96 闇夜闘争 (改訂-5)
【闇夜闘争】をお送りします。
ヴァイアの街に異変が起こります。
宜しくお願いします!
赤黒い影が迫ってくる。
巨大な体躯だが、それが舞い上がる。
これこそが生物の王者なのか?
神をも殺す獣の末裔。
「おっぱい! オッパイ! ワオー! ワオー! 」
城壁の上で寝そべりながら、ビリーが歌っている。
メイデルからは冷たい視線を受けるが、無視して歌う。
「パンツ パンツ! 溶け〜るるる!! 」
結局、メイデルに特大木製ハンマーで、ぶん殴られて終了した。
「ふざけないで真剣に考えて下さいよ! 」
ビリーは今でも温泉の一件で拗ねている。
遅滞戦略を行うにあたり、ヒロトは更なる塹壕と柵の増築を行い、ヴァイアの街を中心に横へ横へと要塞を増築していった。更に晴明が霊的な護りを、街全体に施している。特殊な結界を引いていた。
銃士大隊も更に人員が増えて、銃士連隊に格上げされた。ビリーの気持ちとは真逆の方向へ、どんどん話しが進んでいる。将軍になる話しまで上がっている。
「おら〜、柄じゃないだよ〜」
「騎士団は組織です。人員が増えたら、そのトップはそれなりの立場にならないと。と上層部は考えてます」
「それが迷惑だなや〜おパンツ隊長とかならいいけど……」
自分の意思とは真逆の立場になる事が堪らなく嫌だった。
◆◇◆
戦略広域マップにアラートが表示された。
距離はまだあるが、かなりの大群が表示されている。
「第四波だな……第三波の残敵を吸収しながら増えている。ざっと十二万ってとこか」
敵を表す赤点の中に、かなり明るく、強い輝きが幾つか存在する。今までの妖魔や魔獣よりも強力だ。
「出来るだけ強力な奴を引きずり出して、叩いておく! その方がロード・グランデを急襲しやすくなる」
「問題は、タイミングじゃな? 」
「ああ、だからこそゴドラタン皇帝に会わないといけない」
クレオパトラ陛下と、エレクトラ陛下が、ゴドラタン皇帝との折衝を行うべく、手配してくれている。ヒロトの予測が正しいならば、ゴドラタン皇帝もヒロトと同じく遅滞戦略を始めている。ならば皇帝も敵の本拠地を急襲する気だ。
「赤点の中に、転生者がいるな……ほらこの中心の点」
確かに一際輝きを放つ存在がある。
「これじゃな……」
「敵も遅滞戦略の事を気付き始めたかな……」
◆◇◆
「おい。武蔵の旦那〜」
ウィリアムは大分呑んでいる。
「俺の方が、やっぱり酒に強い様だな〜」
「んだよ〜、わざと華を持たせてやった事にも気づかないのか〜」
武蔵もかなり出来上がっている。
「んだと〜、ヒックぅ、やんのか?! 」
ウィリアムが大剣に手を乗せる。
「二人とも呑み過ぎですよ? 」
そう言う総司も珍しく呑んでいる。気が大分緩んでしまっている。
九郎はテーブルに足を投げ出して、うたた寝を始めていた。
ここは温泉旅館街近くの飲み屋【銀の盃亭】である。温泉旅館を出てから、丸一日呑み続けていた。もう夜だ。
「…………ぬ? ん? 」
九郎が片目を開けて遠くを見る。
「どうした?! …………なんだ? 」
武蔵も何かを感じとる。
「殺気だな……とてもわかり難いが……屋根を伝っている」
ウィリアムは大剣を掴んで立ち上がる。総司は既に外へ出て、闇夜を凝視している。
「先行します! 」
総司は移動する殺気を追いかけ始めた! 武蔵やウィリアムほどではないが、総司も丸一日呑み続けていた筈が、それとはわからないほどの素早い反応だった。
「……何処に向かっているんだ? まさか……」
トップギアに入れて、総司は速度を上げる。もうすぐ近くだ。アルコールなど既に分解されている。
「止まれ!! 何者か? 」
一気に居合抜きで、殺気の主に斬りかかったが、それを飛びかわして、隣の屋根に着地する。
更に総司へ何かが飛んでくる。
「クナイ? 」
総司は飛んで来たクナイを掴み、そのまま相手に投げ返す!
その総司に横から切りかかって来た相手の胴を真っ二つに斬った!! 衝撃波が屋根を伝う。
その総司を後から別の敵が斬りかかる。
「総司!! 」
総司に、斬りかかった相手を九郎が首を斬り飛ばす!
「何だこいつらは?! 」
更に九郎は二人斬り倒した!
「こいつら、以前にも戦った、暗殺教団とか言う奴です! 」
「ヒロトの言ってた、忍びモドキかよ! 」
隣の屋根から飛んで来た暗殺者を、斬り飛ばして、更に速度を上げて走る。暗殺者が向かっている何処は?
「こいつら、エレクトラを狙っているな!! 」
エレクトラの幕舎は街の西側にある駐屯地の、更に中心にある。すでに深夜だ。見張りは交代で立っているが、人通りはほぼ無い。
エレクトラは既に寝入っていた。よほど疲れたとみえる。
何者かが、幕舎に忍ぼうとするが、見えない障壁に邪魔された。
「結界か! 無駄な事を……」
聖職者の様な姿をした男は、手を結界に翳そうとする。
「やめておけ! 首が落ちるぞ! 」
武蔵が、その男の眼を真っ直ぐに直視した。
その眼を見返す男は、感情の乏しい深い闇をたたえていた。
【闇夜闘争】をお送りしました。
エレクトラの命が狙われました。
次回新たな転生者が登場します。
宜しくお願いします。
(映画 帝都物語を観ながら)
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