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修学旅行


~真白の場合~



「俺、神様に嫌われてるかも。明日から咲久と離れ離れなんて」

「修学旅行行くだけじゃん。確か、テーマパークとお城と大阪観光だっけ?楽しそうじゃん」

「咲久がいないと楽しくない。あ~、もう休みたい。2日も咲久と離れたくない。咲久と同い年が良かった」

「それは、私もだけど。でも、せっかく最後の修学旅行なんだから思い出作って来なよ」


まあ、悠陽(ゆうひ)(かおる)も同じ班だからそれはいいんだけど。来年は咲久が逆の立場になるとか考えたくない。なんで男女3人ずつの班である必要があるのか分からないし、来年、咲久と同じ班になる奴が羨ましすぎる。


「帰ってきたら思い出話いっぱい聴かせてね。私のときは行き先違うだろうからどんなお店行ったとか教えてよ」

「咲久にそこまで言われたら仕方ないな~。まあ、会長の仕事もあるしどっちみち休めないんだけど」

「楽しんでね」

「うん。ありがとう」



 翌日、嫌々ながら荷物を車に乗せてお祖父ちゃんの運転手の真壁さんに学校まで送ってもらった。


「真壁さん、送ってくれてありがとうございます」

「いえいえ。そんな。真白坊っちゃん、楽しんできてください」

「真白でいいですよ」

「いえ、私が呼びたくてそう呼ばせていただいているので。」

「そうですか。まあ、咲久にも言われたし楽しんできます」

「いい笑顔です」


真壁さんから荷物を受け取ってグラウンドに向かった。グラウンドに着くと数人の生徒が俺の周りを取り囲んだ。


「仁科くんってお金持ち!?」

「さっき、真白が高級車から下りてくるところ見た!」

「執事みたいな人いた!」


執事って。確かに黒いスーツ着て白い手袋着けてるけど一応遠縁だけど親戚だし。


「真壁さんは執事じゃなくて祖父の運転手兼秘書。」

「真白って抜け目なしだよな。顔良し、スタイル良し、性格良し、文武両道。おまけに金持ちで可愛い彼女持ちかよ」

「仁科って弱点あんの?」

「弱点かは分からないけど、母さんにはあんまり逆らえないかな。怖くて」

「そんなの全員だろ」


俺の言う怖いは、笑顔でからかってきたり、昔あった恥ずかしいことを咲久にバラされたり、褒めてる風に俺の失敗談を近所の人に話されることなんだけど。


「真白!おっは~」

「薫、重い。荷物大量に背負って飛びつかないで」

「ごめんごめん。」

「悠陽、おはよう」

「おはよう。そろそろ集合しないと怒られるぞ」

「そうだね。ほらみんな、早く行くよ」


バスに乗って人数確認をしていよいよ出発だ。咲久と会えないのは寂しいけど意外と楽しみかもしれない。楽しかったらいつか咲久とも行きたいな。



「着いた~!大阪城だ~!」

「薫、うるさいぞ」

「ごめんって悠陽。やっぱテンションあがるじゃん?」

「そうか?俺は姫路城の方がいい」

「そういう問題じゃなくてさ~、修学旅行で親友と来るってのが青春っぽくていいんだよ」

「そういうものか?」

「そうそう」


確かに友達と旅行なんてあんまりしないからな。今年は別荘に泊まったけど制服っていうのもあるのかな?やっぱり少し特別感があるかも。


「真白~!写真撮ってくれるって~!」

「分かった」


大阪城の前で写真を撮ってもらった。それから昼食を済ませてバスに乗ってテーマパークに移動した。


「ここからは自由行動だ。だが、くれぐれも羽目を外しすぎないように」

「「はい!」」


「じゃあ、俺らも行こっか」

「うん!」

「どこ行く?」

「あ……」

「やっぱ絶叫系っしょ!」


吉野さん、もしかして体調悪いのかな?


