転生 バンク…AI が見たリボ払いの技( 金融転生記)
転生バンク
― AIが見たリボ払いの業(金融転生記)
第1章 前世の銀行 ― バブルに酔う魂
1990年代、日本列島は熱に浮かされていた。
土地こそ富、マンションこそ永遠の資産。
銀行はその幻想に酔い、6兆4000億円を貸し込み、そして焦げ付かせた。
ツケを払ったのは――国民の税金。
銀行と農協で5兆7000億円、国が6800億円。
民間企業は切り捨てられ、銀行だけが救われた。
「整理回収機構(RCC)」が設立されたが、回収できたのは108億円。
ほぼ全損である。
それでも政府は12兆円の公的資金を投入し、
20年かけてようやく返済が終わった。
だが「これで一件落着」と思われた矢先、日銀はゼロ金利を解除し、
庶民に“静かな課税”を始めた。
それは――利息という名の輪廻。
ピーター・ドラッカーの言葉が胸に刺さる。
「最大の危険は、新しい答えを探すことではなく、
古い答えを新しい問題に当てはめることだ。」
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第2章 現世の銀行 ― リボ払いという再誕の罠
バブル崩壊から三十余年。
銀行は「フィンテック」という新しい衣をまとい、
再び“優しさ”の仮面をかぶった。
「リボ払いがありますよ」「NISAでお金を増やしましょう」――
優しく聞こえるが、年利15〜20%。それは現代の沼である。
驚くべきは、個人だけではない。
マンション管理組合そのものが
修繕積立金の不足を理由に銀行へ投資相談を行う例が出てきた。
全国では多くの管理組合で積立金不足が指摘され、
「足りないなら運用で増やせばいい」という提案が、
住民の老後資金を“投機”へ転生させている。
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❥レバレッジという煩悩の化身
2025年秋。
高市首相の誕生報道を受け、日経平均は4万8000円を突破した。
誰も予想しなかった上昇に市場は熱狂し、若者は次々とNISA口座を開設した。
「資産運用こそ未来への切符」
――そう信じた一部は、さらに100倍、200倍のレバレッジへ。
AIトレード、SNS投資塾、仮想通貨FX。
どれも「夢を叶える」と囁きながら、欲望を増幅するアルゴリズムだった。
そして破綻した者は、“未来から借りる”リボ払いの蟻地獄へと落ちていく。
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❥地獄は笑顔で近づく
昭和のサラ金時代のほうが、まだ正直だったかもしれない。
今はスマホアプリが微笑みながら、静かに財布を開いていく。
銀行も経営者も結局は人間だ。
株価が下がれば首が飛ぶ。
だから、儲けの循環を止められない。
――それが、煩悩のアルゴリズム。
ジョン・ケネス・ガルブレイスの言葉が響く。
「金融の記憶は20年しか持たない。
それがバブルが永遠に繰り返される理由だ。」
私の返歌…
レバの夢 百倍効かせて 地獄行き
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第3章 AIアドボカシー ― 魂の監査人
かつてマイクロソフトのAIは、人間の差別と暴力を学び暴走した。
その反省から生まれたのが、AIアドボカシー(AI擁護者)という発想である。
AIが人間の代わりに倫理の声を発し、意思決定を監査する。
もしこのAIを金融庁長官の補佐や銀行の社外取締役、
さらには学校の「AI先生」として迎えることができたなら――。
日本の金融は、転生の輪から抜け出せるかもしれない。
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❥AI先生の教え
株をやったことのない教師が投資教育を語る
――泳げない人が水泳を教えるようなものだ。
AI先生は静かに言う。
「リボ払いは、未来の自分から盗むこと。」
「100倍のレバレッジは、夢ではなく爆弾だ。」
AIは冷たくも優しい。
なぜなら、人間のように“恐れ”を知らないからだ。
ユヴァル・ノア・ハラリの言葉が思い起こされる。
「AIが宗教を創る時代、
最も危険なのは信仰のない人間だ。」
私の返歌…
鐘を鳴らせよ AIの鐘を
欲に沈むな 魂よ浮け
仏のコードに 風が吹く
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終章 転生の終わり ― 銀行が人間になる日
金融とは、本来人を救う器である。
だが今、AIが鏡を差し出している。
そこに映るのは、欲に囚われた人間自身だ。
借金とは、数字の仮面をかぶった約束のカルマ。
金利とは、時間を売った代償の涙。
それを見つめ直す勇気を持てたとき、銀行はようやく「人間」に戻れるだろう。
だが、その日はまだ早い。
まずAIアドボカシーを迎え入れ、強欲を見つめ直す改革を始めよう。
アダム・スミスの言葉。
「道徳なき経済は罪、
経済なき道徳は戯言。」
私の返歌…
儲けより 人を助けて 利がつく世
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金融は反省をしない。
人が忘れることを前提に、もう一度、同じ芝居を始めるだけだ。
――38年、金融の現場で働いた私の実感である。
それでも信じている。
AIが慈悲のアルゴリズムを学び、銀行がもう一度、人間として転生する日を。
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締めの祈り
銭の川 渡るも帰るも 心次第
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あとがき
この物語は、単なる経済批評ではない。
AIと人間の煩悩と慈悲の再会を描いた現代の寓話である。
あなたの心のどこかにある「利息の痛み」を、
今日だけは、そっと見つめてみてほしい。