1 王国謀反
我が一族は永遠なり...
紀元前、幻の島国があった。島にしては大きく、王国が沢山作られていた。王国には、先住民とも言える一族がいた、「月族」と書いてムン族と呼ぶ。その一族は毎年のように王国を回り、移動して生活していた。だが、ある小さな王国の王様と条約を結んだ。条約の内容は「国を共に、大きくし、共に生きる」という内容だったその翌年、見事に島にあるすべての王国をまとめ、王国を作ったが、王国と協力した皇帝は土地を半分取り、国の面積を広くしたのだ。そして、ムン族と王国は二つで国を作った、国名は「太月陽王国」と言う、月はムン族を象徴し、太は王国の象徴、陽は皇帝の象徴だった。
だが、ある年を境に関係が崩れていった。王国で飢餓が起こった、二代目、太月陽王国の王 陸・満太はムン族に助けを求め、ムン族の族長 ムン・カイバンが住んでいるムン族の村へ向かう、ムン族の村は七つあり、王国との境目に族長が住んでいた。だが、族長は他の国と貿易もしており、他国が言う王国の愚痴にも付き合っていた。ある国の商売人が言った。「最近、王国、飢餓になっているんだって、どうやら、王様の世継ぎの王子が大食いで年貢で取ったお米をこっそり食べて隠蔽してたんだ」と商売人は小声で言う、族長は言った「嘘だろ、信じないからな」と言うと、商売人は文を出した、こう言った。
「皇帝様の使いできました、王国を捨てて、わが帝国へ来てくれと言う文です。」
と言い、族長はひざまずいて文を受け取り言った。
「なんとまぁ、帝国に行けるとは、わが一族のほこりです、感謝する」
と言い、文を読む。
「王国に貿易をするな、飢餓が起きているが、嘘をついて、渡すな」
と声に出して読んでいた。そして、王国の使いに「食料はない、こっちも大変だ」と噓をついて、使いを帰らせたのだ。
族長は、村長と会議で帝国への道中を調べていた。一人遅れてくきた村長がいた、名はム・カイマでムン族の山奥にある、村の村長だ。
「遅いな、わが一族が、帝国へ行くんだぞ」
と族長が言う、汗だくでカイマは言うのだ。
「すいません、臨月の妻がちょっとした陣痛に苦しんでいて、医者に診てもらってました。」
「そうか、もうすぐ、出産か、名を考えないとな」
と族長は言った、族長は先祖代々、村長の娘や息子の名をつけているのだ。
「マイはどうだ?お前の妻は舞が得意だっただろ?」
「うーん、良い名はないのかもっと」
と言い、帝国への道中を探して、会話が弾む、幸せな瞬間だったが、王国は・・・
「何!ムン族も飢餓だと、ちゃんと聞いたか?」
「はい、しっかりと」
と言い、使いに対して怒っていた。
「使い一同、調べなおしてこい」
と言い、王様は玉座から立って、去っていった。
「ったく、王様がどうなさったのか」
と使いは言った、隣にいた書物を管理する宦官こと、書官の楓・林は言う。
「今日は、愛する璃花妃様と夜伽をするとか」
と冷静に話す書官、使いは言う。
「なんじゃ、そのいかがわしい」
「世継ぎができる書物を探してくれと頼まれたので、聞いたら夜伽だと答えたので」
と言い、書官は去っていく。しかたなく、使いは変装して調べてみることにした。
使いは嘘に気付いた、ムン族たちは普通に餓死しなずに、暮らしていることを知った、畑で芋を育てている女性に聞いてみると、「飢餓?なるわけないじゃない」と言われた。使いは怒って、他の人にも聞こうとしていた。
家のまわりを歩く、妊婦の女性がいた。カイマの妻 イ・カイリで臨月なので、出産に備えて散歩をして、体力をつけていた。カイリに抱きつく少年、この子はカイリの一人息子で長男のムイジだ。
「母上、散歩についていきます。」
と可愛らしい笑顔で言い、ついていく。
「ムイジ、さっき芋畑のおばさんに話しかけていた人ってだれかしら?」
「わかんない、はじめてみる顔だったよ」
「痛い」
と言い、お腹を押さえてしゃがみ込むカイリ、すると、使いの男がしゃがみ込むカイリに話しかけた。
「大丈夫か?」
「すいません、お腹の子が思いっきり蹴ってしまったので」
「それは、痛いですな」
と言い、カイリは立ち上がりムイジが使いの男に言う。
「みたことない、顔だね。新しい住民?」
「いや、旅人で海真国を目指していて」
「なんとまぁ、遠い国を大変ね、この手巾をあげるわ」
と言い、手巾を渡す。使いの男は手巾の刺繍を見て言った。
