111 異変大地、九郎の予感。そして羽田空港。(改訂-5)
【異変大地】をお送りします。
宜しくお願いします!
ロード・グランデ五十二階層……
頭が痛い……
間隔が短くなっている……
早く黒騎士と合流しなければ……
頭が重い……瞼も重い……
…………
……
ヒロトは深い眠りから覚醒した。最近はロード・グランデ大迷宮の夢をよくみる。これは正夢なのか? 今は確認のしようがない。
「やっと起きたのじゃな! 皆が待っておるぞ! 」
重い瞼をゆっくり開けると目の前にマーリンの顔があった。
「うぅぁぁあ!! 」
思わずヒロトは叫んでしまった。
「失敬だな! 驚くほど嫌ならいい事してやんないぞ! 」
マーリンは右手でヒロトの股間を握りながら、口づけをした。マーリンは既に身支度が終わっている。昨日、地下空洞から地上に戻ったのが夜半過ぎで、食事も取らずに、疲れで寝てしまった。ヒロトも急いで身支度を整えてる。エクスフィーレが気を使って、起こさないでいてくれた。ヒロトとマーリンだけ遅い朝食だった。
「うわ〜! 朝から豪勢だね」
ヒロトは心底そう思った。並の歓待ぶりでは無い。エルフは動物を食さないから、野菜や穀物が殆どだが、ヒロト達の為に、穀物を肉に見立てた特別な料理まで出してくれていた。スープがとても身体に染み渡る。
「ヒロト。次の料理は特別に我が妹が作った一品だ」
ふと顔を上げると、そこには美しい少女が立っていた。人間ならば十八かそこらだろう……髪は白銀に光輝き、瞳は右と左の色が違うヘテクロミアだ。
ヒロトは彼女を見てポーッとしてしまった。マーリンにつねられて我に帰る。
「そ、そその節は、ありがとう……」
女の子はヒロトに何故か礼を言う。
「? ……」
「…….ヒロト……わからないかえ? 」
マーリンが悪戯っぽく笑う。
女の子は前髪を上に上げて見せた。
よくよく見ると、何処かで会った様な、無い様な……ひょっとして……!
「リプリス? 」
てっきり男の子だとばかり思っていた。確かに誰も男だとは言っていない……
「我が妹を救ってくれて有難う。この子は昔から跳ねっ返りで、男の格好をして……今回の事で少しは大人しくなるかもしれない……ヒロト殿、数々の無礼をお許し下さい」
「なんとも思ってませんから、頭を上げて下さい! 」
ハイ・エルフは派兵を決めてくれた。これで考え得る最大の戦力が整った。本国からの補充も含めた新たな編成も進んでいる。なんとか反抗作戦までに間に合いそうだ。
◆◇◆
ヴァイアの街とカルーナの街の中間地点から四十五デルの辺りを、九郎とウィリアムは疾走していた。九郎の特別遊撃連隊は、自由裁量を認められた軍の為、独自の行動をとっていた。そもそも九郎は他人の指示で動く様な人間ではない。唯我独尊を絵に描いたような人間だ。生まれ持った帝王の資質。それが現世では災いしたのだが……帝王は二人はいらない……
「なんか……おかしいな……」
九郎が速度を落として、独り言をいい始めた。そう言う時は、考えを纏めようとしている為だ。この時はウィリアムも話しかけない。
「敵の総数からすれば、もっと頻繁に攻撃があってもいい筈……なのにそれが少ない……集結したま動かないのは奇妙だ……奇天烈だ……」
ウィリアムは、お前の方が奇天烈だと思ったが、言葉を飲み込んだ。
「……やはり、何かやってやがるな……」
そう考えて、九郎は敵の戦線の端にある強い赤点を目指して走った。赤点が強い場所を幾つか確認したいと思ったからだ。そこに何かあるのか? 無いのか?
とりあえず、今日はここで野営する事になった。明日の昼にはその地点に到達するだろう。
「ジレ! 腹へった! 」
◆◇◆
十五日後に控えた反抗作戦に向けて、ゴドラタン帝国と、トーウル王国から、各二千騎づつの兵が到着した。あくまでも五カ国が強調しての反抗作戦だと言う政治的配慮だ。ヒロトが戻るまではカルミナとシリウスが中心となって各軍との調整を行なっていた。それで二人が感じた事は、ヒロトの殺人的な仕事量だった。よく一人でこなしていたと思う。
「九郎殿からの報告では、やはり何か敵の戦線に、隠れた動きがある様だ」
九郎からの報告をシリウスが目を通して、カルミナに渡した。カルミナも一通り目を通す。確かにこの五日間ほどは散発的な攻撃しか無く、敵にやる気が感じられない。
「武蔵殿は、表面上は敵に動きがないが、空気には以前よりも強い殺気がこもっていると……」
同じ様にビリーもその空気を感じていた。メイデルには今ひとつピンっと来ないが、時折、ビリーが怖い目でグランパスの方を見ている。だが言葉では言い表せない様だ。
「……なんだかな〜知らない間に、騎兵隊に囲まれたみたいな感覚だなや〜」
ビリーは天を仰いだ。
◆◇◆
東京 羽田空港スペースプレーン・ターミナル
アメリカのロサンゼルスから、ここ東京の羽田までを約ニ時間で結ぶスペースプレーン。一旦成層圏まで打ち上がり、そこから地上へ向けて降りて行く軌道をとるスペースプレーンが導入されて八年が経過した。今朝到着したスペースプレーンはアメリカ合衆国空軍の管轄にある特別機だった。そのプラットフォームから手錠に繋がれた女が降り立つ。その後にも二人の男が続き、辺りを警戒しながら鋭い視線を投げかける。ダークスーツを着た男達が、その三人を取り囲む様に歩く。
「あまり周りに視線を飛ばすな。もっと速く、真っ直ぐ歩け」
ダークスーツの男に手錠をかけられた三人が後から急かされる。
「いててぇ、いてーな! 俺の腕はそっちには曲がらないんだよ」
手錠の男の一人が悪態をつく。
「だまれ、さっさと行け」
急かされた三人は出迎えの護送車両に入れられ、さらに移動される。護送車両の中には一人の黒人男性がいた。
「よく来たな。【風見鶏】がお待ちかねだ」
黒人の男は三人の手錠を外し、握手を求める。
「けぇ! こんなとこに居たのか……アンゴラの魔人と言われたお前が、今じゃ【風見鶏】の犬か? 」
手錠を外した手首をさすりながら、ミカエラ・レッドフィールドは、今日最大の溜息をついた。
【異変大地】をお送りしました。
何やら敵の動向がおかしい様です。
(映画 風の谷のナウシカを観ながら)




