1-1 「ありえること・ありえないこと」
この小説はフィクションです。実際の事件・団体等には一切関係ありませんが作者のボキャブラリーのなさにより登場人物が友達の名前だったりします。が、あくまでもフィクションです。
一、7月21日、11時26分、ある中学生の自宅
夏。真夏。こんな日にクーラーが壊れるんだから神様は自分の事が嫌いなのかもしれない。
式場壮、(しきばつかさ)は麦茶一杯で暑さをしのぎながらソファーに寝転がって高校野球を見ていた。
「あなた病み上がりでしょ?」と母に扇風機を止められたので体は沸騰寸前だ。「熱中症になる」と言ったら食塩の入った箱を渡されて「これで熱中症は大丈夫!」と言われ、「鬼め」と毒づいている間に母は友達とお茶へ行ってしまった。
そんなわけで現在このくそ暑い家には自分一人だ。部屋全体が湿った熱気で覆われていてテーブルの上に置いてあるコップに着いた結露がみるみる減っていって、麦茶が超高速で温くなっていっているのがよくわかった。
「アイス買ってくるから」と出て行ったがどうせ忘れてくるに違いない。コップを取って麦茶を口に含むと案の定温くなっていて、麦茶独特の香ばしい匂いが気だるく鼻に突き抜けた。
この暑さで香ばしさは必要ないだろと思いながら壮はテレビの音量を少し上げる。13-2、名門 対 部員十一人の無名校だし当然といえば当然だろう。もう五回表一死だし勝てそうな気配もない。むしろ二点取ったことをほめるべきだ。
弱いものは勝てないとか夏は暑いとかそういうのは普通といえば普通。というか寒い夏や弱者の勝利は問題だ。この世において「普通起こるはずが事はたいてい起こらない」は鉄則。
そうでなければこの世のバランスが滅茶苦茶になってしまう。そう考えてみると自分の今、この状況も普通なのかなと中学二年生らしく意味不明な感傷に浸ってみる壮だったが暑いものは暑い。当然かどうかなんて関係ない。
今なら「暑い」と言ったら「当たり前でしょ夏だもの」と返す奴をぶっ飛ばす自信がある。あまりの暑さにたえかねたので、むっくと立ち上がって冷蔵庫に麦茶をおかわりしに行く。使い古したソファーの反発力のなさを感じた。
冷蔵庫を開くと中から冷たい風が流れてきて「冷蔵庫の中で過ごしたい。あ、凍死するか」なんてことを思いながら麦茶の入った容器を手に取る。当然だがおかわりしたての麦茶は冷たかった。結露したコップの冷気を手で受けながら五歳児ぐらいのコップが大きすぎて片手で飲めない子がそうするように両手を使ってごくりと飲む。冷気が体を順々に伝っていって心地よかった。
麦茶の容器を元に戻して冷蔵庫を閉じ、再びソファーに戻ろうとするとインターホンが聞こえた。宅急便か何かだろうか。今の恰好はTシャツに短パンだからOKではないがセーフだろうとフローリングをぺたぺた歩いてドアのほうに向かう。
良く考えたらソファーに座らずにフローリングに寝転がっていた方が冷たかったということを発見したので後で試そう。後ろから歓声が聞こえたから負けている方がヒットでも売ったのだろう。もっとも、勝つなんてことはないはずだ。それが普通だ。今、自分がドアを開けても別にテロリストがいるわけではなくかセールスマンか、宅急便の宅配員か、宗教の勧誘員が出てくるだけであるように、残り二死で11点も返すのは不可能なのだ。
鍵をゆっくりと外す。さて誰だろう。たとえ誰だったとしても自分に用などないだろうから「母は留守です」と責任を押し付ければいいだけだ。少しずつドアを開くと外の熱気が中に吹き込んできて壮の顔をなでた。
「はい、何でしょぅっッ…!!」
少年は絶句する。ドアの先、自分の目の前に立っていたのが、立っていたのはセールスマンでも宗教勧誘員でも宅配員でもなく、