「胡蝶蘭の刺繍ですか、細かく縫いましたね」
「花言葉は、幸運が飛んでくるという意味です」
「ありがとう、実は、聞きたいことがあってこの村は飢餓にはあってないのか?」
「いいえ、噂では王国が飢餓あっているのだとか、支援しないと国民が餓死してしまうというのにね」
「何か知っているのか、支援について」
「あ、知らないけど、噂よ、噂は早いっていうじゃない?、それじゃあ、旅人よ、夕餉を作られければならから私は帰るわ」
と言い、歩いて家に帰って行った。家には、古い書物を読むカイリの父で村の元村長である、名はム・カッムと言う、族長の弟君でもある。カイリが夕食を作ろうと芋を切っていると、カッムが言う。
「もうすぐ出産だろ、休め」
と言い、カイリを寝床へ行かせた、カッムは言う。
「ムイジや、叔父上と一緒に夕餉を作ろう」
「うん、叔父上、僕は米を炊くよ」
と言い、お米を洗うムイジ、カイリが寝床から出てきて、自分で作った座布団に座り、カッムに言う。
「父上、今日怪しい者を見たの」
と食卓に手を置いて言う。
「どんな奴だ?」
と芋切りながらカッムは言う、カイリは続けて言う。
「村人にね、飢餓はないのか?って聞いてくるの、私は少し答えてしまって逃げてきたのよ。」
「そうか、うまく逃げられたね」
「でもね、その人男の人で旅人と名乗っていたの、本当にそうかしら?」
と言い手芸を始めるカイリ、カッムは切った芋を洗った米に入れて炊いていた。
「うーん、わからんなぁもしかして、王国から来たものかもしれんし」
「私は、怪しいと思うわ。だってムイジが男の話をしたときお腹の子が思いっきり蹴ってきたのよ」
「きっと、お腹の子が母上を守るために蹴ったんだよ、でも、おはなししてしまったね」
とムイジは横から言うのだ。
「守ろうとしてくれたのね、ありがとう」
と言いお腹を撫でるカイリ、カッムは言う。
「きっと、この子は男に違いないな」
とカッムもお腹を撫でた。戸が開く音がしてムイジが戸へ向かうと、カイマが山菜を抱えて帰ってきたのだ。カイマはカイリに山菜を渡して言った。
「おかえり、あなた」
「陣痛は、大丈夫か?」
「ええ、医者に診てもらったらすぐに、治ったのよ」
とカイリは言う、カッムは横から言う。
「きっと、お腹の子は男だ」
「父上、まだ産まれてないのですよ」
とカイリは言う。カイマは村の見回りに行き、すぐに帰ってきた。夕餉を食卓に並べ四人で囲んで食べているとカイマは言った。
「実は、帝国に移動することにしたんだ。皇帝から文が届いて王国には今、飢餓が起きているそうなんだ、その原因は、第五王子が大食いでそのせいで、国の年貢の米や王宮にある米などを全部食べてしまったんだ。」
とカイマは言う、カイリは言った。
「でも、支援すればいいのでは?」
「皇帝から、支援はするな、帝国へ来いという命令が下されたんだ。」
「そうなのね。いつ頃、帝国へ出発するのですか?」
「村全体を移動させるのに、早くて十日かかる。」
とカイマは言い、カッムは言った。
「ついに、この土地から、王国を裏切る時が来たのだな」
「あなた、族長にせめてお腹の子を産んでから移動させてもらえるよう頼めない?」
「分かった、明日、頼んでみるよ」
と言い、カイマは夕餉をたいらげて眠ってしまった。
王国の月は、赤く満月になっていた、王宮では、夜から大臣、宦官、使いを集めていた。王様は、使いの文を見て、文を叩きつけた。
「月族は余に、嘘をついていたぞ。」
と言い怒りを文にぶつけていた、使いの部下は言った。
「王様、どうしますか?」
「月族を一人残らず、殺せ」
と言うと、軍営を管理する大臣、周軍大臣が前に出てくる。
「殺めるなら私どもにお任せしましょうか?」
「周軍大臣、余は君たちに任せるよ。一人残らず、殺すのだぞ」
「ですが、飢餓の影響でわが軍の兵士はやせ細っているので王子様を殺めてもらえれば、月族を襲撃しますぞ」
「分かった、真次殿」
と王様は言う。
「はい、王様」
「周軍大臣と共に、王子を捕まえて牢屋へ入れてこい」
「了解しました。」
と真次は言い、周軍大臣と共に去っていく、真次は王様に仕える宦官で、世話や毒見係として勤めている。
「襲撃する日は、一週間以内に行かせてもらおう」
と王様は言い、玉座から立って去っていく。使いの部下が宮殿から出ると、月族の地にいた男が帰ってきたのだ。
「呉平様、お帰りになられたのですが」
