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リボンが好きなメリ

作者: 夢乃悪夢
掲載日:2026/07/11

 メリはリボンが大好きな女の子です。

 髪の毛にはピカピカのリボン、服にはレースのリボン、足元にだってリボンが付いた可愛い靴を履いています。身に着けるもの全てにリボンを着けるのが、メリのお気に入りでした。


 お父さんも、お母さんも、おじいちゃんおばあちゃん達も、いつも皆、沢山のリボンを贈ってくれました。

 可愛いリボンに囲まれて、メリは幸せでした。


 そんなある日、メリの家にユトがやって来ました。ユトは何もできない赤ちゃんです。メリのように歩くことも、喋ることも。メリも最初、ユトは小さくて可愛いなと思いました。

 ユトが泣くと、家族は皆ユトのそばに行きます。


 メリが新しくて可愛いリボンを着けても、リボンを綺麗に結んで部屋に飾り付けても、皆ユトばかり構ってリボンにもメリにもちっとも気付いてくれません。


 メリは、もっとリボンを着けなきゃ、と思いました。


 メリは体のあちこちにリボンを巻きました。まず両足に青色のリボン。次にお腹にはお気に入りの銀色のキラキラしたリボン。


 そうすると、おじいちゃんおばあちゃんは、やっぱりメリに、

「おやメリ、リボンをいっぱい着けていて可愛いねえ」

と言ってくれたのです。


 これは大成功です。


 メリがお父さんとお母さんの方を見ると、お父さんはメリに、

「メリも自分でリボンを着けられるぐらいお姉さんになったんだなあ」

と言いました。


 メリはちょっぴり嬉しくなりました。


 お母さんはメリに、

「もうお姉さんになったんだからリボンを散らかしてはいけません。片付けてきなさい」

と言いました。


 メリはなんだかガッカリして、体に巻いていたリボンを全部リボンケースに戻しました。


 次の日、家にはお母さんとメリとユトの3人だけでした。

 お父さんはどこかへ出かけてしまったし、おじいちゃんおばあちゃんはまだ家に来ていません。


 そういえば、最近こんなことが多くなったな、とメリは思いました。

 以前はもっと皆で一緒にいたのに。


 ユトが来てからかもしれない、とメリは思いました。

 もしかしたら、ユトが泣いてばかりだから、皆おうちにいるのがイヤになってしまったのかもしれません。

 メリは一生懸命考えて、いいことを思い付きました。

 ユトもリボンで可愛くなればいいのです。


 メリは、ユトにあちこちリボンを巻きました。まず両手に緑色のリボン。両足には赤色のリボン。お腹にも巻こうとして、少し難しかったので、メリはユトの首に黄色のリボンを巻いてあげることにしました。


