127 精霊乃王 (改訂-5)
【精霊乃王】をお送りします。
宜しくお願いします!
底無しかと思われる闇が広がるその竪穴に、
次々と落とされる妖魔の魂たち……
わざわざ戦力になるであろう妖魔を虐殺してでも、
あの竪穴に放り込む必要があるのだろう……
マーリンは寒気を覚えた。
AS-0213 機械蜘蛛 レベル90
「……機械蜘蛛が全部で八体。 詠唱に入るわ」
そう言ってマーリンは小さな声で呪文を呟きだす。
「我らは下に降りて、前衛をこなす」
そう言ってグラウスとアーサーがわれ先にと、走って行き、その後を、セネカと円卓の騎士が続く。ヴァルフとナターシャも詠唱に入った。
アーサーは、機械蜘蛛の前に出て、背中の聖剣エクスカリバーを抜く。
「此奴ら、あの船と同じ金属で出来ている? 」
「アヴァロンと同じ超帝国の魔導兵器だな。それを奴らが使うか?! 」
グラウスもアーサーの隣に立ち、金の細工が施された黒革の古めかしい本を左手で広げ、右手で印を切る!
その途端、本の中から、巨大な腕が伸びてくる。更に頭、胴体が現れ、両手を地面について、全身を本から引き出してゆく。体長が五メルデはある青銅色の巨人が次々と出てくる。
「我が宝物殿の巨人よ! 奴等を排除せよ!! 」
伝説にあるロードス島の巨人を召喚した。そして自らも、剣を抜き、アーサーと共に斬り込んでゆく。アーサーは青眼に聖剣を構え、神霊力を練り込んだ一撃を機械蜘蛛の正面から叩き込む!
だが機械蜘蛛の装甲を貫通する事は出来なかった。装甲表面に魔力を帯びた古代の呪文が浮かび上がる。
「こいつの装甲はアヴァロンと同じで時間軸が停止している。神霊力を溜める! 時間を稼いでくれ!! 」
アーサーは聖剣を、肩に担いで、意識を集中し始めた。
物質を構成する分子その物の時間が、魔導術式によって停止している。その術式ごと破壊しなければ、装甲素材その物には傷一つつかない。青銅の巨人と、セネカ、円卓の騎士が敵の攻撃を防ぎにかかる。ヴァルフが身体強化魔法を、ナターシャが回復魔法をかけ続ける。
「……至高なる集いのうちに、我の怨敵を滅する黒き炎を上げ給え……バルマハ サドラ バスラ 黒炎怨呪爆!!!!! 」
マーリンの魔法が完成した。機械蜘蛛の足元から真っ黒な炎が立ち登る!! 炎は粘着質な液体の様に蜘蛛の身体に纏わりつきながら、広がってゆく!
呪いの炎が、機械蜘蛛の動きを拘束する!!
「長くはもたんぞよ!! 」
グラウスが更に黒革の本のページをめくり、何事か詠唱を始める。
「待たせたな!! 化け物!! 」
アーサーは一気に踏み込み、白銀に閃光を放つエクスカリバーを上段から機械蜘蛛に叩き込む!
見えない障壁に阻まれたが、障壁を崩壊させて、機械蜘蛛の装甲に亀裂を走らせた!
返す刃で、別の機械蜘蛛へ横殴りの一閃! 次々と亀裂を生じさせてゆく。
「我が宝物殿の槍よ! 化け物共を貫け!! 」
グラウスが黒革の本を掲げると、本から閃光が機械蜘蛛に走る!!
次の瞬間、黄金に光輝く長槍が、アーサーが生じさせた機械蜘蛛の亀裂へと深く突き刺さり、八体同時に炸裂する!!
全機行動不能に陥った。
◆◇◆
「終わったようじゃな……お主のその黒革の本は、なんでも飛び出すのう? どうゆう仕組みじゃ? あの槍はなんじゃ? 」
マーリンは興味深々だ。
「絶海槍! ホータン王国建国神話の槍だ。別名を毘沙門天の槍! 俺が集めた宝物を、この黒革の本を通じて取り出している」
「ヒロトが持つ次元収納とよく似ておるの……ふむふむ、本には収納物の明細が記載されておる……」
「そんな品のない物と一緒にするな。我が宝物殿はあくまでも気品に満ち溢れ、何処までも優雅だ! 」
「そうよ! お兄さまの宝物殿は優雅この上ないわ! 」
そう言いながらグラウスの腕にナターシャは抱きつく。迷宮に入ってからずーっとイチャイチャしている。
「お主らを見ていると、腹一杯になりそうじゃ」
マーリンはこの広間の中心に空いた穴を大地精霊の加護を使って塞ぎ始める。地面が少しづつ四方から穴の中心に向かって伸びてゆく。
「……大地精霊魔法、先導陣ですな。その様な短い詠唱で……素晴らしい! 」
ヴァルフは何から何まで感心しっぱなしだった。見たことのない魔力発動、聞いたことのない呪文詠唱、全てが目から鱗だった。
「妾は元々、夢魔と人間のハーフじゃからな……あっちの世界では精霊王などと言われておった。精霊との相性は良いのじゃ」
親父殿は魔導を志した者として、マーリンと通じるところがあるのだとセネカは少し納得した。
【精霊乃王】をお送りしました。
一つ目の拠点を確保しました。
(映画 ナルニア王国物語を観ながら)
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