41 暗闇の休憩
OCEANSのメンバーは最後に挨拶をするため、ステージに残った。FLAGの四人は途中で挨拶したので、最後は早々に引き上げた。次を思うと、設楽はめまいがした。水を飲み、呼吸を整える。舞台袖にはスタッフも大勢いるが、構わずに学校の制服に着替えた。半袖の夏服だ。
今日、ここには西川一家を呼んだ。一家でOCEANSのファンだったらしいので、三人とも喜んで来た。笹井と小森、浜原も招いた。チケットは杉田に無理を言ってまとまった席で貰った。だが、この六人はこれからのことを知らない。何も言わずにチケットら郵送で済ませた。来てくれているかも心配だ。
「さて、俺達のコンサートは本当はここでおしまいなんだけど・・・」
杉田の声がした。自分のことを言っている。急に吐き気がして床に膝をつき、口元を押さえた。
「し、設楽君!?大丈夫!?」
苦しくて答えられない。プロデューサーが歩み寄って来た。
「歌うんだろう?」
声は出ないが、力強く頷いた。苦しさと悔しさに涙が滲むが、強い目だ。
「・・・DVD収録ではカットされるんだよね。じゃ、準備が出来るまでちょっと待っててね!」
メンバーが着替えに戻って来る。
「五分延長しろ!」
プロデューサーが言った。
「あ、心配しなくても機材一つイカレたんで・・・。」
「何ぃ!?」
「あのー、俺が興奮しちゃってえ・・・。」
ヒロがおずおずと手を挙げた。
「お前ら、こないだも・・・。」
「いや、ちょっとメキッて。ミシッて。たいしたもんじゃ・・・。」
「ったく・・・何でお前らいっつも機材を・・・。小学生かっ!」
「ひぃー、すいません。」
そのやり取りを見て、設楽は少し落ち着いた。だが、本当に俺があの歌を歌っていいんだろうか。俺が。
設楽の心の内を見透かしたように、小平が囁いた。
「聴かせたいんだろ?君が・・・。」
胸のつかえがとれた。そうだ、やらなきゃいけないんじゃない。俺が、やりたいんだ。あの歌を、俺がひとみに届けたい。立ち上がった。
「よっしゃ、いけるな。」
プロデューサーが肩をぽん、と叩いた。
「はい!」
その答えに、プロデューサーは満足そうに笑った。