 首にリボンを巻いてあげている途中、ユトが泣き出しました。


「あとちょっとだから頑張って!」


 メリはリボンを巻きながら、ユトに言いましたが、ユトはなかなか泣き止みません。

 泣き声が聞こえたのか、食器洗いをしていたお母さんがやって来ました。リボンはまだ結べていません。


 あとちょっとだったのに、とメリは思いました。そしたら、全身ちゃんとリボンで可愛くなったユトを見せられたのに。


 お母さんはメリと泣いているユトを見て、眉を吊り上げて顔が鬼のようになりました。

「メリ!何してるの!」

とお母さんは怒りました。


「お姉さんなのに、なんで弟をいじめるの!」


 そうしてメリからユトを取り上げると、メリがユトに巻いてあげていたリボンを全部取りました。


「もうリボンは全部禁止です!」


 お母さんは怒って部屋から出て行きました。

 ユトが家に来てからというもの、お母さんはずっと怒ってばかりで全然楽しそうではありません。

 さっきユトが泣いたのだって、メリのせいでもリボンのせいでもないのに。だって、メリはユトを全然いじめていないのです。


 ユトがいなければお母さんは笑ってくれるのかな、とメリは思いました。


 その日の夜、久しぶりにお父さんが帰ってくると、お母さんはお父さんに、メリがユトを泣かせたことを言いつけました。

 お父さんも怖い顔でメリを叱りました。メリは悪いことをしていないのに。


 メリは思いました。やっぱり、ユトがいない方が皆が幸せになれるのです。


 次の日から、メリは、皆がどんな様子か観察してみることにしました。


 お母さんは最近いつも疲れています。メリには怒ってばかりだし、時々泣きながら誰かと電話をしています。

 お父さんは最近何日もお家に帰ってこないし、たまに家にいても、寝ているかパソコンの画面を見ているだけです。ボール遊びも忘れちゃったかな、とメリは思いました。


 お隣に住んでいるおじいちゃんおばあちゃんは、いつもテレビを見ています。でも、これはずっと前からだ、とメリは思いました。おじいちゃんおばあちゃんはあまり変わっていないから大丈夫そうです。

 でも、そういえば、遠くのおじいちゃんおばあちゃんも、今でも来る度にリボンやおもちゃを持って来てくれて、あまり変わっていないな、とメリは思いました。


 おじいちゃんおばあちゃんはユトがいても幸せなのかもしれません。


 沢山お日様が登って沈んでを繰り返したある日、メリは決めました。ユトを遠くのおじいちゃんおばあちゃんの家まで連れて行くのです。皆その方が幸せになれるし、ユトだってその方が嬉しいはずです。


 メリは、髪に水色のリボンを着け、リボンが付いたピンク色のフリフリのワンピースを着て、小さなリボンが横に付いた白い靴を選びました。


 お母さんが台所にいる間に、メリはユトを抱っこして外に出ました。玄関の段差を降りる時、ユトは大きくて重いな、とメリは思いましたが、お姉さんなのだから頑張らなければなりません。

 メリは用意していた砂場用の手押し車にユトを乗せ、遠くのおじいちゃんおばあちゃんの家を目指しました。


 ユトも楽しいのか、揺られながら大人しくしています。

 メリは歌を歌いました。木の上の小鳥達も、メリに合わせて歌ってくれます。


 メリは久しぶりにとてもご機嫌でした。


 道を渡り、公園の横を通って、川の上の橋を越えました。橋の上では風に飛ばされそうだったので、メリは少しヒヤヒヤしました。

 橋の先は少し上り坂になっていました。

 でも、登っている途中で、メリはどんどん腕が重くなっていく気がしたのです。

 ユトが手押し車の中でメリの方にずり落ちて来たからかもしれません。


 メリは少し休むことにしました。


 そこにちょうど、大きくて茶色のクマが通りがかりました。メリはクマの絵本を読んだことがあります。でも、実際に目の前にクマを見るのは初めてでした。メリは、クマって思ったより大きいな、と思いました。

 あまりリボンが似合いそうにありません。


 クマは、メリのリボンが気に入ったのか、こちらへ歩いて来ました。


 メリは手押し車の中のユトを見ました。ユトはまだ、クマには気付いていなそうです。大きいクマを見たら、ユトだってびっくりしちゃうかもしれないな、とメリは思いました。

 その時、クマがあまり近くに来ないように先に私の水色のリボンを着けてあげたらいいかもしれない、とメリは思いついたのです。


 そうしたら、クマだって嬉しくなって満足してくれるに違いありません。

 それに、クマがリボンを着けて可愛くなれば、ユトだってクマが大きくても怖くないかも。


 だからメリはクマに近づいて行ったのです。

 クマはメリが近付くと、大きな口を開けました。喉の奥が真っ黒だ、とメリは思いました。


 そこから、メリの記憶はありません。


 メリとユトは仲良くお星さまになったのです。


 お星さまになったメリは、空を飛んでいました。隣を見ると、ユトも一緒です。

 その時メリは、ユトが手押し車に乗っていないことに気が付きました。ユトも飛べるようになったんだ、とメリは思いました。もう、手押し車を押さなくても良さそうです。


 ユトはニコニコしています。


 ユトもお星さまになれて嬉しいよね、とメリは思いました。メリだって、キラキラしたお星さまになれて、とても幸せでしたから。


 そして、最後に、お父さんお母さんおじいちゃんおばあちゃん達のことを思い出しました。

 メリは、これでみんな元通りに元気になって笑ってくれるかなあ、と思いながら、神様のところへ昇っていったのでした。

オリジナル短編童話としてお楽しみください。

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