表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不幸の天才、至福の凡人  作者: 沖津 奏
第1章 Green clover
1/44

01 日常の続き

「好きです・・・付き合って下さい!」

 相手が何て言ったのか、よく覚えていない。しかし、口の動きと目で理解した。


「なあ・・・お前、そろそろ諦めたら?」

 沈んだ表情の少年の隣で、机に腰掛けた少年が呟いた。

「嫌だ。」

「嫌だって・・・お前、フられたの、今日で何回目よ?」

「・・・三八回目。」

 二人同時に溜め息をついた。

「思うんだけどさ、その・・・何と言うか、よく飽きないよな。」

「飽きるわけないだろ。」

 広々とした学校の図書館で話しているのは、設楽優基と浜原大輔だ。二人は図書委員をしている。中高一貫校なので、二人は高校二年生ではあるものの、学年の呼称としては五年生だ。

 図書館は校舎からは独立して建っている。窓は大き目で、開くことは出来ないが、開放的だ。水色とも薄緑ともつかない色合いのブラインドの隙間から、傾きかけた陽の光が差し込んでいる。一つ、ブラインドが上がりきっている。すぐ外には花壇があり、一年を通して綺麗な花が咲く。設楽は、その花壇を見るのが好きだった。今は、薔薇が咲き誇っている。

「ちょっと、机に座らない!」

 司書室から顔を出したのは、中年で細身の女性だ。

「あっ、すいません。」

 浜原は学ランの裾を気遣いながら、ぴょん、と飛び降りた。放課後なのに二人以外に人がいないので、浜原は気兼ねなく、普通の声量で喋った。

「でもさ、お前みたいな奴、恋する相手は芸能人とか、女優とかモデルの娘だろうと思ってた。」

 浜原は設楽の顔を見た。黒い艶やかな髪。整った顔。陸上部で日に焼けている自分と違い、白い肌。気も利くし、性格もいい方だと思う。しかも、今世間でじわじわと人気の出ている天才的な才能を持つ俳優だ。

「何で?」

 純粋な目がこちらを向いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