「俺、お昼にちょっと食べ過ぎたから少しあのベンチで休憩してるね。皆は大丈夫?」

「あ、あの。私もちょっと休憩してていいかな?」

「じゃあ仁科くんとももはそこから動かないでね」

「分かってるよ。」

「もも!写真撮ってね」

「うん」


皆は楽しそうに並びに行った。


「吉野さん、ちょっとここで待ってて」


俺は近くのカフェに行ってホットコーヒーとホットココアを買ってきた。


「吉野さん、コーヒーとココアどっち飲む?」

「え、悪いよ。何円だった?」

「気にしなくていいよ。咲久もよく無理して体調崩しても黙ってるから慣れてるんだよね。この前もせっかくのデートだからってお腹痛いのに無理して来ようとしてたし」

「そう、なんだ。じゃあ、ココアで」

「お腹、痛いの?痛み止めは?」

「飲んだ。まだ効いてないだけで効いたら全然平気」


コーヒーを飲んで待っているとあっという間に時間が過ぎてみんな笑顔で戻ってきた。


「楽しかった~!もも、次は乗れそう?」

「うん」

「じゃあ、次はあれ乗ろ!」

「カチューシャは買わないの?」

「あ、買う!」


近くのショップでそれぞれカチューシャを買って班の皆で写真を撮った。咲久に送る用で薫と悠陽と2人で写真を撮った。


「あ、既読着いた」

「返信きた?」

「きた、けど……」


『私のことは忘れて修学旅行楽しんで』


「そう言われても咲久のことだけを考えちゃうんだけど。連絡してこないでってことかな?」

「咲久ちゃんは今昼休みだったから返信できたけど授業中に着たら返せないから遠慮してるんじゃない?」

「そうかな。鬱陶しく思われてたらどうしよう」

「大丈夫だって。真白の面倒くさいところも承知の上で付き合ってるんだろうから」

「そうだぞ。小鳥遊は真白が面倒なのはもうとっくに知ってるだろう」


面倒、面倒って。いや、まあ面倒な自覚はあるよ。あるけど人に言われるとなんか嫌だな。


「ほらほら、せっかくの修学旅行なんだからそんな拗ねない。咲久ちゃんにその顔の写真送っちゃうよ」

「やめて。咲久にこんなダサい顔見せられわけないでしょ」

「カッコつけだな」

「うるさい。男が好きな子の前でカッコつけんのは普通でしょ。とりあえず早く他のアトラクション行こうよ。時間なくなるよ」



もうすっかり夕方になってすぐそこのホテルに行ってそれぞれ部屋に荷物を置いて着替えた。


「はぁ~、疲れた~」

「筋トレしながら言われても説得力がないよ。てか、真白って筋トレとかするんだね。意外」

「咲久を守るためだからね」

「カッコいい!さすが生徒会長!」

「薫、あまり大声を出すな。」

「ごめんごめん、副会長さん」



7時頃になるとレストランのビュッフェで夕食をとって大浴場に行った。


「仁科、まだあがらねえの?」

「え、もう時間?」

「あと5分」

「ホント?じゃあもうあがる」


着替えて髪を乾かしていると何故かクラスメートが集まってきた。


「乾かすのめんどくさくねえの?」

「俺は大体自然乾燥する」

「めんどくさいよ。けど、咲久にいつも使ってるヘアオイル借りたから。普段は俺も自然乾燥だよ。」

「彼女好きすぎだろ」

「うん。自覚はある」


正直、咲久と会えないのが寂しいからせめて匂いでもって借りたけど咲久は全然知らないだろうし。てか、俺がいない間に咲久が告白されまくってたらどうしよう。すごい不安。早く帰りたい。


「あ、そうだ。フルーツ牛乳飲まねえ?」

「いいね。飲みたい」

「自販機行こうぜ」


自動販売機の周りにはうちの学校の生徒が5、6人形いてみんなコーヒー牛乳やいちごミルクを飲んでいた。しかも、浴衣を着ている。そういえば浴衣も借りられるんだっけ?俺は動きづらいから浴衣は着てないけど。


「仁科くんたちも今あがってきたとこ?」

「うん。そっちも?」

「そうだよ~。浴衣似合う?」

「似合ってると思うよ。」

「ありがとー」


すごい棒読みのお礼をされて缶コーヒーを買った。まだ8時半前だけど、他のクラスが来る前に部屋に戻らないとな。


「じゃあ、そろそろ部屋に戻るね。体冷やさないようにね」

「仁科くん、お祖母ちゃんみたい」

「嬉しくない褒め言葉ありがとう」


その場にいた人たちと分かれて悠陽と薫と一緒に部屋に戻った。部屋に戻ったはいいけど薫はトランプ忘れたって言ってたし、俺も悠陽も持ってきてないから暇なんだよね。ひたすらテレビ観るしかないか。適当にテレビをつけると、咲久の好きな俳優の谷本玲音の里帰り企画が放送されていた。


