98 御前会議と風見鶏の計画 (改訂-5)
【御前会議】をお送りします。
宜しくお願いします!
この奈落の、最深部には、
古来より希望が有ると言う。
パンドラの匣から最後に飛び出した希望と言う名の人間の贖罪。
クラナ鉱山の地下二十階層には、アリストラス超帝国時代から存在する奈落の玄室と言う場所がある。その場所に1000年前の災厄の渦で、魔神を滅ぼした剣の一振りが安置されている。異界からもたらされた神剣。
凄じい轟音をたてながら、サンドサーペントが倒れ込んだ。セネカの戦斧の斬撃で、首を斬り落とされ、絶命した。
「たしか、もうそろそろだ。この奥が玄室の中心の筈」
黒騎士は古い記憶を頼りに進む。
更に下へ降る階段があり、それを降りきると、広い空間にでた。
そこは地下二十階層であるにも拘らず、外界の様に明るい光に満ちていた。
部屋の中心に突き刺さる大剣の聖なる力の成せる技か。
「あった! 我が愛刀よ!! 」
黒騎士は、軽々とその剣を抜き取って、天に翳す!
だがその身を包む鎧の呪いによって、剣本来の力を全て引き出す事は出来ない。
「だが、この剣があれば、この鎧の呪いを解く為の道が開ける」
黒騎士は思いの外、興奮していた。
◆◇◆
地平を埋め尽くす妖魔の軍団が、視界に入ってくる。敵の第四波だ。妖魔、魔獣に加えて何か別の存在も感知されていた。
ヒロトは戦略、戦術モニターを幕舎の全員に見やすい様に、空間の表示を調整しながら、話しを進める。
「第四波は、今までで一番厳しい戦いになる事が、予想されます。まず妖魔、魔獣に加えて新たな個体も多数確認されています。回を重ねる毎に、敵の個体戦力は上がっている」
いまの時点で、敵の総数は十六万を超えている。そこで改めて連合軍側の戦力の洗い出しを行う。
【アリストラス皇國軍】
第一遊撃連隊(総司隊)-----------------一万二千名
第二遊撃連隊(ビリー隊)---------------一万名
特別遊撃連隊(九郎隊)-----------------五千名
黒豹騎士団(ライラ隊)-----------------九千名
青龍騎士団(シリウス隊)---------------一万名
赤鷹騎士団(カルミナ隊)---------------一万二千名
聖堂騎士団(エレクトラ近衛隊)---------五千名
合計 六万三千名
【ライアット公国軍】
第一騎士団-------------------一万名
第二騎士団-------------------八千名
第一装甲騎士団---------------六千名
第二装甲騎士団---------------六千名
合計 三万名
【パルミナ連合幕府軍】
第一機甲旅団-----------------二万五千名
第三機甲旅団-----------------二万五千名
征夷大将軍近衛騎士団---------三千名
合計 五万三千名
総合計 十四万六千名
「数量は本国からの補充で、なんとか頭数は揃えたが、戦力ダウンは致し方無い。問題はゴドラタン帝国軍五万が抜けた分、防衛戦が狭くなってしまう事だ」
ライアット公国全権大使を兼ねるブロス将軍は、軍略杖で防衛の脆弱性を指摘する。
「ゴドラタン皇帝は、第二都市カルーナを囲む様に、第一軍と第二軍、合わせて十万近い軍を地帯戦略陣地を構築しながら、展開させています。これはある意味で、我々の東北地域を補完するようにも考えられます」
ヒロトはモニター越しにゴドラタン皇帝の思考をトレースしている。
「奴が、我々の動きを補完していると言うのか? 」
「カルーナ周辺のゴドラタンの動きは、我々にある程度連動させています。ゴドラタン皇帝としても人間界が蹂躙される様な事は避けたいのでしょう? そもそも最初から自由裁量で、此方の動きには連動させると言っていましたしね。皇帝としては嘘は言っていない。九郎がカルーナに介入したお陰で、カルーナには手出しを控えていますがね」
「食えん奴だ! 信用出来るのか? 」
これはカルミナだ。
