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緑の地球  作者: 陸うなぎ
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第1章 【1】 外に探検しに行こうよ♪

文明の発達とともに電子情報の流入・流出が簡易になった。

次第に歴史の記録としての紙は必要性を無くし、人々は森林伐採をすることもなくなり周囲には木々が青々と生い茂っていった。

木々は海を侵食していき、いつしか地球は青から緑へと色彩を変えていく。


木々は海を覆いつくし、植物がはびこった世界。植物は長い年月をかけて格段に進化した。

人間を香りで捕獲して、木々の養分として取り入れる種。

胞子を飛ばして人間を操って受精する寄生型。

そんな木々の脅威におびえた人間は一層テクノロジーを発達させて、1つのドームを作った。

そして、そこへ集結した人類は決してドームの外には行かないという決まりを作り、それを固く守ったのだった。


最初こそドーム内の人類共同生活に不自由さや不満を感じる人々は多かったが、木々の脅威に比べれば文句を口に出す者は誰一人としていなかった。

何より不便さはテクノロジーですぐに解決することが出来た。空気中の水分をろ過して好きなときに自由に水を飲め、食事は食べたいものを電子レンジ型の機械に入力すれば数分で美味しい料理が出てくる。

ドーム内には太陽と月を模したライトが点灯しており自動調整で1日を明示した。



人々は快適な生活に慣れ、いつしかドームの中が自分達の世界だと思うようになった。

ドームの外には緑の鬱蒼とした木々が茂って黒く轟いていたが、その存在は無視されるに等しかった。

そこにどんな脅威があるのか、そんな情報は嫌になるほど電子書籍で読めるはずだった。

それなのに、皆のすることと言ったら学ぶことをやめて空中をオーロラ色に輝くボールを追いかけたり、空にキラキラしたホログラムで絵を描いたりそんな事ばかりだった。

その生活は文明のなぜという疑問点を廃れさせて行った。

ただ、外に出てはいけない、ドームの外に出ると死ぬ。

そんな伝達だけは、確かに人々に警告として伝わっていたのだった。


何十年、何百年経ってもドーム内での生活は人々に安定をもたらした。

年月の経過はやがて世代を代え、外の世界を生き抜いて木々の脅威を体験してきた者はいなくなった。

脅威は徐々に薄れ、好奇心へと変貌していく。

みんなに紹介したい人物がいる。

外の世界に強い憧れと興味を抱く1人の少女、名前はハル。

オトナから常々言われている“外の世界は危ない!”の常套句に嫌気が差していた。ハルは好奇心の塊のような人で、実際に自分の目で見てきたもの以外は信じない性分なのだ。



「ねぇ、なんでみんなあんなに外に出るのを怖がってるのかな?」

ハルはフールを振り返って、ウンザリしたような声を出した。


ハルはショートカットの黒髪の可愛い顔をしていた。

ホログラムで描いたイラストを自分のアクセサリーに変えられるペンで、器用に描いた幾何学模様のキラキラしたピンを髪に飾っている。

その可愛らしい顔はドーム内でも際立っていて、みんなハルと遊びたがる。


ハルも明るくて気さくなので、みんなと仲良くするが、特にフールという少年と仲が良かった。

優しそうな緑の瞳に柔らかいアッシュ色の髪の毛の色が合っていて、黒髪のハルは密かにその色に憧れていたのだった。


「そりゃあ、物心着く前から外は怖い場所って言われ続けてたらわざわざ自分からドームの外に出ようなんて普通は思わないよ」

フールはドーム内の生活に満足していたため、外の世界に出て自分の目で見てみたいと目を輝かせるハルが不思議だった。


ハルはフールの目の前にペンで大きなはてなマークを書いてフールに言った。

「外が危ないって…誰も外に出て確認もしていないのに?もう100年以上前の昔話なのに?」

はてなマークはフワフワと二人の間をしばらく浮かんでから、“はてなマークのアクセサリー”が出来上がった。


そのアクセサリーをパシッと掴むと、ハルは目をキラキラさせてフールを見た。

フールはその視線に既に嫌な予感を覚えていた。

こんな表情をして何かを訴えるハルは、絶対に言うことを聞かない!!


「私たちで、ドームの外探検隊を結成しない?!」

「しないよ!」

即座に首を振りながら後退するフールに、ハルは唇を尖らせて、えーっと言う。


「どうするの?死んじゃったら。どんな危険なことがあるか分からないんだよ?」


と言いながら、フールは、そういえばどんな危険な事があるんだろう、と頭で考えていた。

ハルが言う通り、外に何があるかなんて、具体的な情報は何も無かった。

はるか昔の電子文献ももうパスワードが分からず閲覧できないらしい。



「ねぇ、ねぇ〜ってば…」会う度に探検隊の話をしては拒絶されて駄々をこねるハルにうんざりしていたフール。


(どうすればハルから外の世界への興味をなくさせる?もし当時の電子文献を閲覧出来て木々の残酷な話が載っていたとしても「これはもう昔の話!」と一蹴されるに決まってる。

まぁ、そもそも外に出るなんて無理なんだからハルが興味を無くすまで気長に待つしかないか…)

いつもの一時的な好奇心だとフールも楽観していた。


ドームの外に出る方法は、存在する。

緊急事態に備えて一応の脱出用通路がある。

しかし、ドームが建てられてから100年以上安全に過ごせてきた人々は一度も脱出用通路を使用したことがなく、電子文献と同様に通路奥にある扉のパスワードも忘れ去られていた。


「ねぇードー」

「ドームの外を探検する話はやめてね!」


何回目かの会話の後、フールがキッとハルを見ると、ハルは、大いに不満気な顔になる。


「じゃあ、もしも外が楽園だったらどうする?」

いきなり予想外な言葉を聞いてフールは続く言葉を失った。

ハルは味をしめたように、重ねて同じ言葉を言う。

「もしも、外が楽園なら?ドームの周りは確かに暗い。でもその先に素晴らしい世界があったら?みんながどこへでも行けて、こんな狭いところで閉じ込められなくて自由に住む場所があったらどう?」


キラキラと目を輝かせながらクルクル回るハルを見てフールはその言葉を吟味した。

フールは毎回ドーム外に行きたいというハルの言葉を聞く度に考えていた。


危険だ。もちろん。それでも根拠の無い危険。

希望に満ちて話すハルをみていると、その自由な発想に心を動かされるのも事実なのだった。

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