格を付与されたとしても、己のマスターへの信頼や忠義を忘れる事は決して無い。
それは仕事の一環としてプレイヤーに仮初の愛想を振りまいているわけでは無く、もっと根本的な存在の性質として、プレイヤーの役に立つ事を志向する。
そのようにプログラムされたのか、複雑怪奇なAIの成長の果てにそうなったのかは、今はもう確かめる術が無いが。
「仕方が無いとは言え、ユネ達には辛い思いをさせる結果になったな……」
この世界に発生したクォーツが直接的な原因とは言え、彼女達の苦痛や苦悩の多くはプレイヤーとの関係性に根を張るものだ。
「いいえ、プレイヤーの皆様が居てこそ、今の私たちが在るのですから」
謝罪を口にしようとした僕にユネは首を横に振る。
「私達は自分のマスターが大好きです。自分を産んでくれたお父さん、お母さんであり、自分を創り出してくれた神さまでもあります。たまにいじわるをされるマスターもいらっしゃいますが、それでも自分のマスターを嫌いになることなんか絶対にありません。美味しいご飯を食べるよりも、綺麗な景色を見るよりも、自分のマスターの隣にいることができる――それだけで私達は満たされます」
EGFの時代から、彼女達は無償の忠義と信頼を僕達に捧げてくれている。痛みや苦しみを伴うように変質したこの世界でもそれは変わらない。
「今マスターはこの世界でただ一人、フェローとの関係を保ったプレイヤーです。そして、この世界に残された五万人のフェローの中で、私一人だけが自分のマスターとお話することができます」
そう前置くと、ユネはゆっくりと微笑んだ。
「だから、今の私はこの世界で一番幸せな人間です」
「人間……ねぇ」
仮にこの世界が本当の異世界なのだとしたら、彼女達の意思が物理的な形で納められていた電子ストレージはもう存在しない。彼女達の頭蓋の中には、現実世界の僕と同じ灰色の脳髄が詰まっているはずだ。
仮に脳が発する電気信号によって意思が成り、僕と同じ形態の肢体を持った存在を人間と定義するのならば、彼女達は僕と変わらない『人間』であるのだと思う。
僕もユネも同じ『人間』だ。
「りっちゃん様達はまだ眠っていると言うのに、嫌な子ですね……」
「優越感に浸りたいって言うのはとても人間らしい感情だと思うよ。僕も新しく実装されたレアアイテムを誰よりも先に手に入れて、皆に見せびらかしたいと思うしね」
空気を読まずへらっと笑う僕に、ユネが拍子抜けしたように苦笑した。
「マスターがそう言ってくれるなら、もっとわがままになってみても……?」
「嫌な子っていうのと、わがままな子っていうのは違うからね? むしろユネが滅多に言わないわがままを言ってくれるのなら、それは僕にとってご褒美です」
「ご褒美って……」
何故かユネは顔を赤くした。普段は聡い子だが、思考が変なベクトルに回転することがまれによくある。
その直後、左翼の方で『うひゃあっ』と緊張感の無い悲鳴が上がった。見れば尻餅をついたおかゆさんの両脇を三体のクォーツが擦り抜けて来た所だ。いつもの事と言えばいつもの事なので、その可能性は織り込み済みである。
「さぁ、そろそろ戦闘に戻ろうか。『オーク』が二匹、『ゴブリン』が一匹抜けてきた。ユネは『オーク』を頼むよ。僕は『ゴブリン』を――」
ファーレンハイトの炎剣を握り直すと、ユネが悪戯っぽい微笑をこちらに向けてくる。
「マスター、わがまま言ってもいいですか?」
「今は駄目! 僕、挽肉にされちゃうよっ!?」
情けない声を出す僕に、ユネがくすくすと笑う。
僕達がそれぞれの得物にMPを通すと、僕のファーレンハイトの炎剣には薄く揺らめく橙色の炎が、ユネのヒュペリオンソードには緑色のエフェクトで視覚化された風が渦を巻いた。
前線の誰かが打ち合わせたきんと言う剣戟の音を号令に、僕らはそれぞれの獲物に向かって走り出す。
駐屯部隊の戦線まであと少し。
届けば僕らの勝ちだ。