拳銃を持った少女だったからだ。
ホームランが出たらしく、後ろから歓声が聞こえた。
ひょっとしたら逆転するのかもしれない。
二、7月21日11時30分、式場宅
「麦茶しかないんですけどいい・・ですか?」
「ああいいよ、おかまいなく」
相変わらず暑い。蝉の鳴き声はますますうるさくなり、ジージーというぎざぎざした音が耳の中に反響していた。少女はフローリングにちょこんと座って足をぶらぶらさせながらもらった麦茶をちびちび飲んでいる。
何で自分はこの娘を家に入れてしまっているんだろう。もう少ししたら出かけたかったところなので正直さっさと帰ってほしいのだが、麦茶を飲んでいないほうの手には未だに銃が握られているので文句も言えない。テレビでは無名校が驚異の逆転劇で名門を下してしまっているしもう何がなんだか分からない。
「やっぱり暑いときは麦茶だよ、」
と少女は笑顔を見せた。その笑顔には不似合いな黒い塊はもう安全装置が外れており、引き金には白くて細い柔らかな指が引っ掛かっていた。
「は、はあ」
「どうしたの、つかさ君?元気ないよ。どこか悪いの?」
「まあ、病み上がりではあるけど」
「ああ、そういえばそうだったね」
「あ、あの?」
「何?」
「笹村さんだよね?」
「そうだよ」
そう、笹村絵真、(ささむらえま)。この銃を持った少女は壮のクラスメイトだった。最もクラスの中心になっていろいろ話しこんでいる彼女といつも自分の机にハンターに撃たれたクマみたいにぐったり覆いかぶさっている壮とではえらい違いだが。
ではなぜ彼女が銃を持って自分の家にあがり込んでいるのか。壮には全く分からなかった。ただ、当の本人は人の家のリモコンをピッピやって自分の見たいお昼の番組に切り替えてけらけら笑っている。麦茶はもう全部飲んでしまったようだ。
「あ、あのさ。何で銃持ってるの?」
勇気を持って聞いてみた。そんなに突拍子もない答えは返ってこないはずだ。父親のコレクションとか道で拾ったとか多分そういう物のハズだ。というかそうであってくれ。
絵真は少しきょとんとして、少し自分の右手に握られている銃に目を落とし、
「あー、私テロリストだから」
空気凍結。いきなり訳わかんないことを聞かされた式場少年は口を半開きにしたまま「は?」と少女を見ているし、爆弾発言をした少女も少女で「それが何か?」という感じで首をかしげている。
「え、えーと、もう一度聞くよ。・・・てろりすと?」
「うん、テロリスト」
「へ、へぇ」
壮は必死に頭をフル回転させてテロリストという単語を正当化させてみる。
「(痛い子か、痛い子なのか?良く考えたら痛くない子が人の家のリモコンをピッピやらないような気がする。いや、でもこの人普段は別に痛い様子もないし・・・あ、あれか!クラスとか学年単位で流行ってる何かの隠語か!?そうだ、きっとそうだ。俺はずっと机でうつ伏せだから知らないけどきっとそういうものがあるんだ。銃っぽいものを使ったゲームか何かだな!なるほどぉ)
でさ、テロリストって何のことなの?」
なんとか自分の頭で処理しきった壮はやや食い気味で聞いてみる。
「何?テロリストも知らないの?」
と絵真はあきれた顔で聞き返してきた。
「ご、ごめん。あんまりそういうのはわかんないから」
「テロリストっていうのは特定の思想のもとそれを達成するためにビルを爆破したり政治家を襲撃したりする人の事だよ。」
「え、マジテロル?」
「マジテロルって何?」
ちなみにテロルというのはテロを行うことだから壮の使い方はあながち間違ってはいないのだが、まさかマジテロルとは思わなかった。というか何でこの少女は平気な顔してビル爆破という単語を発することができるのだろうと思ったが、銃も持ってることだし、どうやらマジらしい。
