146 負けるもんですか! (改訂-5)
【負けるもんですか!】をお送りします。
宜しくお願いします。
半径5デルの範囲に衝撃波が広がった。
アヴァロンも例外ではない。
「きゃあああ!! 」
船体が大きく揺れて、リプリスが飛ばされそうになるのをナターシャが受け止める。
「はは早く術式を! 」
クレオパトラがヴァルフに急がせ、自身も多層構造の部分術式パーツを構築する。
「何とも、よくこんな術式を思いつく物だ。各パーツをバイパスによって繋ぐのか? 下方と上方から一気に圧縮し、錬成するのだな」
「流石、妾が認めた男じゃ! こんな術式はヒロトしか思いつかぬ! あと五パーツじゃ! 」
クレオパトラは絶妙な神霊力の調整を行いながら小型の魔法陣を幾つも空中に構築していく。
◆◇◆
『……時貞……貴様! やはり謀ったな! 』
『……世界を創造し直すと言ったのだ。なにも嘘では無い』
『……こいつは、破壊衝動しか無い。創造だと?! 笑わせるな! 』
クラインはよく意識を保っている。段々と朧げになるが、自らの意識体に防御結界を張ってなんとか耐えていた。
『星を一度殺し、そこから新たに始めればよい。ただその時には私はもうこの世にはおるまいよ』
時貞の邪悪な意識がクラインの防御結界に襲いかかる。
『そんな事はさせん! 』
『足掻け足掻け! その焦りも神は好物だ』
誰も止める事などできぬ。この計画に八百年も費やしたのだ。
◆◇◆
アーサー王、ウィリアムと小次郎が虚なる神を左右から連撃で迎え撃つ! そこへ武蔵と総司も割って入る。その攻撃の隙間をビリーが狙い撃ちする。
「くそ!! 何処まで効いてるかわからんだなや〜」
「ビリー、これを使ってくれ! 」
ヒロトは術式を構築しながらシステムAIの亜空間保管庫から別の武器を取り出した。
「なんだこりゃ? 」
「いまのビリーなら使いこなせるよ。ファイヤーグランドラインの古代文明の遺跡から入手した魔導式超電磁加速粒子砲だ。粒子を電磁力で加速して撃ち出す! また粒子ビームだけじゃなく、実弾も発射可能だよ。こいつの特徴は魔導的に粒子加速を安定させている点にある。霊体にもかなり効く! 」
こんな時でもヒロトはうんちくを忘れない。
「……よくわからんが、かなりヤバイ奴だなや〜? 」
ビリーはそれを受け取り構えてみる。照準はAIがある程度補正する。
「そう! かなりヤバイ! 多少の反動があるけどビリーならやれるよ」
「ならさっそく! 」
ビリーが虚なる神に照準をつける。砲身回りをルーンの光がリング状になって現れ回転する。
ズガガガガガガガガンンンン!!!!!
凄じい轟音と共に、最高速まで加速した粒子弾が発射され、虚なる神の防御結界を貫通し、着弾した! 神の肩が吹き飛ぶ!!
「奴に届いた!! ビリー! どんどん撃っちゃって! 」
黒革の金細工の施された本を広げて、グラウスは目を瞑る。
「わが宝物殿より、出でよ! 」
黒革の書よりさらに漆黒の影が多数吹き上がる!
「北欧神話、吹雪の精霊フェンリルよ! 我らの剣士達と共に戦え! 」
本より召喚された巨大な狼の様な精霊が、武蔵達と共に神を攻撃する。その神を観察していた九郎がヒロトに話しかける。
「……ほら、影があるだろう? あれは実体だ……ほら、変わった! 」
「変わった? 」
ヒロトにはよくわからなかった。
「ほら、また実体だ…….よく見て、ほら! 」
「…….影か? 」
「そうだ。影が消えるだろ?! 影が消えてる時は霊体になってる。影がある時は実体だ! 奴は実体と霊体を入れ替えながら攻撃してくる。霊体から実体になると、実体に与えたダメージがまたゼロになってる。あれじゃ、きりがない。どうする? 」
流石、九郎だ。冷静に状況分析している。アップルシードにも解析させているが……
「だがそれだけじゃない。奴の本体である時貞も同時に攻撃しなければ仕留める事は出来ない。奴は別の異空間に居るよ。ここに奴の気配も殺気も無い」
「別の異空間?? 」
そんな事までわかるのか? ヒロトは舌を巻いた。
「ああ、あくまでも目の前の神は器だ。そこに時貞の気配を感じ無い。その中身をやらないと、奴は止まらんぞ! 多分そこにクラインも捕らわれている……」
虚なる神の神霊力が増大していく。
「なんか来るぞ! みな防御しろ!! 」
九郎は腕を交差して身構える。
「彗星」
虚なる神の、その静かな言葉のすぐ後に、天空から巨大な隕石が降ってくる!!
「我らが主よ! 主の子供らを護り給え!! 」
ジャンヌが神霊力を爆発させ、周囲に神気を広げていく。巨大な大聖堂のドーム天井がその神気に合わせ広がっていき、隕石が直撃する破壊的な衝撃に対抗する!
「うぐっぐぐぐ!!!! 負けるもんですか! 」
ジャンヌは口から血を吐き膝をついた。
【負けるもんですか!】をお送りしました。
(映画 おくりびとを観ながら)




