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第十話 同窓会(エピローグ)

「あともう十分で退勤か」


 俺はモニターの右下の時刻に目を向けた。

 早く帰って好き放題にゲームしたい。しかし退勤前の十分は何故か時間の流れが遅い。

 今日の仕事はやり切って特にやることもないから、帰らせてくればいいのに。なんで無駄に定時になるまで待たなきゃダメなのか、理解できない。


「あ、やっと一分経った」


 あと九分。何をするにも曖昧だから、じっと待つしか。


 意味のないクリックをしたり、ウィンドウを開いたり、カタカタとキーボードを打ったりして時間を潰した。

 何か検索でもするか、と思った瞬間、スマホに通知が来た。


「誰だろう」


 仕事以外に、俺に連絡する人なんていないのに。とりあえず、俺はスマホを取って通知を確認した。

 なんか長文のメッセージがきていた。全部読むのは面倒くさかったので、目に入る文字だけ読んだ。


「同窓会、か」


 長文のメッセージを要約すると、高校の同窓会のお知らせだった。


「あまり行きたくないけど」


 同窓会は木曜日で、仕事の後に行くのは体力的に無理だし、翌日には出勤もしないといけない。何よりその時間に家に帰ってゲームしたい。


「あと何より、会費が高い」


 なんと五千円だ。そのくらいのお金なら、少なくともゲーム二つは買える金額だった。


「やっぱ行くのやめようか。特に会いたい人がいるわけでもないし」


 高校の際、特に仲良かった奴も少ないし。今はほとんど連絡してないから、俺のこと忘れただろう。


「やっぱり行かない方が」

「高村先輩、帰らないんですか」

「え、もうそんな時間?」


 後輩の田中くんの言葉に、俺はモニターに目を向けた。


 もう六時三分、か。


 定時を過ぎるなんて、最悪だ。俺は急いでカバンを肩にかけ、立ち上がった。


「お疲れ様でした。お先に失礼します」


 俺はお辞儀し、さっさと事務室から脱出した。

 外に出てすぐに駅に向かい、電車にギリギリで間に合って乗った。


「人多すぎっ」


 ラッシュアワーで電車の中には足の踏み場もなかった。人混みに揉まれ、流されないように吊革を一層強く握りしめた。


「早く家に帰って、同窓会を、いや、ゲームを」


 何故かお知らせを見てからずっと頭の中から同窓会のことが離れなかった。


 同窓会は行かないってとっくに決めたはずなのに、なぜこんなに頭に浮かんでくるだろう。


「早く帰ってゲームで頭から消そう」


 そう決めて俺は電車から降りた。駅を出て街を歩き家に向かった。


「同窓会・・・いや、行かないんだって」


 俺は頭を振った。

 家に向かってる途中にも、同窓会のことが頭の中から離れなかった。そうしてなんだかんだ家に着いた俺は、鍵を入れドアを開いた。


「ただいま」


 しかし返ってくる挨拶はなかった。家の中は静かすぎた。


「誰もいないのに、何が「ただいま」だ、俺」


 自炊してるから、挨拶しても返事が返ってこないは当然なのに。

 玄関に靴を脱いで中に入ろうとした瞬間、ある記憶が脳裏をよぎった。


『家に帰っても誰も迎えてくれない。そんなの寂しくて耐えられないわ』


 この言葉は、確かに昔誰かに言われたようなーー


「ーーあ、純恋が言ってたことだ」


 小森純恋。昔高校の際、最も中良かった女友達が突然思いついた。


「なんでいきなりあいるが」


 いきなりどうしてその言葉と純恋のことが思いついたかわからないけど、久しぶりに会いたかった。


「あいつ何して生きてるかな」


 ある時から全然連絡が取れなくなって今は何をして生きてるのか、ちょっと気になってた。

 もし同窓会に行けば十年ぶりに会えるのかな。


「いや、やめよう」


 純恋が来るかどうかわからないのに、同窓会に行くのはあまりにもギャンブルだ。もし来なかったらお金も勿体無いし、時間の無駄になるんだから。


「やっぱ行かない。じゃあゲームでもやろっか」


 俺はテレビをつけた。テレビの仮面には昨日やりかけのゲームが映っていた。俺はコントローラーを手に持ってキャラを動かした。

 やがてゲームに夢中になったところ


『もーまたゲームやるの。たまには私にかまってよ』


 また純恋のことが頭に浮かんできた。俺は頭を振って彼女のことを振り払った。そしてまたゲームに集中しようと画面に目を向けると、キャラはもう死んでいた。


「あ、死んだ。セーブデータどこだっけ」


 幸いにセーブデータがあって問題はなかった。しかしまた夢中になって楽しくゲームをしていると、純恋のことがしきりに頭に浮かんでゲームに集中できなかった。


「あぁ、もーなんで頭から離れてくれないんだ」


 イライラした。


「俺、そんなにも純恋に会いたいのか」


 マジで訳がわからない。なんで高校の際に純恋と遊んでたことが思い浮かぶのか。ただ久々に思い浮かんでちょっと気になったはずなのに・・・。


「はぁ、もう仕方ないな」


 俺はコントローラーを横に置き、スマホを手に持った。そしてお知らせが来た連絡先に返信を送った。


『高村夏梅、参加』


 これでもういいだろう。

 そう思ってまたコントローラーに手を伸ばし、ゲームを再開した。

 薄暗くて静かな部屋の中、ゲームの音楽とカチカチとコントローラーのボタンを押す音だけが響いていた。俺はゲームに夢中になったが、まだ純恋のことが頭に残っていてイライラした。しかしさっきのイライラとはなんか違う感じだった。イライラってよりワクワクに近いような・・・よくわからないけどそういう感じだった。


「会えるのかな、純恋」


 俺は小さく呟きながら、カチカチとボタンを押した。

お読みいただきありがとうございます。

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