「で、笹村さんは何でテロリストなの?」
ちょっと興味が出てきた壮は覗き込むように聞いた。絵真は「よくぞ聞いてくれた」というように自信満々に話し始める。
語るときにこれだけ自信があれば自分もクラスの真ん中に立てるのかなと全然関係ないことをふと考えてみたそうだったが自分が聞いたことだしまじめに聞くすることにする。
「つかさ君、まずこの国がどこかわかる?」
「日本」
「正式名称は?」
「神御国属国日本王国です」
読み方は「かみのみくに・ぞっこく・にほんおうこく」だ。神御国は神を元首とする国だったらしい。らしいというのは授業でしか習っていないし、壮はその授業をまじめに聞いていないからよくわからないのだ。
「そう、178年前、日本・米国・中国・EUその他諸々ほとんどの国は神御国に占領されて独裁国家になりました。その結果、民主主義もへったくれもなくなったわけだよ。」
「民主主義?なにそれ?」
壮はきょとんとする。今の学校では民主主義はおろか政治の事すら教えられていない。神の代理である「王」にしたがっていれば万事うまくいくという教育がなされている。
「で、だね。今ってさ、無神論者っていうのはどうなる?」
「死刑でしょ」
無神論者というのは何の宗教にも属していない人ではなく、国の政策に反対する人の事である。神御国傘下の国ではすべての宗教がとっくに解散してしまっているのでそういう使い方しかしない。
「そう正解。まずこれが思想・文化・宗教の自由を奪っているわけだよ。で、それを快く思わない人もいるの。そういう人が集まっているのが私の所属してる…」
「神御国反乱軍Peace Maker」
「あ!わかるんだ」
「ほ、ほら、高校野球って間にニュースやってるから」
Peace makerのニュースはいたるところで聞くからわかる。神御国に占領されていない国とそこに亡命してきた人々からできた軍らしい。
テレビで見る映像はたいてい戦闘機や戦車を並べてドンパチやっているものだからあまりいいイメージがないがとにかく大きな組織であることだけはわかっていた。
「ところで宗教って何かわかる?」
急に正解を答えられて悔しそうにしていた絵真が意地悪そうに聞いてきたので壮はおとなしく首を横に振ると、絵真も「私もよくわかんないの」と「わけわかんない」のポーズをして首を横に振った。
「ところでそのテロリストさんが俺に何か用があるの?」
だいぶ落ち着いてきて耳の中に蝉の鳴き声を取り戻してきた壮はテレビのリモコンをいじってプロ野球のデイゲームに切り替える。絵真は思い出したように
「あ、そうそう。今日麻薬取引があるからそこをぶっ潰しに行くの。」
「ふーん、輸送を手伝うんじゃなくて?」
麻薬取引とは物騒な話だなと思ったがさっき自分に銃口を向けて立っていた人間が何を言っても、もはや特に動じない。
「人聞きの悪いこと言わないでよ。私の目的は世界のみんなを幸せにすることなの。」
「ごめんごめん、で、何でうち来たの?」
壮は麦茶を一口、口に含む。何とも言えないぬるさが口内を一周し、飲み込もうとした時、
「つかさ君に手伝ってほしいの」
思わずせき込む。液体がいろんなところに逆流してむせ返った。絵真は「大丈夫?」という感じで背中をさすってくれたがそれどころではないだろう。
「なんで?」
げほげほせき込みながらもようやく落ち着きを取り戻した壮は眼を見開いて聞いた。
「なんとなく適任っぽいじゃん」
冗談じゃない。自分にはこれから用事があるのだし、たとえ用事がなかったとしてもなんだって麻薬取引の現場なんかに行かないといけないんだ。丁重に断らないと
