120 御前会議再び……そして(改訂-5)
【御前会議再び】をお送りします。
宜しくお願いします!
大阪府 関西国際空港第三ターミナル特別区
大型プライベートジェットの、タラップを音も立てずに降りてくる男は、漆黒の長髪を靡かせて、迎えのリムジンへと乗り込む。中に居たスーツを着た女性が出迎え、男が飲み物にシャンパンを要求したので、何も言わずにグラスへと注ぐ。男は白地に六芒星のマークの入った手袋で、そのグラスを取り、一口やってから口を開いた。
「……土御門一門の朱雀殿とお見受けするが、高弟の貴女が出迎えとは……いやいや、恐縮ですな」
「臭い芝居はよせ。我らの事など眼中にも無いのであろう? 」
「そんな事は御座いません。魔術の世界で土御門の名声は古来より轟いております。我が師もドイツに渡る前は土御門一門に名を連ねておりましたし」
男は左目で目の前の【朱雀】と言われる女性の足元から舐め回す様に見る。右目にはクリスタルを嵌め込んだ眼帯をしている。
「貴様などと関わりたくは無かったが、我が土御門主座様の命だ。【風見鶏】に会って貰うぞ」
「嫌われたものですね……本当に向かう側に有るのですか? 」
「我が主座様のお言葉に間違いなどない。あの方が有ると言えば有るのだ」
「……【奇門遁甲、秘門の章】の奥義書ですか……なぜそんな物が異世界の世界線に? 」
「我ら土御門のご先祖が封印したある者が、異世界に持ち込んだのだ。その奥義書を回収する」
◆◇◆
ヒロトは寝付けなかった。
夜明けまではまだニ刻ぐらいある。
午後からは、御前会議が行われる。
あれから、強襲案は纏まった。
まさにこれからが、本番だ。
「良くこの三日間議論を尽くしてくれた。あらためて礼を言おう! 」
ゴドラタン帝国グラウス皇帝が皆を労う。
航空戦艦アヴァロンでの強襲攻略作戦の内容が決定した。
主攻と助攻を交互に入れ替える侵攻案を採用し、その軍編成、陣容、更にロード・グランデ大迷宮攻略部隊の編成まで決定した。
【航空戦艦アヴァロンの兵力】
第一遊撃連隊(総司隊)より選抜された五十名
第二遊撃連隊(ビリー隊)より選抜された五十名
特別遊撃連隊(九郎隊)より選抜された五十名
ドワーフ隊より選抜された十名
エルフ隊より選抜された十名
聖堂騎士団(エレクトラ近衛隊)より選抜された二十名
征夷大将軍近衛騎士団より選抜された三十名
ゴドラタン白銀騎士団より選抜された二十名
ゴドラタン帝国ナイトオブラウンズより三名
【航空戦艦アヴァロン】
《正式名称》
古代アリストラス超帝国の第六世代恒星間超弩級戦闘艦アヴァロン。
《全長》
三百六十メルデ
《動力》
主機: 魔導縮退炉 一機
補機: 魔導対消滅炉 ニ機
《攻撃兵装》
五百mm魔導収束熱線連装砲 ニ門
三百五十mm魔導拡散熱線砲 一門
百二十mmホーミング・レーザー砲 三十門
重力子爆雷発射管 四門
前面部ビーム収束スピア
《防御兵装》
全方位魔導拡散バリア
全方位超電磁バリア
前面部ビームバリア
【地上遠征部隊】
第一機甲師団(総司隊、ビリー隊)
第二機甲師団(九郎隊、黒豹騎士団)
第三機甲師団(赤鷹騎士団、ゴドラタン帝国軍)
第四機甲師団(ライアット公国軍、トーウル王国軍)
第五機甲師団(パルミナ連合王国軍)
第六機甲師団(ドワーフ隊、エルフ隊)
合計十万名
「アヴァロンと地上部隊が、交互に主攻と助攻を入れ替えながら、ロード・グランデに進行する。その後で、後詰の部隊を更に増派させる」
最大動員数が六十万を超える史上最大規模の軍勢になる。
グラウスに代わってヒロトが話し始める。
「アヴァロンにて先行し、敵地上部隊への爆雷攻撃をしつつ、ロード・グランデ大迷宮の魔導結界を破壊し、アヴァロンを拠点基地として、突入部隊を送り込みます。その間、我らの地上部隊が敵残敵を掃討しつつ、ロード・グランデを目指す」
「そして、ロード・グランデ大迷宮への突入部隊第一陣はここに纏めてある」
グラウスは編成表を各自に渡していく。
グラウス・ラア・ボナパルト・ゴドラタン
ナターシャ・リ・ボナパルト・ゴドラタン
クレオパトラ7世
エレクトラ・リア・サージェス・アリストラス
ライラ・ミラ・リ・プロム
バロフ・バルバロッサ(ドワーフ戦士長)
リプリス・カン・ドリーアール(ハイ・エルフ戦士長)
ヒロト
沖田総司
ジャンヌ・ダルク
ビリー・ザ・キッド
アンブローズ・マーリン
宮本武蔵
源九郎判官義経
ウィリアム・マーシャル
安倍晴明
ジレ・エレノア
ルナール・ボルサリーノ
メイデル・リ・シャーリー
カノン・プレイトゥ(補給部隊長)
そして、各隊からの選抜員。
「この、第一陣で、災厄の渦を止める先駆けとなる。その後、地上遠征軍より第二陣、第三陣を選抜! 明朝○五○○をもって全軍にて反抗作戦を開始する。何としてもこれで終わらせるぞ!! 」
グラウス皇帝の号令で、会議は幕を閉じた。
◆◇◆
ブラーム山脈を越え、キャンプをはった黒騎士一向は、山の尾根から見えるロード・グランデ大迷宮の異様な雰囲気を感じていた。
「……あれは何だ?? 」
ロード・グランデ大迷宮の入り口を囲う様に、巨大な黒鉄の塔が三本そびえていた。そこから上空五百メルデに、黒鉄の完全な球体が浮かんでいる。直径は二百メルデはありそうだ。
「……千年前には、あの様な物は無かった……あんな巨大な魔力を帯びた人工物……」
「主君……あれはロード・グランデの防衛機能ではないでしょうか? 」
ヴァルフが魔導的なスキャンを行うが、はっきりとは見えない。かなりの魔力量だ。
「生きとし生けるものの神霊力を、魂を吸い込んで魔力にかえている……なんと恐ろしい……」
黒騎士の言葉は、確信を突いていた。
「本来、世界樹に帰り、生まれ変わる筈の魂が、あの球体に吸い込まれ、そこからあの塔を通ってロード・グランデ大迷宮へと魔力を送り込んでいる……あれを何とか破壊しなければならんな」
明日にはロード・グランデに到着する。
【御前会議再び】をお送りしました。
遂に反抗作戦が開始されます。
(映画 宇宙戦艦ヤマト2199追憶の航海を観ながら)
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