変わってしまった関係
カインとリズは幼い頃からの付き合いで、婚約が決まった当初はカインもリズのことを今ほど嫌ってはいなかった。
面白みがないと不満に思う気持ちはあったかもしれないが、今ほどあからさまに嫌悪感を出して接してくることはなく、あくまで婚約者としての最低限の礼節を保った態度で接してくれていた。
けれど・・・
1年ほど前にアリスが彼の前に現れてから、カインの心は完全にリズから離れてしまった。
今まで欠かしたことのなかった毎週の2人きりでのお茶会にも欠席が増え、外で偶然会ってもそっけない態度で、酷い時には無視をされる。
今日も、アリスを伴い舞踏会に行くことを諌めると、手痛い言葉を投げつけられた。
彼はリズが舞踏会に行きたくないのに、婚約者の見栄から、アリスに同伴者としての地位を渡したくないと思っているようだ。
何故だろう。
リズはこんなにもカインを愛しているのに。
カインがいるから、こんな世界を生きても良いと思えているのに。
彼のいない世界など、考えられないというのに。
「お前は話もできないのか!」
「陰気な女だ。」
今日彼に言われた言葉を思い出す。
確かに、リズはこれまでカインに対して、ストレートに気持ちを伝えることは少なかったかもしれない。
彼の前では緊張してなかなか思いを伝えられず、意識しすぎて変に他人行儀な態度をとってしまったかもしれない。
「これは、良くないわね。」
改めて自分を省みて、リズはぽつりと呟く。
早急に彼への態度を改める必要がありそうだ。
ただ、これ以上彼との関係は悪くなりようがないほど悪化している。
そんな中でストレートに好意を伝えることが、
逆効果となる可能性もある。
・・・だから何だというのだろう。
どうせ元から嫌われている。
言ってみるのはただなのだし、本当のことなのだし・・・
何故か自分への言い訳を考えながら、リズは重要なことを思い出した。
「そのためにはまずアリス様に毒を盛らなければいけないわね。」
これは比喩でもなんでもなく、リズはこれまでに何度かアリスに毒を盛っている。
カインと密かに旅行に行こうとしている時、カインが両親に引き合わせようと試みた時、カインが・・・
重要な局面で、リズは出元のわかりにくいように調合された、死なない程度の毒を、アリスが口にするよう仕向けてきた。
そんなことができるのは、アリスの最も信頼している侍女を脅して協力させているからだ。
家族の身の安全のため、彼女は泣く泣くリズに従っている。
念のため、裏切った場合にどうなるのか、初めに少し痛い目に遭ってもらったので、彼女がリズを売ることは、今のところは考えられないだろう。
金と権力のある家に生まれてよかったと、リズは自分の境遇に感謝した後、父のくれた「そういう時」のための従者に、いつもの毒をアリスの侍女に渡すよう指示をした。
24日夜にも投稿予定です。




