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94 温泉旅館《裸の付き合い亭》 (改訂-5)

【温泉旅館《裸の付き合い亭》】壱をお送りします。

エレクトラから、皆に日頃の疲れを、癒やして欲しいと言う心遣いです。


宜しくお願いします!

 魔獣の軍団が引いて行く。


 今朝からの攻撃は散発的だった。


 明らかに撤退の様相を見せている。立ち込めた死臭が少し和らいだ様だ。



「重機関銃が効いただなや! 」



 ビリーは、自分のいた時代と、ヒロトの時代に百五十年の差がある事は理解していたが、実際に百五十年後の未来の武器の威力に舌を巻いた。こんな物が大量に有れば、戦争のあり方が変わって当然だった。

 だが、人間が生み出したこの兵器に恐怖も覚える。本来は魔獣では無く、同じ人間に向ける為に生み出された物だからだ。


「……いつまで人は殺し合うか……」






「エレクトラ様から、召喚者の皆様には、労い意味で、温泉で疲れを癒やされる事をお勧めされています。このヴァイアの街は湯治場なんですよ。皆さんの水着もあります」

 エレクトラの好意で、召喚者と主だった者に温泉での休息を貰える事となった。

 メイデルもウキウキしている。温泉なんて何年振りだろう。お父様に連れてきて貰ってから一度もない。



「メイデルも入るの? 」


「はい! 勿論ですよ!! 」


 ビリーは不遜な目つきをしたが、メイデルには気づかれていない……チャ〜ンス!! 横目でメイデルの揺れるオッパイを眺めてながら鼻の下を伸ばしている。





「温泉とな? 」

 マーリンの目にキラリンと不遜な光がさす。

 近頃、ヒロトとの、あんな事こんな事が出来ずじまいなので、すこし欲求不満気味だ……チャ〜ンス!! 横目でヒロトの股間に目をとめ、鼻の下を伸ばしている。



「エレクトラが気を使ってくれてる見たいだな。敵も引いたし、広域に放ったマーリンの使い魔や、晴明の式にも反応が無いし、少しはいいんじゃないか? 」

 ジャンヌも賛成だと言わんばかりにはしゃいでいる。



「そうですね。私も温泉に入りたい。 あ〜あ、有馬の湯が懐かしいな〜。 是非まいりましょう! 」

晴明もかなり楽しげだ。



「そうと決まれば、昼から行こう! 九郎達も昼には戻るって使い魔から報告があったしね」

 ヒロトは肩凝りが酷いから渡に船だった。





◆◇◆




「オヤジ! この瓶の中身を温泉で使用してくれ」

 

 いきなり覆面をした怪しい男が温泉宿の受付に入って来た。主人に、怪しげな瓶と、金貨の入った小袋を渡す。腰には二丁拳銃をさしている。


「あああんた、一体……」


 瓶をよく見ると、なにかが蠢いている。


「こりゃ〜あ、禁断の特殊スライム ERO五十! こんなエロい、いや凄いスライムを何処で?? 」


 覆面男は乾いた笑い声を上げながら、言う。


「石鹸と一緒に置いてくれるだけでいい」


 不遜な目に不遜な輝きがともる。





 昼から温泉旅館【裸の付き合い亭】に一行は到着した。何故かビリーが【召喚者御一行様】と書かれた旗を持って先導する。

 召喚者以外に、後からエレクトラと、侍女のサーシャ、そしてメイデル、そしてライラ団長も合流する。



「なんであんた、旅館のハッピなんか着てんのよ? 」

 ジャンヌが訝しむが、ビリーはすっとぼけている。なんか怪しい。



「怪しいなんてそんな! いつも世話になってるから、そのお礼みたいなもんだなや! 」 

 それとハッピと何の意味がある?



「まあまあ! 細かい事は、どうでもいいだろう? 早く湯に行こうよ! 」

 九郎は、な〜んにも考えてない。いい意味で、裏表が無い男だ。



「お主はまた、どうせエッチな事でも考えておるんじゃろ? 」

 マーリンは、九郎に股間を見せられた記憶を頭から追い出して嫌味を言う。



「ぺったんこの、貧乳なんか見てもしかたが無いだろ? 」

 そう言ってニャ〜っと笑った瞬間、マーリンが木製のドデかいハンマーで九郎をぶん殴った!

 どこから出したのか?



「グニャん〜」

 変な声をだして、吹っ飛ぶ九郎。



「とにかく、もうエレクトラが来てるから、挨拶しようよ」

 ヒロトは慌てて皆んなを引っ張っていく! どうしても遠足の引率気分になってしまう。武蔵や総司はまだ良いが、マーリンや九郎は非常識を絵に描いた様だし、ビリーに関しては論外だった。ビリー的には一般常識が服を着て歩いてるそうだが、俺から見たら宇宙人が人間に成り済ましてるのではと疑ってしまう。



「こんにちわ! 皆さん今日はゆっくりと、疲れを癒やして下さいね! 」

 エレクトラが皆を出迎えた。侍女のサーシャが、皆んなに水着とタオル一式を渡して行く。



「おい、混浴と書いてあるぞ」

 武蔵が指摘する。この程度で顔は真っ赤だ。



「大丈夫ですよ! その為の水着ですから! 」

侍女のサーシャが皆を連れて入る。

 脱衣所で男と女に分かれて水着に着替えるのだが、ビリーの姿は見えなくなった。




【脱衣所〜男の場合】


「お! この世界のパンツは、俺の時代のよりも素材がいいな」

 ウィリアムは海水パンツを広げながらご満悦だ。



「何だ? このテロテロした生地は? 日本男児が、こんな物を履くのか? 」

 武蔵と総司は海水パンツを広げながら、げんなりする。



「何です? この珍妙な腰巻きは? 皆、こんな物を履くのですかね? 」

 晴明と九郎は海水パンツを広げながら途方にくれる。



【脱衣所〜女の場合】


「ここれは! ちょっと過激ではないですか? 」

 ジャンヌとマーリンは布の部分が少ないビキニ水着など、始めて見たので衝撃的だった。



「これくらいは、常識ですよ! エレクトラ様にはこれです!」

 そう言ってサーシャがエレクトラに水着を差し出す。



「わわわ私がこれを? 流石に不味いのでは? 」

 エレクトラの水着は胸も強調され、かなりのハイレグだった。



「たまには良いのですよ! 王宮にいると、硬っ苦しいルールばかりですから。ここでなら自由ですよ! 」



「そう言う問題ではない、恥ずかしい……」



「そんな事では、殿方のハートなど掴めませんよ! 」

 皇王陛下だという事をすっかり忘却している。



「それでは、いざ! 出陣です! 」





【温泉旅館《裸の付き合い亭》】壱をお送りしました。

 ある意味、妖魔軍との戦闘よりも、熾烈な戦いが始まります!

 (映画 妖怪大戦争を観ながら)


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