147 大気消滅 (改訂-5)
【大気消滅】をお送りします。
宜しくお願いします。
この異世界には、
時の流れを感じない……
時の概念も、物理法則も虚な世界……
クラインは後悔に苛まれた……
(……私は間違えたのか? ドリス教えてくれ……私はどうすれば良かったんだ? )
ドリスはクラインが幼少期に命を狙われて国を出奔し、隣国のゴドラタン帝国に身を寄せていた時期に、帝国の魔導学園に在学中、机を並べた親友だった。ドリス、エルトリア、ジーク、クリス、皆んなかけがえの無い仲間たちだ。
『……ルバンス……』
この虚な世界で懐かしい声が響き渡る。
『まだその名で呼んでくれるのか? 』
『私にとっては、あなたはルバンス以外の何者でもないわ……』
『ドリス……だけど僕は君に逢いたいばかりに、世界をこんなにもしてしまった……』
『……償えない事なんか無いのよルバンス……私はいつでもあなたに逢えるから……そうあの頃の様に……虚なる神は消滅させなければならない……あれはこの世にあってはならない不自然なものなのよ……』
『わかっている。僕の心の弱さが奴を引き寄せてしまった……その責任は取らなければならない……この異空間に彼らを呼び寄せる。神の器と時貞の、両方をやらなければ、虚なる神の魂魄を剥がすことは出来ない……』
『だけど、彼等がそれに気づかなければ、こちらに引き寄せる事が出来ないわ』
『……ヒロトだったか……彼はもう気づいている。彼の存在は他の召喚者と違って特殊だ……エレクトラと繋いでくれるかい?』
『わかった。ならば私が導くわ』
ドリスが昔の様に微笑んでくれた様な気がした。
◆◇◆
アヴァロンの甲板での作業は困難を極めた。大気が荒れ狂っている為、身体を安定させるだけでも至難だった。
「もうすこしじゃ! 」
最後のパーツの生成に取り掛かったクレオパトラの前に白い物体が現れた。
「天使!! ちぃいい!! 」
クレオパトラは瞬時に爆裂魔法を天使に向かって放った。目の前で大爆発が起こり、爆風に煽られる。だが天使は全くの無傷だった。
「ややられる! 」
天使が剣を振り下ろした瞬間、剣を受け止めた者がいた。いつのまにか大勢の騎士達が皆を守る様にフォーメーションを組んでいる。
「円卓の騎士!! 」
「皆様は術式の完成を!! 我らが防御いたします」
そういって円卓の騎士ランスロットと、ガウェインは天使に斬りかかってゆく。
『……エレクトラ……エレクトラ! 』
「お兄さま!? 」
『僕の声は聞こえるね? 』
「お兄さま! 正気に戻ったのですか! 」
エレクトラは涙が溢れだしてしまった。
『時間がないんだ。君から念話でヒロト君に今から言う事を伝えて欲しい。虚なる神をこの世から消滅させるには、奴の魂魄……人口的に作られた魂を神の器から引き剥がさなければならない。だがその為には神の器と同時に、奴を操る時貞も屠る必要がある。私の力で三人、時貞の居る異空間に送り込む。人選はヒロト君に任せるから』
「わかりました。ヒロトに伝えます! 」
◆◇◆
ヒロトはエレクトラからの念話で、全てを理解した。直ぐに人員を選び、クラインに伝えて貰う。虚なる神から術に対する介入をさせない為に、マーリンの魔法発動に合わせて飛ぶ事にした。
「……新緑の聖なる精霊よ、我が声を聞け、我が心を見よ!風と大地の精霊よ、雨の精霊よ! 汝らの王国を蹂躙せし悪しき者を討ち滅ぼす力を与えん!」
マーリンは複数の魔法陣を同時に描き出した。ヒロトが魔導演算を手伝う。その時、虚なる神はまた翼を広げはためかせた!
「真空」
その一言で周囲の空気が全て消滅した! 流石のアーサー王も武蔵も胸を押さえて、倒れ込む。マーリンも空気が無いから呪文詠唱も出来ない。
「地上の半径五百メルデの大気が消滅! 酸素を奪われています! 」
フェルミナが叫んだ。
「その半径の直ぐそばに、重力子爆雷を投下! 大気をかき混ぜろ!! 」
ジークフリードのその言葉とほぼ同時に、エルトリアは爆雷を発射した。凄じい爆風の後で、小型のブラックホールが周囲の大気や瓦礫を吸い込む。そのおかげで周囲の大気がかき混ぜられて、大気を失った場所へ一気に流れ込んだ。
「ぐっふぉお!! おぁ! はぁ、はぁ!! 」
総司が空気を、吸い込んでなんとか身体を起こす。
「グラウス! 大丈夫か? 」
ウィリアムがグラウスをゆするが、反応が薄い。酸欠だった時間が長すぎた。危険な状態だ。
「私が陛下を連れてアヴァロンに跳躍します」
そう言って晴明はすぐに呪符を取り出して、行動に移った。
【大気消滅】をお送りしました。
(映画 コンタクトを観ながら)




