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104 兄妹讃歌…….そして、(改訂-5)

【兄妹讃歌】をお送りします。


 宜しくお願いします。

 夜の帳が下りる。


 久しぶりに静かな夜をヒロトは迎えた。


 早々に自室に失礼して、鍵をかけて、


 ソファーに座り、思考の海に浸かる。


(……これで、ロード・グランデまでの急襲作戦の目処は立つ……人員を選定し、同時に陽動作戦の立案も必要だ……)



 ヒロトの考えは、各軍の全面攻勢を陽動とし、発掘戦艦にて敵本拠地を急襲、今度はその急襲を陽動とし、各軍で一気にロード・グランデまで戦線を押し返すつもりだ。助行と主行を交互に入れ替えて進む。



(そして、ロード・グランデ大迷宮の入り口に拠点を作り、兵站を確保すれば、最下層まで行けるだろう。問題は魔神が如何程のものかだな……)

 千年前の災厄の渦、その体験者である十剣神のクレオパトラ、そしてナポレオン・ボナパルトの記憶を継承するグラウス皇帝の話しでは、何とか今の戦力であれば対応は可能だと結論付けた。



(あと気になる事は、ボナパルト家に伝わる予言の書……この予言には俺の事は記されていないと言う……そもそも予言の書という物が残された経緯はなんなのか? )



「……まだわからない事が多々あるな…」



「何がわからんのじゃ? 」

 クレオパトラに、いきなり後から肩を抱きしめられた!



「!??? へへ陛下?! どうやって?! 」



「扉の鍵など、妾の前では何の意味もないのじゃ……そんな事はどうでも良いぞ……妾を慰めておくれ」

 どうでも良く無いが、いきなり着ているドレスが下にストーンっと落ちて、生まれたままの姿になった。その妖艶な肢体はまさに天上のものかと思える。その豊満な胸をヒロト肩に押しつけて、耳を後から甘噛みする。



「もももも申し訳ありませんんんん!! ご勘弁をを!◇△○◇◆ !! 」

 ヒロトは飛び上がり、叫びながら部屋の壁際にまで走り寄って土下座して謝った。最後は何を言っているのか判別不能だった。



「ははっはははは!!  そこまではっきり拒絶されると清々しいの〜。 マーリンかえ? 」



「はい……」



「本人の意思に関係なく、召喚者はいずれは元の世界に戻る。離れ離れに必ずなる。それをわかっていてかえ? 」



「はい! 」



「ならば、妾も潔く引こう。 だが妾も恥をかいたままでは許せんぞ」

 クレオパトラは悪戯っ子ぽく笑う。



「もし災厄の渦を今回も完全に止める事が出来ずに、其方と妾がこの世界に残る事になったら、妾と共に歩んでくれるかえ? 」

 クレオパトラの瞳の奥は真剣な眼差しであった。

 



◆◇◆




 ブラーム山脈を越えて進むルート。

 以前、御前会議でヒロトがロード・グランデまでの道筋の一つとして、指し示したルートを進む一行がある。雪深く、標高も高いため空気が薄く、気温もかなり低い。パーティもかなりの疲労が蓄積しているだろう。



「主人、あの中腹でキャンプを行いましょう」



 ヴァフルは黒騎士にそう伝えて、皆にも伝達する。この山脈はワイバーンの巣があり、吹雪の間は出て来ないので、キャンプをはって体力回復に専念する。



「腹へった〜」



 セネカの腹が鳴る……

 ワイバーンの襲撃に対応しながら進む為、食事の時間はまちまちだった。今日はまだ食事をしていない。



「ここで、朝までやり過ごす。魔法結界をはるぞ! 」



 鎧の呪いが、奈落の玄室で入手した剣の聖なる力によって中和されて行く。大分本来の力が戻って来た。聖剣と引き離されてより千年、この日を待ち望んでいた。

 この分なら、この漆黒の鎧を外す事が出来る日も近い……

 いまは呪いの影響で、鎧を外しても、翌日には鎧を付け直す衝動に突き動かされる。だがこの剣のおかげで、その衝動か抑えられる様になって来た。



「千年ぶりにこの世界に現れたこの愛刀のお陰だ」



「ロード・グランデに着く頃には鎧を外せるだろう。これで私にかけられた災厄の渦の呪いを断ち切れる、そして其方達の呪いも…… よく今までついて来てくれた……特にヴァフル、セネカ、我らに付き合わせて済まなかった」

