110 焔乃魔鳥 (改訂-5)
【焔乃魔鳥】をお送りします。
宜しくお願いします!
帰らずの森の中心地には、
そこから地下空洞へ降りる道がある。
だがその道は千年使用されておらず、エルフでも使用した者はごく限られていた。巨大な樫の木の扉をゆっくりと押し開ける。地下空洞に向かうのは、ヒロト、マーリン、エクスフィーレと、ハイ・エルフの戦士四名の計七名だ。
松明を持ったハイ・エルフの戦士が先行する。
「……空気がザワついておるな……」
マーリンがヒロトにしがみつく。非常に歩き難い。本当に火炎魔神を撃退した魔導士だろうか? と考えてしまう。
「……歩き難いよ、マーリン……」
「妾は大丈夫じゃぞ」
「……俺が躓いたら、二人で転落するぞ」
「……ヒロトなら大丈夫じゃ」
かなり歩いたが、まだ階段は下っている。松明と、魔法の灯りを併用しながら前に進む。流石に神聖な森の真下だけあってモンスターの類いはいないが、少し雰囲気が変わる。
「闇の精霊、土の精霊……火の精霊……近いぞ! 」
ここは古代の坑道の様だ、だんだん火の匂いがする。ハイ・エルフの戦士が、皆に待つ様に手で合図する。坑道の突き当たりは開けた空間だった。その下に巨大な炎が見える。ゆっくりだが、確実に上へ上へ向かって来ている。地上から約三百メルデほどか……
「奴だ……炎が更に暗くなっている」
「俺が魔法でやる。皆は援護を! 」
ヒロトはそう言うが、戦士の一人が噛み付く。
「人間如きがでしゃばるな! 我らだけでもやれる! 」
ヒロトやマーリンを拘束したリプリスと言う男だ。
「リプリス! 闇に落ちた火炎魔神を屠るには、彼ら召喚者の強力な魔法攻撃が必要だ! あの化け物はアリストラス超帝国が遺伝子操作を繰り返し作り出された古代のミュータントだ。我らだけの精霊魔法では奴の魂には届かん! 」
エクスフィーレが嗜める。リプリスはそっぽを向き、他の戦士達と先に降りて行った。実に可愛げがない。
「……済まない。前回の災厄の渦で両親を亡くしている」
ハイ・エルフは普通のエルフより更に寿命が長い。この族長はもう四千年を生きているという。
「いや、気にしていない。それよりもやるぞ! 」
ヒロトは魔剣サザンクロスを抜き、詠唱に入る。
「妾が援護する。エクスフィーレ殿は戦士達の回復を! 」
マーリンがヒロトと並んで、戦士達に氷結障壁、火炎耐性、闇耐性の呪文を重ねがけして行く。
「……北方の悪魔王、南方の悪魔王、西方の悪魔王、東方の悪魔王、四方を支配する王よ、ヨミの穢れを支配する王よ、アバドンの黒き闇より穢れの軍団を誘え! 我に従え! 」
ヒロトの腕に古代呪文が点滅を繰り返しながら、浮かび上がり、周りの空間が歪む。
「暗黒穢餓鬼空間 !!!! 」
闇の火炎魔神の足元の空間に真っ黒な底無しの空間が現れた! 魔神が落ちるのを必死で耐えるが、その穴から無数の人面蛇が現れ、魔神を穴に引き摺り込もうとする!
「奴に攻撃を叩き込め!! 」
エクスフィーレや戦士達が、矢に光の精霊の加護を付与し、魔神の頭に目掛けて放つ。マーリンも氷結攻撃魔法の詠唱を放つ。その瞬間、魔神が壁にかけた手を滑らせ、穴に引きずり込まれた!
「やったか?! 」
真っ黒な穴に落ちる魔神の姿が、一気に輝きを増した!
その身体が大きく膨れ上がり、形状を変える。
「何だ?! 」
穴から魔神がその姿を変えて、飛び出そうとしている。巨大な鳥の様だ! 羽を広げた魔神が飛び立とうとしていた。
「闇のフェニックス!! 」
マーリンが悲鳴に近い声を上げる!
「ちぃ!! アルテミス、照準! 」
ヒロトが叫ぶと、遥か衛星軌道で戦闘衛星アルテミスの光学カメラがズームモードになり、衛星の下部に、電磁パルスの放射が始まる。
「貫け!!! 」
次の瞬間、アルテミスから地上に向けて、閃光が照射された! 数コンマ後に、魔神の頭上から光の帯が降り注ぐ。
そして、魔神が魔力のこもった十数万度のレーザーを浴びせられる! 如何に火炎魔神といえど、魔力の籠った十数万度の超高熱レーザーの一撃を喰らったことなどなかった。
「グゥーググガガァガァァァアア!! 」
周囲に衝撃波が伝わった! 皆が必死に耐える。
レーザーが集約され、魔神を貫く! 真っ逆さまに魔神が落ちて行くが、その煽りでリプリスが、足を滑らせて穴に落ちた!
「キャァァァアアアアアアア!!! 」
「空間跳躍 !! 」
ヒロトは空間に魔法の足場を作って、その足場を飛びうつりながら、何とかリプリスをキャッチした。
「大丈夫か?! 」
リプリスは声をかけるヒロトに顔をふして、しがみつく。流石にハイ・エルフだけあって、きしゃな身体だと思った。
魔神は漆黒の奈落へと落ちて行った……魔剣サザンクロスが放っていた輝きが鈍い色に変わってゆく。
【焔乃魔鳥】をお送りしました。
災厄の渦の影響は世界に広がっています。
(映画 ロードオブザリングを観ながら)
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