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121 反抗作戦、そして友。(改訂-5)

【反抗作戦】をお送りします。

遂に反抗作戦が開始されます。


宜しくお願いします。

 満月が見護る世界……


 人も妖魔も等しく平等な時間……


 巨大な白銀の船体に列をなす……


 作戦始動の時刻まで、あまり時は無い。


 食料やその他の物資を運び入れる列が続く。


 作業には騎士も兵卒も無く、皆が必死に作業をする。



「あとニ刻で搬入作業は完了予定です。各種兵装のチェック作業開始します」

 フェルミナは入念に確認を行う。約一年前からアヴァロンのシステムの動作確認作業の訓練を行って来た。何度も何度も反復してきた作業だ。



「魔導縮退炉及び、反重力推進機正常、バニシングモーター問題有りません」

 魔導と科学が融合した古代の超兵器。それがアヴァロンである。

 グラウス皇帝はヒロトをある場所へ案内した。



「これがこの艦の中枢たる魔導縮退炉だ……わかるか? 」



 縮退炉の中が透明な素材部分から見える。小さな圧縮された光の球が空間に浮かんでいる。



「……惑星一つ分の質量を魔導術式で圧縮して、そこから生み出される膨大なエネルギーをバニシングモーターに伝達する……ですね? 」



「正解だ。やはり其方には知識があるのだな……我らはこのアヴァロンを使う事は出来るが、何故アヴァロンがこの様な兵器運用や空を飛べるのかは理解出来ていない。この艦の八割は我らには不明なのだ」



「私にだってわかりませんよ。そもそも惑星一つ分の質量を圧縮するなんて、言葉では表せても、実際にどうするのかチンプンカンプンです」



「だが其方の知識は有益だ。何かあれば宜しく頼む」

 二人でリクリエーションルームに入って、紅茶を入れた。この世界にはコーヒーという物は無い。



「陛下はやはり現世には戻られないのですか? 」



「ああ。俺には妹がいる。俺は現世に戻れても、妹は行けないからな。だから残る……」

 国の為だとかと言わない皇帝は間違っているのかもしれないが、好感が持てた。



「それに初代ボナパルトが、この世界に召喚される直前、彼はワーテルローで、戦の前だった……あの戦は負けだ。イギリス、オランダ、プロイセンの連合軍が集結する前に、各個撃破すべきだった……だがあの形で始めては、勝ちは無い……その瞬間に戻されたとて、先は無かろう。ならばこの世界の方が良い。クレオパトラ陛下はそうは行くまいが……俺は死がある。記憶の継承はあるが、人格まで同じでは無い。だが千年生きてこられたクレオパトラ陛下は、さぞお辛いであろう……」

 


 意識が永遠に続けば、それは拷問に等しい。終わりが有るから、生を感じられる。


(だが今のグラウス皇帝の話し……召喚者全員に当て嵌まる……皆の事を、知る限り全て伝えるべきだろうか? 九郎の終焉の地を、ジャンヌの事や、新撰組の結末、総司自身の事も……)



「……ヒロト……迷っておるのか? 」



「はい……私は皆よりも未来から来ているので、皆の人生の結末を、ある程度把握しています。それを伝えるべきか……でもそれは歴史を変える事になるかもしれない……」



「ヒロト。その必要は無いと思うぞ。己の未来に疑問を持つ者など、其方の仲間には居ないだろう」



(そうかも知れない……だが俺は彼らに生きて欲しい……」



「話しは変わるが、昨夜お主が見せてくれた戦略モニターに映ったあの物体。あれが災厄の渦の魂を集めるシステムだとして、あんな物は千年前には無かった。いったいあれは何の為の物だ? 」



「以前、クレオパトラ陛下から、災厄の渦は何かを冥府魔導から呼び出す為の儀式だと聞きました。その何かに力を与える為のシステムかもしれません」



「晴明殿が言うには、その儀式に使われた術式に、お主の国の呪術的な要素が入っていると言う事だが? 」



「あれは、古神道から枝分かれした呪法の一種です。四国の一地域や、九州で行われていた呪法です。それに西洋魔術の要素を組み合わせた、かなり特殊な術式です。そうですね……十六世紀か十七世紀頃か……」



