133 神乃子宮 (改訂-5)
【神乃子宮】をお送りします。
宜しくお願いします。
深く潜れば……
潜るほど……
現実感が薄くなる……
既にロード・グランデ大迷宮の第六十階層にまで潜っている。迷宮の入り口には各国の軍が集結し、周辺地域の掃討作戦が実施されていた。
【第一部隊】
グラウス皇帝
源九郎判官義経
佐々木小次郎
ジャンヌ・ダルク
ウィリアム・マーシャル
「敵の出現数は減って来ている……その分、敵個体が強力になっているが……」
九郎はまた一人言が増えている。常に状況を上書きして、その都度最善策を導き出す。
「確かに。この階層で出現した化け物は全部で二十三体、段々減ってきているな……」
グラウスは周囲を警戒するが、敵の気配は無い。また階層の面積も少しづつ狭くなって来ている。一行が更に進むと、ひらけた場所に出た。巨大なホールになっていて、正面に大人二人分ほどの高さがある両開きの扉が見える。
「……階層主か? 」
九郎と小次郎の二人で同時に左右の扉を押しひらいて行く。
「……なんなの?? 」
ジャンヌは目を見張った。
どう見ても外だった。森が広がっている。陽の光が降り注ぐこの空間はまさに外だった。森には鳥が囀り、風が渡る。空気のカビ臭く無い。
「……いや空は魔法による映像か? ……」
ウィリアムは近くの木の枝を折ってみた。本物の植物だ。
広大な空間だった。映像を映し出す天井まで一○○メルデはあると思われる。奥行きはよくわからない。河まで流れている。進んで行くと、ひらけた草原に出た。そしてその正面に巨大な聖堂がそびえている。
「……いや〜な妖気が出てるな〜幻術か? 」
九郎が聖堂の扉を一気に開け放つ! その瞬間、また別の空間に移動させられた。全員が聖堂の中に転移されている。
「なんか来るぞ!! 」
九郎の反応で、一斉に戦闘体制に移る!
聖堂のドーム天井が上に上に伸びて行く感覚に襲われる。
ジャンヌはすぐに眼を閉じて主に祈りを捧げる。その祈りにあがらう様にドームに術の詠唱が響き渡った。
「……そこにいるのよね? ジル? 」
「……思い出されたかジャンヌよ? 」
聖堂の正面、聖人が描かれたステンドグラスから降り注ぐ光に照らされて、いつの間にかジル・ド・レが立っていた。手には巨大な逆十字の意匠がはいった剣を携えている。
「……私は多分、貴方が出会う前の私……現世ではまだ出会っていないの……」
ジャンヌを守る様に、左右に小次郎とウィリアムが付く。
「成る程、それならば全て説明がつく……まだ遅くはありません……共に神の子宮に参りましょう」
「神の子宮? 」
「そうです。全ての魂は揺り籠にて一つとなり、神の子宮に送られて生まれ変わるのです。苦しみの無い世界に」
「私はまだ現世で成さねばならぬ事がある。そう思えるのです。貴方とは道が違う」
ジャンヌはなにかしら身体に纏わりつく様なしがらみを、払い除ける様に左手を払う。
「運命を変える事は人の身では無理です。人の身では……残念です。ならば無理矢理にでも魂に変えて共に参りましょう! 」
ジル・ド・レは剣を抜き放ち天に掲げた。剣先から閃光が発して熱線がジャンヌに襲いかかる。
グラウスが魔法障壁を展開してジャンヌを護りに入った。
「その首貰い受けるぞ!! 」
一気に九郎が間合いを詰めて、ジル・ド・レに斜め上段から斬りかかった! が、その刀を受ける者が間に割り込んで来た。
「東洋のサル風情が調子に乗るなよ」
邪悪な笑みを浮かべ、逆十字の巨大なロザリオで、九郎の太刀を受け流し、九郎に蹴りを見舞う!
「我が宝物殿を守護する死神よ! 出でよアヌビス!! 」
グラウスが黒革の本のページをめくり、天にかざすと、その中から犬の頭をした人型の巨人が現れた!
ナポレオンがエジプト遠征で手に入れたエジプトの巨大な怪異だ。現地では神として崇められている。
アヌビスが手にした錫杖をラスプーチンに叩きつける!
「サルの次は犬か! 異教の神など!」
ラスプーチンがアヌビスの攻撃をかわしながら、左人差し指で逆十字を切り、主に仇なす穢れた言葉を発する。すると空間に漆黒の穴が空き、そこからデーモンを召喚する。デーモンはアヌビスに巨大な斧で襲いかかった!
小次郎がジル・ド・レに向かって走りながら、背中の長剣【物干し竿】を一気に引き抜きながら居合い斬りの一閃を浴びせる! その太刀をかわし小次郎に上段から剣を叩き込む!
小次郎はその剣をかわしながら、神速の技で迎え撃つ!
「燕返し!! 」
小次郎の剣筋が一気に跳ね上がり、ジル・ド・レの左腕を断ち斬った!
「下郎が!! 」
ジル・ド・レが右掌を小次郎にかざし、振動波で吹き飛ばす!
その状況を別の階層からヒロトは全て把握していた。
【神乃子宮】をお送りしました。
(映画 リングを観ながら)
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