「笹村さんの意見は素晴らしいと思うんだけど俺にはちょっと似が重いっていうか、そ、そうだ。そもそも俺と笹村さんってそんな仲良くないしクラスでもほとんどしゃべったことないし、それに俺は別に特別なことができるわけじゃないし、あと俺さ今から用事が・・・」
思わず口が止まる。なぜなら絵真は自分に、銃口を向けているからだ。当然引き金には指が添えられている。
「え、えーとあの?」
「命が惜しかったらついてきて♪」
一度だけ縦にこくりと頷いた。蝉の鳴き声はさらに強くなっていく。頭がおかしくなりそうだった。
三、7月21日午後12時5分 ひるがお市・市街地
「なんでチャリで来なかったの?」
「えー、なんかめんどくさかったし」
「にけつの運転手側がどれぐらいつらいかわかってよ」
その後の「家から歩いてきた」発言によって家が意外と近いことと、彼女の計画性のなさを理解した壮は、自転車の後部座席に女の子を乗っけて漕ぐという一大行事を体験することになったのだがそんなことには慣れていないし、筋力はないしでだいぶ体力を使った。
横でぜぇぜぇ言っている壮をしり目に絵真は太腿のあたりについているホルスターを銃が外しやすいようにいじくりまわしている。何かいろいろ見えてるし、もう少し人目を気にしろと言いたかったが本人も真剣そうなので自重しておく。
「ところで何で制服なんかに着替えなきゃならなかったの?」
出かけると決まったらすぐに「着替えて」と言われ、制服に着替える羽目になった。洗濯のりのパリパリした触感がうっとうしい。そう言えば彼女も制服だった。
「で、どこ?その取引場所っていうのは」
「ん、あのビル」
少女はホルスターをいじる片手間に目の前の施設を指差す。あまりぱっとしない市街地の中ではかなり目立つビルだ。ご大層に大きな駐車場とそれなりの門が立っている。石造りの門には施設の名称が彫られている。
「えーと?王立産業振興センター・・・ここ公共施設だよ!?」
「うん、だから制服なんだよ」
「だって、こんなところでやったら普通バレない?」
「バレないよ」
「何で?」
「麻薬取引をしてるのは国だもの。あ、正確には麻薬じゃなくてそれに似たものだけど」
「何で国はそんなことしてるの?」
「さあ、国の人に聞けば?絶対に消されるけど」
そう言うと銃をしまい終えた絵真は問題の施設にすたすた歩いていく。その後ろ姿は妙にりんとした緊張感を帯びていた。しばらくそれに見とれていた壮は、はっと我に帰って後を追う。
「で、僕の仕事っていうのは?」
「まず私たちはやくざの下っ端って設定だから。こういう危ない取引の時、大抵の暴力団は小さい子供を利用して取引を行うものなの。で、その担当だった子と役割を変わってもらったてわけ」
「その子は?」
「殺されたに決まってるでしょ?生かしといても意味ないし」
少しびっくりしたがそういう世界の話なのだろう。これ以上聞いても仕方がないような気がした。
「で、つかさ君はこの鞄持って。この中に麻薬が入ってるって設定だから」
絵真はどこにでもありそうな学生鞄を渡す。受け取るとどっしり重かった。
「重っ、何が入ってるの?」
「爆弾」
「・・・何か本格的にテロリストだね」
「当たり前でしょ。これを麻薬受け取り担当の国の役人に渡すと見せかけて起爆させるから」
「起爆って、僕が?」
「それは私がやるけど現場まではあなたが持って行って。色々やりたいから」
「・・了解」
「あ、あと一つ」
「何?」
「何があっても絶対驚いちゃだめだよ」
「爆弾とか銃とかさんざん聞いたからもう大丈夫だよ」
「もし仮に相手が物体を発火させてもテレパシーで精神干渉してきても絶対に、だよ」
「う、うん」
そんなことあるはずないだろうと思ったが絵真の話し方に妙な緊張感があったので、無視できなかった。さっきからありえないことばかり起こっているんだ。それぐらいは覚悟しないと。