「まだまだわからない事だらけだな……」



「陛下、昨日の話しですが……」



「わかっている。今件が終わったら、この船は元の場所へ再度封印する。この力は過ぎた物だ」




◆◇◆



 白亜の宮殿には、その建物に合わせたかの様な白銀の鎧を纏う騎士たちが列をなしている。一人の女性の言葉を静かに待っている。建物の外はひどい吹雪だ。この季節になるとグランパレスより吹きおろす風は、この氷の大地をさらに雪で閉ざす手助けをした。

 一人の若い騎士が美しい女性を、先導しながら祭壇の間に向かう。この女性から漂う殺気によって若い騎士は恐怖した。大勢の騎士団員達の前で、醜態はみせられない。恐怖に耐えながら、無事に祭壇へとお連れした。



「ついに災厄の渦がはじまる。継承権一位の白銀の巫女陣営と、魔神達との戦いじゃ。エレクトラの小娘が災厄の渦を完全に止めたならば、マルドゥクの導きが始まる。心せよ! マルドゥク争奪戦は、紅蓮の巫女である妾が必ず勝つ! 」

 祭壇の前に立つフードローブをまぶかに被った妖艶な女性は、高らかに宣言する。



「さあ、祈ろうではないか! エレクトラの小娘が魔神共を撃ち破るのを! 」

 女性の目には狂気が宿っている。



◆◇◆




 この世界の朝日が登り始める時間は早い。遂にこの時が来た。朝日に照らされたアヴァロンが白銀に輝く。いまのアリストラス世界にとってはオーバーテクノロジーであるこの船を民は複雑な思いで見つめている。それは頼もしさであり、恐れでもある。災厄の渦が終わった後の世界で、アヴァロンの存在は各国の恐怖の対象となるだろう。



「魔導縮退炉圧力上昇……フライホイール正常回転。バニシングモーター始動! 」



「各種兵装オールグリーン、陛下いつでも行けます! 」



「艦長と呼べ!……航空戦艦アヴァロン……発進!! 」

 ナターシャが火器管制システム制御を行う。



 グラウスの号令で、反重力推進が動き出し、アヴァロンが地上から浮かび上がた。

 それと同時に地上遠征軍も全軍動き出す。


 反抗作戦の開始である。




◆◇◆





 ロイドヘブンにある閑静な貴族の住宅地。

 その一画にある、その地域では簡素な邸宅で、スターズは魔導の研究を行っていた。

 外から邸宅を見ると、貴族の家とは言えないほど、こじんまりとしている。だが一歩中に入ると、そこには広大な中庭があり、そして研究所と呼べる建物がある。魔導的に空間を操作しているのだ。

 そのスターズの書斎に一匹の梟が窓から入ってきて、スターズに語りかける。


「久しいな、友よ」



「……まだ私を友と呼ぶ者がいるか……どうしたのだ? ナルザラスよ」

 スターズはノートにペンを走らせて、梟には目を向けない。


「つれない奴め。相変わらずだの。あれの事はもう知っているな? 」



「貴様が発掘したオモチャの事か? 人を運ぶには良いかも知れぬが、奴には通用せぬぞ」

 はやりスターズは興味が無いのかペンを走らせ続ける。



「通用はせぬだろうな。だがその後の戦局には有効な物だ」

 ナルザラスの声のトーンが少し下がる。やはりスターズは魔神の裏に居る者を知っているのか?



「【災厄の渦】の後か……後が有れば良いがな」



「同じ【神巫(カンナギ)】としての職務を全うするだけだな。合間見える刻を楽しみにしているぞ」

 ナルザラスはいつにも無く楽しそうだった。



【反抗作戦】をお送りしました。

人類の存亡をかけた反抗が開始されました。

(映画 トップをねらえを観ながら)



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