 ロード・グランデ大迷宮には、真に黒騎士を主人と仰ぐ十二人と、ヴァルフ親子、そして佐々木小次郎が同伴している。



「おやめ下さい。我ら親子は好きでついて来ているのです。何も主人が負い目を感じる事などありません。我ら親子は、主人との出会いが無ければ、とうに死んでおりました」



「そう言って貰えると、すこし軽くなる」



「あとはご主人が、現世へと戻られるお手伝いを、最後までさせた頂きます」

 ヴァフルとセネカの瞳には決意の色が浮かんでいる。もう後には引かないだろう。



「お主は、本当に良かったのか? 」

黒騎士は、そばで佇む小次郎に話しかける。



「拙者は、宮本武蔵に会えればそれで良い。お主らの目的地に奴も来るのであろう? 」



「ああ。必ず来る」



「ならば良し」




◆◇◆




 満点の夜空をエレクトラは幕舎の天窓から眺めていた。


 こんなに静かな夜は久しぶりだ。


 「兄様……兄様は何をお考えなのでしょう?……もう、あの頃に戻る事は出来ないのですか?……」

 幼い頃、兄上は母上と出奔された。当時、王弟ドライアードとの確執によって命を狙われた為に、ゴドラタン帝国の駐在武官だったアルバイン伯爵の手引きによって国外に脱出し、ゴドラタン帝国に身を寄せ、お兄様は帝国魔導学園に席を置かれたと聞いた。母上が命を落とされ、事態が収束して戻られた兄上は人が変わられていた。魔導にのめり込み、平気で禁術の探求にも手を出した。あの優しかった兄上が……



「なにか方法は無いのでしょうか? 私に出来る事は、兄様を殺す以外に無いのでしょうか? 」


 

 静寂が訪れると、エレクトラはどうしても悲しみに襲われた。この静寂がどうしても好きになれなかった。




◆◇◆



 アメリカ合衆国 ケネディ宇宙センター

 重犯罪者特別監獄



 あぁ……もう殺したく無い……


 神の名において、あとどれくらい殺す?


 幾ら殺せば終わるのか?


 女は手足を拘束されてから五日が経った。身体を触ってきた新入りの男の股間のアレを捩じ切ってやっただけなのに……私に触れていいのは、神に祝福された者だけだ。

 拘束されながらCIAの男が言っていた、異世界に飛ばされると言う話しを考えていた。余りにも荒唐無稽だと思う……だが、政府が動いているなら本当なのだろう。それに、向こうから戻れたら、また弟に逢えると言われた。戻れたらだが……

 最後に戦闘を行ったのは、ガテマラの新興宗教団体の戦闘部隊とだ。その戦闘部隊員には宗教団体に妻子供がいた。だから寂しく無い様に皆んな送ってやったのだ。それの何がいけない? みな神のもとに行けるのだから幸せなのだ。


「……あと二ヶ月か……日本の東京……ファイヤーグランドラインに市ヶ谷のマスターシステムからアクセス……」

 女はCIAの男から告げられた言葉を反復する。



「……【風見鶏】か……お前は神に祝福されているのか? 」

 独房の小窓から星空を眺めていると、なぜか涙が出てきた。もう久しく泣く事など無かったのに……








【兄妹讃歌】をお送りしました。

エレクトラの悲しみが伝わってきます。

(映画 ヒートを見ながら)



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