『咲久、テレビで谷本玲音出てるよ』

『私も観てたとこ』

『そうなんだ』


谷本玲音って俺と同じ年齢の弟がいるんだな。地元が近いし中学の頃によく練習試合した他校のサッカー部にいた上本鈴音に似てるな。あいつも7歳上の兄がいるって言ってたし。顔もそっくりだし。今度訊いてみよう。


「テレビ、終わったね」

「暇~!」

「俺ちょっとお土産見てくる」

「僕も行く」

「え~!ちょっと俺は?置いていかないでよ~!」


財布を持って1階の売店まで行った。


「あ!かいちょーじゃん!」

「立花くんもいる!」

「薫やっほ~!」

「やっほ~、そっちもお土産見に来たの?」

「そうなんだけど、売店閉まってたよ」

「マジで!?じゃあ戻るか~」

「そうだね」


まあ、お土産なんて明日1日買う時間あるし。就寝は11時だからまだ1時間弱あるんだよね。トランプとか持ってきたら良かったな。


「ねえ、卓球しに行かない?結構みんな行ってるみたい」

「いいよ。悠陽と真白も行くよね?」

「「いや、別に……」」

「拒否権はないから」


薫に引かれて無理やり卓球のできる部屋まで連れて来られた。というか、ホントにうちの生徒いる。先生もいるけどなんか一緒に卓球してるし。客室から離れてるからある程度騒いでも迷惑にならないからいいのかな?


「あの、仁科くん。ちょっといいかな?」

「ん?なに?」

「ここでは、ちょっと。ついてきてくれない?」

「……うん。いいよ」


場所を移してベンチに座った。すると、数人の女子生徒が俺の周りに立った。


「どうしたの?」

「仁科くん、明日の自由行動一緒にまわってくれませんか?」

「お願いします」

「仁科くんが好きなんです」

「だから、高校最後の思い出作りとして」


高校最後の思い出作り、か。俺も好きな子と、咲久と一緒に来たかったから気持ちは分かるけど。


「……ごめんね。好きだって言ってくれてるのは嬉しいけど、応えられないのに一緒にまわったりするのはあんまりしたくないかな。それに、悠陽と薫と他のメンバーともまわる約束してるから」

「そう、ですよね」

「困らせて、ごめんなさい」

「ううん。福本さん、森川さん、桧山さん、西さん。好きって伝えてくれてありがとう」

「「はい」」



卓球の部屋に戻ると友人が駆け寄ってきた。


「真白遅えよ」

「ごめんごめん」

「どうせ告白されてたんだろ!」

「イケメンめ!」

「リア充のくせにまだモテるのかよ」


なんで俺何も言ってないのにキレられてるの?理不尽すぎない!?


「ちょっと~、真白がモテるからってひがんだりしたらダメだよ~。真白だって彼女と離れ離れで寂しい思いしてるんだからさ。昼間も『私のことは忘れて修学旅行楽しんで』って言われて連絡が鬱陶しかったかなとか不安そうに言ってずっと面倒くさいことかったんだよ」

「ちょっ、薫!咲久にまで言ったりしたら本気で許さないから」

「分かってるよ」


咲久に伝わってめんどくさいなんて思われたら最悪。というか、好きな子に嫌われたかもって心配しちゃうでしょ。もしかしたら咲久の中で俺はただの幼馴染みに戻ってるかもっていつも不安になるし。 


