106 ヒロトの受難 (改訂-5)
【ヒロトの受難 壱】をお送りします。
宜しくお願いします。
蘆屋道満は、
亜空間に閉じ込められ、
その現世の魂魄は消滅した。
出口の無い、異界を永遠に彷徨う事になる……
「ビリーさん、ビリーさん、さっきの攻撃はなんです? 」
晴明は何事も無かったかの様にいつもの晴明だった。
「ああ、ヒロトが新しく作らせた武器だなや〜」
「対物ライフルって言うんだ。射程距離は二千メルデ、実際にはそれ以上の射程があるな。正式名称は、バレットM八十二対物ライフルだ」
バレットM八十二対物ライフル。アメリカ軍が正式採用した対物ライフル。ブローニングM2重機関銃と同じ12.2×99mm NATO弾を使用出来る互換性のあるライフル。焼夷弾、徹甲弾、炸裂弾とバリエーションも豊富。湾岸戦争で使用された。
「ビリー専用に銃身をオリハルコンで加工し、強化と軽量化を実現したアンチ・マテリアル・ライフルの傑作だよ! 」
ヒロトのマニアックな説明は、晴明にはチンプンカンプンだった。
「……まあ、それだけ凄い武器ってことですね! 」
「俺専用って言った?! 貰っていいんだか? 」
「ああ、ビリーんだよ。」
「おおお!! マジか! 凄げ〜だなや! 」
ビリーは高価なオモチャを手にしたみたいに、はしゃぎまわった。
「……そろそろ、敵の軍勢が来るな」
ヒロトは地平線の先にあるグランパレスを見つめながら、その先に広がる殺気の渦を感じていた。
◆◇◆
地帯戦略に移行して、十日がたった。
トーウル王国軍は、ブラーム山脈の麓に布陣し、そこからヴァイアの街までを繋ぐ線を絶対防衛線とした。五カ国連合の約定にそった動きをはじめる。ゴドラタン帝国軍もカルーナからヴァイアの街を結ぶ線に絶対防衛線を構築した。第二次世界大戦時のヨーロッパ。ナチスドイツ軍とロシアが睨み合う東部戦線を再現した様な塹壕を構築している。
アリストラス軍の銃士隊は更に規模を拡大し、いまや最大戦力になっていた。ビリーは最後まで抵抗したが、結局は将軍職を拝命する事になった。アリストラス軍史上、もっとも将軍の肩書が似合わない男として歴史書に名を刻む事となる。
敵第四波の戦力は半数まで減り、攻撃も散発的になっている。だが、グランパレスでは第五波の軍勢が集結を始めたとの情報がマーリンの使い魔からもたらされた。
「攻撃が単調になり過ぎている……何か仕掛けてくるかもしれない……」
ヒロトは戦略モニターを確認しながらも、各軍から上がって来る報告に目を通していた。最近の敵の動きに違和感がある様だ。
「神経が過敏になり過ぎではないかえダーリン! 」
マーリンは骨つき豚肉にかぶりつきながら、左手の人差し指で、ヒロトの背中をツゥーっとなぞったりする。
「そうそう! ヒロトは馬鹿正直なくせに、変な所は裏を読み過ぎたりと大変よね〜」
ジャンヌは巨大な鳥もも肉にかぶりつく。食べるときこそ最大の幸せと言い切る。
「カノンの影からの報告が段々減ってしまっている……敵に始末されているのか?……」
周りの雑音に耐えながらも、ヒロトは考えに沈み込んでいる。
「だけど、ビリーの将軍拝命式は傑作だったな! あの場面でズッコケるとはな!! 」
ウィリアムは、焼き飯をガッガッと掻き込みながら話す。
「確かに! 傑作でしたよね〜! 」
晴明が饂飩をすすりながら、相槌をうつ。
「お前にだけは、言われたくない!! 」
ビリーは、テーブルに足を乗せて、晴明に噛み付く!
「……黒豹騎士団と連動して……って、お前ら!! どっか他でやれよ!!! なんで此処で飯食ってんだ!! 」
ヒロトがブチギレて、軍略杖を掘り投げた!
「まあ〜まて! もぐもぐ……直にミックス焼そばが……来る! 」
九郎は目の前の豚の丸焼きに取り掛かった! (食うのかしゃべるのかどっちかにしろ! )
「ヒロトはもう少しマーリンと時間を作った方が良いのではないか? 」
先日、武蔵が幕舎を覗いたら、マーリンが柱にクレオパトラの似顔絵を貼りつけて、顔に釘を刺そうとしていた……
「そんな事言うあんたは、ライラのケツでも触ってあげてんのかえ? 」
マーリンは焼き鳥の串を両手に持ち、次々と、口に放り込む。
「ばばば馬鹿者! そんな事せんわ! 」
相変わらず、武蔵は顔がすぐに真っ赤になる。なかなか免疫がつかない。
「そんな事をしたら、カルミナのおっさんに、直ぐ結婚しろ! とかって言われるな! はははは!! 」
ウィリアムが茶化す。
「飲み屋の女子にうつつを抜かすお主には、やはり負ける気がせんな! 」
「なんだと〜! やるのか?!! 」
「俺の台詞だ!! 」
ウィリアムと武蔵がガッツリと取っ組み合った!
「貴様ら!! いい加減にしろ!! 頼むから……」
誰もヒロトの言う事など聞いてくれない。
【ヒロトの受難】をお送りしました。
ヒロト君……ついて無いみたいです。
(映画 うる星やつら ビューティフルドリーマーを観ながら)
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