19 土色の大陸
夏休みなのをいいことに、長期のロケが入る。
「じゃあ明日、朝八時に迎えに行くからね。」
「はい、よろしく、高橋さん。」
電話を切り、荷物をチェックする。明日から十日程かけて、海外ロケだ。旅番組の企画で、三日かけてアフリカの小さな村へ行く。電気も水道もなく、人口も五〇〇人程の村に、五日間滞在する。日本ではありえない生活をして、伝えられることを伝えてほしいのだという。相当体力のいるロケになる。学校の課題は何とか済ませておいたが・・・帰ったら、俺はどうなっているのだろう。心配だ。ああ、それより、これでまた十日はひとみに絶対に会えない。何しろ、電波も何も届かないのだ。いろいろと考えながら、設楽は電気を消し、ベッドへ行った。疲れのせいか、すぐ目を閉じた。
窓の外に見える水平線に、地球は丸いんだと確信した。なぜ、羽ばたきもしない鉄の塊が空を飛ぶんだろう。もう一度水平線を見ると、ひとみのことを思い出した。西川夫人には、家を空けるのでその間よろしくお願いします、とは言っておいた。だがひとみには一言も言わずに出て来た。メールくらいすれば良かっただろうか。怒っているか、泣かせてしまったか、それとも気にもしていないか。結局、雑誌記者にばれてしまったことも言わずじまいだ。二十四時間×十日・・・。どうでもいいことばかり考えてしまう。
「設楽君、大丈夫?酔った?」
高橋が心配そうに聞く。
「ああ、いえ、大丈夫です。ちょっと寝不足で。」
「そう、じゃあ今のうちに寝といた方がいいよ。空港に着いたらすぐ車だけど、きっと半端じゃなくガタガタ道だから。」
ああ、先が思いやられる。