65 プロローグ〜渦 (改訂-5)
プロローグをここに投稿いたします。
ここから話しは遡る事になります。
どうぞ宜しくお願いします。
闇の底には何があるのだろ?
ヒロトは子供の頃に神隠しにあった記憶がある。
裏山の神社で友達と遊んでいて、急に違う場所へ目の前の景色が変わった事があった。深い井戸の底の様に寒く薄暗い場所……遥か彼方に外からの光が見えるが、叫んでも声が出ない。井戸の底の筈がとても広い……段々と心細くなり、涙が出たが疲労が増さった為に眠ってしまった。
気がついたら銀髪の男に手を引かれて歩いていた。その手を振り払おうとしても、強い力で掴まれて解けない。男は、振り向きもせずに前に進んで行く。僕を何処に連れて行くのか? ヒロトは怖くなって泣き出してしまった。
だが次の瞬間には病院の天井が見えた。警察や大人たちは何も信じてくれなかった。どうやら意識を失ってから、丸三日が経過していた。
あれは何だったんだろう……
そこは暗い闇の底だった。
ここの闇は、あの闇に似ている……
第二十九階層の最奥に到達する。
この階層にまで来ると瘴気も少し濃くなってくる。
拠点を構築しながら進む事がさらに重要になっていくだろう。日の光の届かないロード・グランデ大迷宮の第二十九階層。
仲間の召喚英雄達と共に昨夜乗り込んだ。
グランパレス氷河を超えて、今ロード・グランデ大迷宮の周囲を、各国の連合軍数十万の軍勢が包囲していた。
ヒロトは戦略、戦術モニターと順番に確認して行く。
目の前に各軍の兵員数、補給状況など必要な項目が数値化されて表示されている。俺は正直団体行動が苦手だ。だからMMORPGでもソロでやってきた。しかし今は己の全てを出し切らないと、なにも獲得出来ないだろうと結論付けている。
この災厄の渦を止めるため、ロード・グランデ大迷宮には四つのパーティーが入っている。全てこのナイアス大陸でも最上級戦力がそろったパーティーだ。ヒロト達召喚者もいる。
「この扉の向こうが階層主の部屋だ。いいか? 」
ヒロトは皆に声をかけた。
「さっさと開けちゃって、サクッと片付けるわよ! 」
ジャンヌはいつも明るい。この明るさにいつも助けられている。
ヒロトが両開きの扉に解錠の呪文をかける。
ゆっくり開く巨大な扉。さらに闇が深く、その奥から何かを引き摺る様な音がする。
「天翔ける光の精霊! 光玉! 」
マーリンが照明魔法を天井に飛ばすと、あたりが光に照らされた。
部屋の中央にうずくまった塊が動きだす。
長い首が八つ。
巨大なヒドラがいきなり口から火炎を噴き出した!
「散開!! 」
ヒロトは戦闘モニターを広げ、全員のステータスを瞬時に確認する。この瞬間だけはいつも緊張する。慣れる事はない。慣れてはいけない。
「ヒロト! 私が左から斬り込む! 詠唱に入って下さい! 」
総司が風を切って走った。
ヒドラの口から今度は塩酸が噴き出されるが、総司は上手く躱して首を両断した。
だが首は直ぐに再生してしまう。
ヒロトは背中の太刀を抜き放ち、白刃に左手の人差し指を添えて呪文詠唱を始める。
「我は願う。我が血肉を捧げ、我は願う。ルナマリア、リア ラスアラス 怨念の王よ、死界の王よ……」
マーリンが火炎魔法で障壁を作りヒロトの詠唱を援護する。
セネカは二本の戦斧を巧みに操り、凄じい体術でヒドラの牙を避け、攻撃を叩き込む! 赤く長い髪をなびかせて、更にヒドラに向かって行く。
「セネカ! 前にですぎ! 」
ジャンヌは防御魔法と速度強化の魔法をセネカに重ねがけして行く。ジャンヌは祈るだけで、願うだけで魔法を発動させる事が出来た。子供の頃から出来てしまったのだ。
総司はギアをトップスピードに上げ、ヒドラの顎を掻い潜りながら、ヒドラの首筋に沿って白刃を突き立て、切り裂いて行く。
「今です! ヒロト! 」
総司がヒドラの首を一瞬で二つ切り落とした。
「ロアナ ロアナグラ バルバロイ! くたばれ化け物!暗黒泥龍硫酸瘴!!! 」
ヒドラの周囲を囲むように結界が張られ、その結界内の床が真っ黒な泥と化した! さらにヒドラの頭上にも真っ黒な球体が浮かんでいる。
泥がヒドラの身体を急速に溶かしだすと、凄じい叫び声をあげてヒドラが火炎を周囲に撒き散らすが、結界の障壁に阻まれて外へは影響がない。
そして頭上の球体が爆炎をあげて炸裂した!
結界内が黒煙に満たされる。
さらに追い討ちに総司が真空の刃を打ち込んだ。
ヒドラの胴体が真っ二つに裂けて酸の沼に溶け崩れて行く。
「終わったな……段々と敵が強力になってくる」
マーリンがやれやれと言う顔で安堵する。
「直ぐ三十階層に降りて拠点を作り、皆と合流するぞ! 」
もうあまり時間が無い。ヒロトは焦る気持ちを言葉にせずに飲み込んだ。
最下層への道はまだ遠い。
もう魔神は放たれている。
そして災厄の渦の中心には……
プロローグを書いてみました。
作成したプロットの細かい話しを少しづつ差し込んでまいります。
(映画 聖の青春を観ながら)
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