と部下は言うと、呉平は言った。
「月族の件はどうなったのだ?」
「襲撃して、月族を一人残らず殺すことになりました。」
「それは良いな、支援などしてくれない者の最期だからな。」
「その手巾は?」
「月族の妊婦から頂いた手巾だ、胡蝶蘭の刺繍だ」
「なぜ、もらったのですか?」
「それはな、えー」
と呉平は悟った、このままじゃ、あの手巾の妊婦は殺されてしまうことに、呉平は走って王宮から出て行った。月族へ向かった馬車に乗り、急いで月族の地へ向かっていった。
早朝、カイリは出発の準備をしようと要るものと要らないものを分けていた。ムイジは畑の野菜をすべて収穫して、旅の食料として家に保存していた。カッムは書物を風呂敷に包み、詩を書いていた。
一方、カイマは族長に妻の出産について頼んでいた。
「お願いします。族長様、せめて出産させてから移動したいんです。」
「子どもくらい道中で産めるだろ。なぁ、アミ」
と族長は自分の妻アミを見ると、アミは言った。
「あなた、族長妻として一言言わせてもらうよ。妊婦にとって帝国への道中はつらいのよ」
と族長を叱っていた、族長は小声で言った。
「いいよ、カイマその代わり俺がその子の名を決めてやるから、許して。」
「感謝します、族長様、奥様。」
と言いカイマは跪いていた、アミは言った。
「元気なお子をお産みなって、帝国へ行きましょうね。」
とアミは言い、笑った。すると、使いの男が走ってやってくる、王様の使いだ。
「族長殿、すまない」
と息を切らして言う。
「呉平か?」
と族長は剣を取り出して、呉平の首に突きつける。
「呉平、お前、昨日村に潜入して飢餓について聞き込みしただろ」
「どうして、お分かりになったのです」
と汗だくで聞く呉平。
「山奥の村に行っただろ、月山村に。村長が報告してきたんだ、もしかして支援していないことに気付いたのか?」
「はい、王様に文を書いて報告させに行きました。が、月族には感謝の気持ちがあり来ました。」
と族長は剣を下して、カイマは言った。
「月山村の村長だ、昨日、妊婦に話しただろ」
「はい、すまなかった」
と呉平は跪いて頭を下げた。
「王様は何とおっしゃった?」
「一週間以内に、襲撃して一人残らず殺すと言いました。」
「それは、なんてことだ。」
と族長は言った、アミは族長に言った。
「どうします?」
「呉平は生きて返すよ。その代わり、王国と戦をする、帝国からも軍を要請する。呉平、王国へ帰れ」
と族長は呉平を王国へ返した。族長は、即座に帝国へ文を書き軍を要請した...だが、今思うと、この選択は大きな罠にかかる前だった。
夕方になり、カイリはカイマの帰りを待っていた。すると、村人たちがカイリのところへ近づいてくる。
「カイリ、ねぇ、旦那は帰ってきてないのか?」
「ええ、遅いわ何かあったの?」
とカイリはお腹を触りながら言う、村人は息を飲み込んで言った。
「実は、月族は王国の飢餓の支援をしていなくて、王国が一週間以内に月族の地を襲撃するそうなの。」
「え、嘘でしょ。わが一族はどうするの?」
「明日か明後日か、王国に戦を...」
「カイマが戦へ行くのね、お腹の子が生まれそうなのに。仕方ないわ」
「うちの旦那も息子も行くのよ、大丈夫よ。族長がね、帝国の軍を要請したそうよ。」
「勝利して、帝国へ行って。幸せに暮らしたいわ」
「頑張りましょう」
と言い、村人は帰って行った。家の中に入り、カッムに言う。
「王国と戦をすることになったわ、父上。」
「うん、聞いた。兄上から文が来たんだ、わしも行かなきゃならない。」
と言い、山菜で汁物を作っているカッム。戸が開いて、カイマが帰ってくる。
「カイリ、ちょっと来てくれ。」
と言い、カイリはカイマのところへ行く。
「戦に行くことになった、今日からしばらく、族長の村に泊まる。訓練と作戦をねるためにごめんな。」
「うん、気を付けてね。この子と一緒に待ってるから」
と言い、カイマはカイリを抱きしめる。
「明後日には、王国と戦うんだ。必ず帰ってくる」
「帰ってくるまで、ずっと待ってるから。」
と言い、カイリはカイマに手巾をあげる、手巾は何かを包んでいる感じになっており、カイリは笑って言う。
「戦う前に食べて。」と言い、カイマは族長の村へ戻っていった。
そして、二日後、カイリは祈っていた、勝利をカイマは族長の後ろに馬に乗り、話していた。