「真白でも不安になったりするんだな」

「なるよ。普通に」


別に俺は感情を持っていないロボットじゃないんだから咲久のことじゃなくても不安になることくらいあるんだけどな。



 修学旅行2日目。今日は10時から15時まで丸々自由行動だ。咲久へのお土産どうしよう。まあ、時間はたっぷりあるしゆっくり考えよう。


「真白、そろそろ集合」

「分かった」

「楽しみだね~、自由行動」

「そうだね。悠陽は行きたいとこある?」

「水族館」

「好きだよね」


ちなみに、自由行動とは言っても決まった場所にしか行けないしそれぞれのエリアに先生がいる。長い注意事項を聞き終えて電車に乗って水族館に行った。


「仁科~!ジンベイザメと写真撮らねえ?」

「撮る?でも、自撮りじゃ無理そうだなぁ。あ、すみません。写真撮ってくれませんか?」

「もちろんええよ。修学旅行生?」

「はい。あの、ジンベイザメが入るように撮ってほしいんですけど」

「おっし、任せとき!」


写真を撮ってもらってお礼を言って館内を移動した。ペンギンの水槽の前に行くとペンギンたちがエサをもらっていた。咲久に動画送ってあげよう。



 * * *


なんか、真白から動画送られてきたんだけど。


『かわい。ホント可愛い』

『仁科って動物好きだな』

『うん。可愛いじゃん』

『分かる。可愛いよね。俺も留衣に送ろ』


「咲久姉?どうしたの?」

「莉久、可愛いって言ってる人ほど可愛いよね」

「え?そうだね……?」


真白に今すぐ会いたい!……なんか、動画見てたら寂しくなってきた。


「早く帰ってきてよ……」



 * * *



「っ!」

「真白、どうしたんだ?」

「いや、なんでもない」

「そうか。そろそろ移動するぞ」

「うん」


水族館を見てまわって水族館のすぐ側の観覧車に乗って繁華街に移動した。

お土産を見たりたこせんを食べたりして、もう14時になっていた。


「あとは、仁科の行きたいとこだよな?」

「うん。すぐそこの店なんだよね」


近くの粉もののお店のドアを開けた。まあ、半分は居酒屋だからお昼はお客さんが少し少ない。


「いらっしゃい」

「和人叔父さん、お久しぶりです」

「姉貴は元気か?」

「はい。まあ、元気がなくなっても父さんが治してくれますよ」

「せやな~。せっかくの修学旅行やねんからもっと違う店行ってもええのに」

「叔父さんの焼くお好み焼きを友達に食べさせたくて」

「食ってけ食ってけ」


席に座って手を拭いて待っていると叔父さんは何かを思い出したように声をあげた。それと同時にお店のドアが開いて見覚えのある女性が入ってきた。


「叔父さん~!やっほ~!」

「げっ」

「げっ、てなによげって」

「別に」

「真白、なんで大阪にいるの?」

「修学旅行」

「そうなんだ」


女性はやっと俺以外のメンバーに視線を移すと笑顔を浮かべて俺の隣に座った。


「私は柚希。英語教師を目指して東京の教育大学に通ってる4年生。いつも弟と仲良くしてくれてありがとう」

「「弟!?」」

「うん。私、真白のお姉ちゃん。今は彼氏のお姉さんのシナハンの手伝いで来てるの」

「今回は続きそう?」

「うん。もう3年目だからね。まあ、私も色々学習して付き合ってすぐにびっくり発言は言わなくなったのよ」

「よかったね」


まあ、夏目漱石が初恋なんて言われたら驚くよね。姉さんって付き合ってすぐに彼氏に言って引かれて別れること多かったせいか全然長続きしてなかったんだよね。まあ、3年も続いてるなら言ってももう大丈夫だろうけど。


「お待たせ~。柚希も食べると思って大きめに焼いといたで~」

「「ありがとう(ございます)、叔父さん」」

「相変わらず仲ええな~」


叔父さんはガハハと笑ってお好み焼きを鉄板の上に置いて調理場に戻った。ヘラでお好み焼きを切ってお皿に乗せた。

お好み焼きを食べ終えてお店を出た。


「じゃあね。真白、みんな楽しんでね。高校の修学旅行は今でも楽しい想い出でいっぱいだからたくさん想い出作ってね」

「分かった」

「ありがとうございます」


姉さんと分かれて駅に向かった。駅でうちの生徒のグループと会って一緒にホテルに戻った。ホテルに戻って夕食までの自由時間は友達が俺たちの部屋に来て一緒にトランプをした。

夕食後、3階にある広場でレクリエーションをした。俺は何人かのメンバーとダンスをした。

レクリエーション後、広場内でみんな喋ったり写真を撮ったりしていた。その中の何組かはカップル同士で俺は咲久に連絡してしまった。


『咲久、今通話できる?』

『できるよ』


「もしもし」

『なに?』

「咲久の声が聞きたくなって」

『そっか。あ、修学旅行どう?楽しい?』

「うん」

『よかった』

「咲久、早く会いたい」

『明日になったら会えるよ』

「そうだね。……咲久、大好きだよ」

『え!あ、ありがと。私も、大好きだよ。……真白』

「ありがとう。じゃあおやすみ」

『おやすみ』


なんでだろ。声聞くとさらに会いたくなったんだけど。まあ、明日には会えるし。早く明日にならないかな?