自動ドアが開いて二人の影が消えた。
四、7月21日午後12時25分 王立産業振興センター
「(うわー、ホントに黒服とか着てるー。これはこれで目立つと思うんだけどな)」
少し開いた部屋、広さはバスケットコートと同じぐらいで結構薄暗い。普通業務にこんな部屋いらないだろうから、もしかすると取引専用の部屋なのかもしれない。入口付近に立っている壮と絵真の前方には黒い服の男が五人、一人のリーダー格のようなメガネの男以外はサングラスを着用。もちろん肩幅とかが半端じゃない。殴られたら死ぬんじゃないか。
鞄を持つ壮の手はじっとりと濡れていた。おかしい、[冷房は効いているはずなんだけどな]と手をズボンで拭う。何度やっても汗が拭いきれない。
「(緊張してるのかな)」
鼓動が高まっていくのがはっきりとわかった。でもビビっちゃだめだ。少しでも取りこぼしがあれば死ぬ。そんな雰囲気が空間全体を支配していた。
「お持ちしました」
と絵真は低い声で言う。その声は部屋全体に薄く反響して吸い込まれた。
「では取引にしよう。まず薬を渡せ。その後、その鞄に金を詰める」
メガネの男は黒い眼鏡のフレームをいじくりまわしながら言う。癖なのだろうか。
「いいえ、まずは金を渡してください。その後、薬を渡します」
絵真ははっきりとした声で言った。爆弾を見られたら元も子もないからそれはそうなのだが、多分この子も緊張してるんじゃないだろうかと壮は考えた。そうすると自分の緊張がほんの僅かにほぐれるような気もしたが多分、気のせいだ。
「断った場合は?」
「交渉決裂ですね」
「・・・では、言うとおりにしよう」
メガネがそう言うと絵真の目の前に札束が現れた。どうやって出したんだ。と思ったがそんなこと言っている場合ではないだろう。壮はできるだけ汗を拭った後、鞄を絵真に渡した。絵真はその中身を確認し、何かガサゴソやった後(起爆装置を作動させたんだと思う)、メガネ男に投げつけた。
「伏せて!」
少女は壮にとびかかってきた。何か柔らかい感触を感じたがそんなことは言ってられない。そのまま押し倒される。
部屋に爆音が轟き、強い風が二人を叩いた
「(・・・・・あれ?)」
おかしいぞ、そうは思った。あっけなさすぎる。あれだけ大きな爆弾だったらそれなりの威力があっていいはずだ。ゲームの手榴弾しか使ったことのない壮にもそれはわかった。爆風で吹き飛ばされて壁に叩きつけられてもいいはずだ。それなのに、
実際には少し強い風が吹いただけだ。起きるはずだった爆風は「まるで何かにかき消されたように」かき消されてしまった。こんなこと・・・ありえない。
「透視能力者の一人でもつけておくべきだったな」
メガネ男だった。無傷。手には銃を持っている。他の黒服も同様に、だ。
「作戦失敗だね?お嬢さん方」
メガネが得意げに言ったその時、絵真が不意に立ちあがってホルスターの銃を引き抜き二、三発発砲した。銃を引き抜くときにスカートの下の水玉模様が思いっきり見えて、なんか妙な気持ちになったが、とはいえ普通ならもうメガネは立っていられない。
しかし、メガネはその場で銃を構えたままだ。
まっすぐメガネ男に向かっていた銃弾は目標に当たる前に減速していき不自然に軌道を変え地面に落ちたのだった。それは普通、あり得ない現象だった。
絵真は一発、もう一発と銃を売ってついには銃に入った銃弾を全部撃ち尽くす。なのにメガネ他、黒服達には傷一つない。皆、軌道を変えてあらぬ方向へ行ってしまうのだ。
メガネ男は不敵に笑う。
「無駄な抵抗はやめたほうがいい。おとなしく降伏すれば楽に殺してやらんこともない。わかったらおとなしく降伏しろ、反乱軍のゴミ共」
銃の安全装置が引かれた。