125 鮮血乃渦 (改訂-5)
【鮮血乃渦】をお送りします。
宜しくお願いします。
アヴァロンの自室の窓から外を眺める。
敵の本拠地の真上だと言うのに、こんなにも静かだ。
覚悟は結局つかなかった……
覚悟をしたと、自分を偽って来た……
その時がくれば……
「……その時には、私は兄に刃を突き立てる事が出来るのか? 」
この一年、同じ事ばかり自問自答している。だが状況はここまで来てしまった……
「……ヒロト……其方なら答えを出せるのでしょうか? 」
エレクトラは迷いを断ち切る為に、自らの長く美しい髪に鋏を入れた。
(愚かな妹だと、笑われますか? 兄上……)
「……お兄ちゃん……お兄ちゃん!! 」
「ユイ? ……どうしたの? 」
「お兄ちゃん……ちゃんと食べないと……動けなくなるよ? 」
テーブルには、ユイが作った朝ご飯が用意されていた。
親父とお袋もいる? いつも仕事で居ないのに……
今日は四人揃っての朝ご飯か……何年ぶりかな?
「ほ〜ら、あーん! 」
ユイがソーセージをホークに突き刺して差し出して来た。
「……いや……流石に子供じゃないんだから〜」
「食べてくれないの? じゃあユイが貰うよ! 」
そう言ってユイはソーセージをチョロチョロと舐め出した……
「な! 気持ちの良い事! じゃなかった、はしたない事!! 駄目だろ! ……駄目だろ……駄目、クレオパトラ陛下みたいな事をするんじゃない……」
何んだか股間が、もぞもぞする……もぞもぞ? ……ヌルヌル………?
何だか、気持ちが……いい……あったかい?
「………?! 」
目が覚めて、布団をめくると、リプリスが俺の○△◇を舐め舐めしていた?!!
「ぅぅううわわわ!! 」
「……そんなに驚く事ないじゃない?! 」
「ななななにを?! 」
「ナニを舐め舐めしてるのよ……気持いい? 」
「だだだから……なんで?? 」
「ハイ・エルフは古来より命を救ってくれた相手には、自らの身体で最上の恩返しをしなければならない敷きたりがある……だから……ね! 」
そういって、服を脱ぎだした。
「嘘つけ!! ストップ!! ストップっだ!! 」
「……なんでよ? 」
「……俺には好きな子がいる。だから……」
「だから??……私的には問題ないから、大丈夫! 大丈夫! 」
「こっちが大丈夫じゃないんだよ! それに相手が駄目だって言ってるのに、恩返しにならないだろ? 」
「……それもそうね……わかったわ。頭硬いのね? 硬くするのは、こっちだけでいいのに……じゃあ、今度にする! 」
そう言って、いそいそと服を着て出て行ってしまった。
そうして二分ほどすると、今度は扉を誰かがノックする。
「……誰? こんな夜更けに? 」
扉を開けるとマーリンが立っていた。
「ひぃいいい!! 」
思わず奇声をあげてしまった! 心臓が早鐘を打つ。
「来てしもうた……よいじゃろ? 」
◆◇◆
朝日が登る。
この時をどれほど待ったことか……
「編成を通達する! 」
ナターシャからパーティーの編成が出された。
【第一部隊】
グラウス・ラア・ボナパルト・ゴドラタン
ナターシャ・リ・ボナパルト・ゴドラタン
アーサー・ペンドラゴン
アンブローズ・マーリン
ヴァルフ
セネカ
円卓乃騎士一二名
【第二部隊】
クレオパトラ七世
バロフ・バルバロッサ
ジャンヌ・ダルク
ビリー・ザ・キッド
安倍晴明
ウィリアム・マーシャル
メイデル・リ・シャーリー
【第三部隊】
エレクトラ・リア・サージェス・アリストラス
リプリス・カン・ドリーアール
ヒロト
源九郎判官義経
沖田総司
宮本武蔵
佐々木小次郎
ジレ・エレノア
【補給部隊、アヴァロン防衛部隊】
カノン・プレイトゥ
ライラ・ミラ・リ・プロム
ルナール・ボルサリーノ
各軍の選抜隊
「第一部隊より順次出立! 十階層ごとに拠点を設置し、補給線を確保する」
「……マーリン! 」
第一部隊に編成されたマーリンをヒロトは呼び止める。でも上手く言葉は出ない……
「……わかっておる。皆まで言うな。拠点で会おう! 」
満面の笑みでマーリンは答えてくれた。
「ヒロト。我らも出立しますよ。これで終わりにしましょう」
エレクトラは悲しみを、出し切った様な顔で話しかける。あまり寝ていないのだろう。
一言一言がとても重かった。
「ええ。出ましょう! 」
少しでも悲しみを減らさなければならない。
ユイの事ももう少しで、救えるかも知れない。
空は暗雲が立ち込め、雨が降りそうだった。
ロード・グランデ大迷宮の入り口を開くと、凄じい血臭が吹き付けてくる。
「……くぅ!! 流石だな! 」
グラウスは思わず笑みをこぼし、最初の一歩を踏み出した。
【鮮血乃渦】をお送りしました。
遂に最初の一歩を踏み出しました。
(映画 酔拳を観ながら)