「お~い、仁科~。なにニヤついてんの?」

「え、ニヤついてた?」

「めっちゃ」

「マジ?恥ずかし」


咲久が照れてるのがスマホ越しに伝わってきて俺まで照れてた。あ~、でも照れてる顔見たかったな~。今、絶対に可愛い顔してるんだろうな。



 最終日、10時にチェックアウトをしてバスで駅まで移動して新幹線に乗って帰った。ちなみに、昼食は新幹線の中で弁当を食べる。

 駅について新幹線を降りてまたバスに乗って学校まで帰ってきた。『帰るまでが修学旅行です』というお決まりの台詞をいただいて解散した。


「すごい人だかりが出来てる」

「ホントだ。」


人だかりの方へ行くと私服姿の咲久が立っていた。咲久は俺に気付くと駆け寄ってきた。


「あ!真白、おかえり」

「咲久!え、迎えに来てくれたの?」

「……真白に早く会いたくて」


俺は思わず咲久を抱きしめた。俺の彼女、ホントに可愛い。


「ただいま。俺も早く会いたかった。お土産いっぱい買ってきたから一緒に食べようね」

「お土産ってお菓子!?なに!?」

「カヌレとバターサンドとタルトとチョコクランク」

「待ってました~!」


咲久はここぞとばかりに喜んで俺を抱きしめた。


「咲久ってば、お菓子目当てで俺のこと迎えに来たの?俺はずっと寂しかったのに。」


俺はおかえりのキスをした。


「なっ!また、急に!友里さんもニヤニヤしながら見ないでください!」

「ごめんごめん」


友里さんって……。


「は、待って!母さん!?」


「仁科のお母さん!?」

「やば!美人!」

「若っ!」


「ホント最悪。」

「誰が咲久ちゃん連れてきたと思ってるのよ。咲久ちゃん、真白置いて帰ろっか。前に行きたがってたケーキ屋さん2()()()行こっか」

「え!予約取れたんですか!?半年待ちとかなのに」

「私は常連だし、出資者だから離れの方ならいつでも入れてくれるのよ。でも2人分しか席がないの」


うわ、この人。実の息子の前で彼女に媚売ってる。咲久のこと昔から可愛がってたけど俺よりも気に入られようとしてない!?


「じゃあ、友里さんと真白で行ってください。」

「「え、なんで?」」

「だって、友里さんも真白も甘いもの好きだし、友里さんお仕事忙しいから真白とあんまり話せてないかなって」


咲久が美味しそうに食べてる姿見るのが好きなんだけどな。母さんもそうだろうし。


「母さんと話すことなんてないんだけど。そんな時間あるなら咲久と喋っていたい」

「私も咲久ちゃんとお話したいわ」

「じゃあ、早く帰りませんか?ここ、ちょっと寒いし」

「気付けなくてごめん!」

「咲久ちゃん、すぐに帰って暖かい紅茶でも淹れようね」


俺と母さんは慌てて荷物を車に積みに行った。




 * * *




「帰り道を塞いでしまってすみません。修学旅行、お疲れさまでした」

「真白のお母さんって感じだったね」

「まあ、真白の性格は友里さん譲りですから。顔はめちゃくちゃ父親似ですけどね」


優しいところは2人に似たんだろうな。私が寒いって言ったらすぐに帰る準備してくれたし。


「薫先輩、真白ちゃんと楽しんでましたか?」

「うん!めっちゃ楽しんでたよ」

「よかった。でも、楽しんでる姿見られなかったのは残念だな。真白の笑った顔好きなのに……」


「咲久~!」

「ちょっと待って!それじゃあ、副会長、薫先輩。皆さんも。気を付けて帰ってください。あと、さっきのことは真白には内緒で。恥ずかしいので」

「「うん」」




 * * *




「小鳥遊さん、可愛いね。」

「うん。仁科くんが溺愛してるのも分かるよ」

「私、ファンになりそう」

「私も」


こうして着実にファンを増やしていく咲久なのであった。

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