138 近代兵器 (改訂-5)
【近代兵器】をお送りします。
宜しくお願いします。
ティーガーE型戦車。前面装甲はアメリカのシャーマン戦車がゼロ距離で砲撃しても貫通しない程の装甲を誇る。大戦中盤にゲームチェンジャーとして開発されたが、複雑な設計に加えて戦闘重量が五十七tもある為、トランスミッションに負荷がかかり過ぎる難点があった。戦争末期には通常の戦車の三倍以上のコストがかかる為、生産されなくなった。
「前面の装甲は厚すぎて貫通は難しい。だが弱点もある。上部面は装甲がどうしても薄くなるし、キャタピラを潰せば動けなくなる」
円陣を組んで、ヒロトが説明する。
「なら魔法での上部面攻撃をしつつ、キャタピラという物ですか? それを潰して回る」
晴明も即座に最適な術を思い浮かべていく。
「なら俺と、アーサー王殿とで、キャタピラとやらをやる。クレオパトラ殿と、晴明で上部面攻撃、ビリーとヒロトで援護って感じか」
武蔵が纏めてくれた。
「ただし、相手は機甲師団だ。戦車だけでなく、当然機械化歩兵部隊もいる。晴明の式神で相手をしてくれ」
「わかりました。最適なのを用意しますよ」
「奴ら、おってこないだなゃ〜。あの空間内でしか活動出来ないとか? 」
ビリーはバレットM82対物ライフルを掃除しながら、会話に参加する。
「そうかもしれない、あの大群を留める為の魔法陣があるのかもしれないな」
◆◇◆
整然と並ぶ機械化された軍車両の後方にその男は佇んでいた。風がとても気持ちが良い。故郷の風を思いだす。
「ここは、ビル・ハケイムに似ている……フランス旅団を殲滅した栄光の日々……祖国ドイツはもう陥落したか……なのに我らは何をやっているのか……この呪いのせいか……」
どこで間違えたのだろう……祖国を護る戦いだった筈が、いつしか殺戮の片棒を担いでいる。私を、信じてついて来てくれた部下や家族に申し訳がたたない。
「将軍! 敵は上の階層にまで撤退しました」
「……引き際が良いな。我が軍団を知る者がおるのやもしれぬな……対人戦闘になる。徹甲弾から炸裂弾に! 」
ロンメルは命令以外の事を考えようとすると、頭に靄がかかり、頭痛がひどくなる。
(……あの蘭丸とかいう東洋人……死した我らを呼び出して、まだ戦わせようと言うのか……)
「まさに呪いだな…….」
そう言いながらでも、ロンメルは何処か嬉しい自分がいると思った。職業軍人の鏡と言えば聞こえはいいが、要するにバトル・ジャンキーなだけだ。
ヒロトは再度第七十階層の入り口にまで戻って来た。戦術モニターをみると、敵は待機陣形を組んで動きが無い。
「やはり制約があるのか? 晴明! 」
「心得た! 」
そう言って懐から術の発動元となる呪符を取り出し、なにやら文字を書き足してゆく。どのような仕組みか、一枚だっは筈の呪符の枚数が増えてゆく。その呪符を天に放り投げた。呪符が、天高く舞い上がり、階層中央へと飛んで行く。
「オノオノ、ミハシラ、アメノミハシラ……」
呪文を唱え、印を切ると、地面に呪符が吸い込まれる。次の瞬間、人間の背丈の二倍はある存在が地面から浮かび上がってくる。四本の腕を持ち、各々に剣を構えている。
「呪禁怨霊百鬼陣!! 」
全部で百体の式神が踊り出た。そのまま敵機甲師団に襲いかかる。いきなり現れた式神に、ドイツ軍兵士達は混乱するが、すぐに態勢を整えて機械化歩兵が火炎放射で応戦し始める。
それを合図にクレオパトラが各自に魔法障壁を施してゆき、武蔵とアーサー王が突入する。
ヒロトの爆裂魔法で、即席の塹壕をつくり、そこからビリーが狙撃を開始した。
ズガガガガガガガガンンンン!!!!
「……左に1メモリ誤差修正、ショット! 」
神霊力が込められた貫通弾は、敵戦車のキャタピラを狙い打ちにして行く。
「……やはり戦車を知っている者がいるな。あれは対物ライフルか? 」
ロンメルは双眼鏡を覗きながら、戦術の整理を行って行く。
「上手くこの世界の魔法とやらと併用し、対応している。……面白いな! 敵の剣士どもは、戦車砲では捉えられん! 機銃で対処しろ! 」
「なんだ、あれは銃の一種か? 弾丸が雨の様に降ってくるぞ! 」
武蔵とアーサー王は破壊した戦車の側面に隠れて、様子を窺うが、機銃の攻撃で身動き出来ない。
「ビリー殿はよくやってくれているが、さてさて、順番に潰して行くしかあるまい! 」
そう言って、向かいの装甲車に向かって真空剣を放ち、機銃を潰して行く。
「陛下! 私に魔法障壁を倍かけしてくれますか? 」
ヒロトは剣を抜き、詠唱にはいる。
「十倍がけしてやろうぞ! 」
クレオパトラはそう言って、魔法障壁を連続でヒロトに施して行く。そしてタイミングを見計らって、真正面から飛び込んで行った! その顔はロンメルと同じく、何処か嬉しそうだった。
【近代兵器】をお送りしました。
(映画 連合艦隊を観ながら)
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