「こと戦争に関して言えば、信用出来ると思います。それも踏まえて皇帝と談判しに行きますよ」
今回の状況は会津征伐から始まる関ヶ原の合戦に酷似している。災厄の渦勢力が徳川勢、各国連合軍が石田勢だ。そしてゴドラタン帝国軍が、この関ヶ原の第三勢力とも呼べる九州の黒田官兵衛の勢力だ。上杉に連動して同時に行動を起こした石田三成の西軍が、関ヶ原で徳川の東軍と対峙する事を読み、すぐさま行動に移る。黒田官兵衛は徳川を援護すると言う名目で、九州鹿児島の島津攻略を目指す。黒田官兵衛の思惑は九州の敵味方全てを傘下に収め、九州統一時点で、関ヶ原の合戦が膠着しているなら、さらに中国の毛利、小早川、岡山の宇喜多の残存勢力を吸収し、疲弊した石田勢、徳川勢を一気に撃破する絵図を描いていた。
だが予想に反して関ヶ原の合戦はたったの半日で決着がついた為に、九州統一時点でその管理を徳川に明け渡す。皮肉にも息子の黒田長政の調略で、西軍の小早川勢二万が裏切った為に、官兵衛の一ヶ月は膠着するとの読みが外れてしまったのだ。
合戦後の恩賞で、家康は長政の右手を両手で固く握り、お褒めの言葉を頂いたと長政が父の官兵衛に報告すると、官兵衛は、激怒しこう言った。
「その時、お前の左手は何故、家康を刺さなかったのだ? 」
黒田官兵衛と言えば、羽柴秀吉(のちの豊臣秀吉)の軍師として、中国大返しを事前に用意(明智光秀が主君の織田信長を裏切ると考え)していた事が有名だ。その秀吉とは朝鮮出兵に反対した為に仲違いする事となる。秀吉が死ぬ間際に側近に話した事があった、
「儂が死んだら、誰が天下を取る? 」
秀吉がそう問うと、皆は徳川家康や、前田利家の名前をだすが、秀吉本人は、一言こう答えた。
「……黒田官兵衛」
黒田官兵衛もナポレオンも無駄な事はしない。その時その時の最善を選ぶ超合理主義の塊である。
「彼奴の会合は打診した。まだ返答はないが、数日中には連絡があろう」
クレオパトラ七世は、優雅にワイングラスを傾けながら、ヒロトに語りかける。ヒロトを見る瞳が妙に艶かしい。
「うぉほん! 本題に入ります」
ヒロトはクレオパトラと眼を合わせないようにして、モニターに軍略杖で刺し示して行く。
「敵本拠地、ロード•グランデ大迷宮までのルートは、この西側のブラーム山脈を越えるルートで行きます」
「無茶だ! あそこは敵ワイバーンの巣があるぞ! 」
「だが、グランパレスを通過するよりは、消耗が少ない。晴明の隠形術で気配を消して進む。その間、軍はグランパレスまで戦線を押し戻して、陽動を行う」
だがヒロトは、もう一つの可能性も考えていた。
◆◇◆
東京都 霞ヶ関某所
「さあ、あと三ヶ月ほどで始まるよ。約束の刻って奴さ! 」
いままで謎のハッカーとして君臨していた【風見鶏】は異世界転移されるその刻には、流石に姿を現すと思われていたが、最後の最後まで表さないつもりの様だ。モニターの中では、相変わらずデフォルメされた鶏がバタバタ翼を動かして動き回っている。
「内調の特務から選抜した人員は確保した。お前のところの、能力者と合わせれば一個連隊とでも戦える」
「バベルタワーの住人もいるしね。それに米軍からも例の奴らが来るのだろ? 」
鶏が食事を始めた。
「あぁ、私は気が進まぬがな。貴様のところの能力者とはまた違った意味でヤバい連中だ。だが政治的なことで仕方がない……」
「一番ヤバい奴に、ヤバいって言われる連中もなんだかな〜」
「茶化すな! 連中がガテマラで行った殺戮は聞いてるだろ? 軍属でなければただの殺人狂だ。それにEUからも特殊なのが参加する。なんでも上からの圧力で強引にな……」
「兎に角、予定通りだよ。各自装備の点検を忘れるなよ」
そう言いながら、【風見鶏】は、休学届けを出し忘れた事に気がついた。
【御前会議】をお送りしました。
ありがとうございます。
ついに敵第四波との戦闘が始まります。
(映画 ブレイブハートを観ながら)
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