「帝国の軍は、戦っている途中に来るそうだ。カッム、帝国軍に作戦を教えてくれ。カイマ、私のそばで戦え」
と二人に言った。カイマはカイリから貰った手巾を開けた、菓子が手巾に包まれていて食べていた。
「おい、カイマ、それカイリが作った菓子だろ。芋の」
「うん、父上」
「一つくれ」
と雑談に花を咲かせていると、戦場に着いた。目の前は、王国の都。だが、目の前から弓がたくさん飛んできたのだ、カイマは避けたが手に弓が刺さった。族長は頭に刺さり、押さえて言った。
「撤収じゃあ、逃げろ」と言い、馬を後ろに向かせていると帝国軍が挟み撃ちで月族に襲い掛かる。
カイマは帝国軍を切って、まっすぐ、月族の土地へ向かった。
カイマが月族の土地へ戻り、後ろを見た。重傷した者、息絶えた者、が大勢いた。カイマは、医者を呼びに行った、すると、帰ってきたことに気付いた村人たちは傷の手当や、息が絶えそうな者に親や妻に立ち会ってもらっていた。カイマはカッムを探した、ムイジがカッムを背負ってやってきたのだ、後ろからはカイリが歩いていた。
「父上、叔父上がケガしてる」
と言いカッムは傷を見せる、カイリは着ている衣を破って包帯にして傷に巻いていた。
「まずいことになった。」
とカイマは言うと後から来た。村人が大声で叫んだ。
「王国の軍が近づいて来てる、逃げろ。」
と言いみんな走って逃げていた、族長は言った、大声で。
「無傷、軽症の者は戦うぞ!」
と言うと、戦う者たちはみな、馬に乗った。
「カイリ、必ず帰ってくるからな。」
と言いカイマは馬に乗り走っていった。カッムとムイジを連れて逃げるカイリだが、カイリがお腹の痛みを訴えた。カッムは言った。
「もしかして、陣痛?」
「産まれそう、父上」
と言いカイリはお腹を抱えて座り込んでしまった、ムイジは助けを呼びに走って行った。
走っていると医者を見つけた、族長と話している。
「族長様、このまま戦場へ行ってはいけません」
と医者は族長を止めていた、アミがやってくる。
「あなた、重傷なのよ。行ってはいけない」
とアミも族長を止めていた、アミはムイジに気づいた。
「どうしたの?カイマの息子のムイジよね?」
「助けて、母上が子どもが産まれそうって」
とアミに助けを求めた、医者はムイジに話す。
「向かうから、案内してくれ。」
と医者は言いムイジと共に、走って行った。
「カイマの子どもが産まれて、名を付けたら戦場へ行く。」
「やっぱり、諦めないのですね。子ども連れてきます」
とアミは医者とムイジを追う。カイリにの周りは村人が集まり、同じ月山村の奥さんが寝床で使う布団を持ってきた。
「カイリさん、しっかりして」
と奥さんは言う、すると、馬車が目の前にやってくる。
「お前ら、逃げ遅れてるから乗れ」
と月族の御者が言った、奥さんが言った。
「今、子どもが産まれそうなの。だから、あまり早く馬車を進めないで」
と言いカイリを抱えて馬車に乗せる、ムイジと医者は間に合い馬車に乗り、アミも乗った。
「もう、頭出てますね。ここで産みましょうか...」
と医者は言い、綺麗な布を懐から出してお腹を押していた。カイリは汗だくだったが、頑張って息んでいた。そして、産声が馬車に鳴り響いた。
「可愛らしい女の子です。」と言い医者は布に包んだ、カッムは産声を上げる赤ん坊を見ていた。アミはカイリの手を握り言った。
「この子の名前、族長様に決めさせてもらってもいいか?」
「はい、お願いします。」
とアミは赤ん坊を抱きかかえて走って、族長の所へ向かった。
「族長様、産まれましたよ!」
とアミは族長に見せた、族長は言った。
「もう、この一族は終わりじゃ。ああ、神よ、救ってくれ」
「族長様、名はどうしますか?」
「神に関する名が良いな...この一族を救ってくれるような...」
「カムイはどうでしょう、私の故郷の民族はカムイのことを神と言ってました。」
「カムイ...この子の名は、カムイ...」
と言い族長は馬に乗り戦場へ行った、アミはカイリにカムイを返したのだ。
族長は戦場に着いて戦ったものの、捕らえられてしまった。カイマも同じだ、目覚めると王様の前に居た。王様は剣を上に持ち言った。
「王国謀反だ、殺してやる。」
と剣振り下ろして族長、村長が殺されていった。カイマは王宮の大きな門を見て笑って息を絶えた。
そして、月日が流れてカムイは大きくなった。