表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/92

76 戦馬牙突 (改訂-5)

 災厄の渦との先端が開かれました。

 そして徐々に出揃うメインキャラ達。

 新たな召喚者を交えて本当の戦いはこれからです。さまざまな者達の思惑の向こうにヒロトは現世に帰れるのか。

 どうぞお付き合い下さい。


「ロイドヘブンの南端に巨大な時計塔があるだよね? 」

 ビリーは馬に跨りながら話しかける。


「ああ、あるな。ロイドヘブンで一番高い建物だね」

 ヒロトは器用に馬上で戦術モニターを見ながら答える。


「シリウスのおっさんに聞いたんだけどさ〜。あの時計塔の地下には特殊な修練場があって、すげーオーバースキルが手に入るとか何とか」



 オーバースキルとはこの世界にある個人の技能の事で、経験を上げたり、特殊なアイテムを入手したり、特別なモンスターを狩ると魂に刷り込まれて自分の物となる。なぜリアル世界でMMORPGの様な事が出来るのかはまだよくわかっていない。他にも、特殊なクラスには様々な能力持ちが存在する。



「今回の件が落ち着いたら潜ってみようかと思うんだなや〜」



 最近ビリーが入手したオーバースキルがいたくお気に入りで、味をしめた様だ。


「落ち着いたら、か……」


「何です? 何のお話し? 」


 晴明が興味津々で入ってくる。


「ロイドヘブンの時計塔迷宮のお話しですよ。あの迷宮はロイドヘブンが出来た当初からあるらしくて確かシリウス様も潜った事があるとか」



「へ〜。私も潜てみたいですね。ご一緒しますよ」


「ビリーと晴明の能天気コンビか」


「一緒にするな。こんなのと潜ったら迷子になるだよ」


「嬉しいくせに。ツンデレという奴ですか? 」

 どこでそんな言葉を学んでくるのか?


「ややや喧しいわ!! 」



◆◇◆




「本当にきりが無いな」 

 ウィリアムは血塗れの大剣を地面に突き刺してため息をついた。あれからかれこれ百体は一人で屠っている。



「さっきから剣を持つと黄色く光る……神霊力というやつの影響か? 心持ち剣が軽く感じる? 」

 森の奥からまたゴブリンの一団が向かってくる。



「ひつこい奴らだ! 」



 剣を抜取り横殴りに振るうと、剣の刃先から一筋の光が発せられ、それがゴブリンの一団に向かって飛んだ。

すると六体のゴブリンの胴体が横真っ二つに割れる。



「なんだ? 」



ウィリアムはさらに2回クロスする様に剣を振ってみる。

 すると今度は光の筋もクロスして飛ぶと、五体のゴブリンがクロス状に裂けてバラバラに弾け飛ぶ。



「鎌イタチの刃か?! 」



「ウィリアムさん! それはオーバースキルの一種です」

 少年兵が櫓から弓を射掛けながらウィリアムに伝えてきた。



「これがそうか?! 」

 要領をえてどんどん敵に打撃ち込んで行く。堪らなくゴブリン達が退却し始めた。



「ウィリアムさん! 敵が引いていきます。やった! 」



「すぐに第二波が来る。油断するな」

 技を使うと体力の消耗が激しいな。気力が吸い取られる感じだ……




◆◇◆




「不味いな。ゴブリンだけじゃなさそうだ……」



 ヒロトは戦略モニターマップを見ながら忙しなく考えを巡らしている。まだ魔法は早すぎる。がしかし九郎が間に合うか……

 先ほどから国境のトンパ村の外縁に陣取って敵を狩りまくる存在がある。他の光点とは明らかに輝きが違う。これは多分召喚だ……召喚者が村を守っている。この存在のおかげで何とか持ち堪えている様だ。だがゴブリンの集団の後方から別の色の集団が迫っていた。モニターに表示された数値は五百四十二体。



「ゴブリンよりも動きが早い。オークとも違う。なんだ? 晴明! 式を飛ばしてこの集団を探れるかい? 」



「探りながら、足止めしますよ」



 晴明が懐から呪符を取り出して神代の言霊を唱える。すると呪符が光の矢となって北の空に向かって超高速で飛んで行く。

 広域モニターにもその移動する光の存在が見て取れる。

 もうトンパ村付近にまで到達した光はそこから無数の小さな光に分裂して新たな別集団の上から降り注いだ。



「……フルベ……ユラユラとフルベ……」



 晴明が言霊を続ける。



◆◇◆



「ウィリアムさん! いけない! ヘルハウンドだ! 」



「なんと!? ヘルハウンド? 」

 兵士がざわめく。



「ダンジョンでも中層のモンスターだぞ! こんな所に出てくるのか? 」



 すると疾走するヘルハウンドの集団の頭上から光の矢が降り注いだ。ヘルハウンドの疾走が止まる。光の矢は地面に吸い込まれ、その地面から赤黒い手が生えてくる。式鬼の集団が出現しヘルハウンドを襲いはじめた。



「何だあれは? 仲間割れか?? 」



 ウィリアムは大剣で、飛びかかって来たヘルハウンドの首を叩き落としながら状況を把握しようと注視した。敵かどうかわからないが、式鬼は百体ほどだろうかヘルハウンドに囲まれながらも善戦している。

 ウィリアムは、さらにヘルハウンドの足を切り飛ばしながら北門の上にいる兵士に叫ぶ。



「油を流せ! 火攻めにしろ! 」



「そんな事をしたらあんたも無事ではすまんぞ! 」



「俺はいい。何とかする。でないと塀が保たない! 」



「わかった! どうなってもしらんぞ! 」



 兵士達は油の入った樽を塀の下に落下させて樽めがけて火矢を放った。行き良いよく燃えて樽が爆ぜる。村の塀にそって泥の油が事前に撒かれていて、それに引火すると塀を取り囲む様に炎が上がる。



「さてと。啖呵を切ったはいいがどうするか? 」

 さらにヘルハウンドを三体屠りながら何故か笑いが込み上げて来た。するとヘルハウンドの群れがいきなり走るのをやめた。



「!? なんだ? 」



 ヘルハウンドの群れの奥が左右に割れていく。

 その間から別種のモンスターが現れた。

 炎に照らされた頭が三つあるヘルハウンド?



「あれは?! ケルベロスです! ウィリアムさん! 」



 少年兵は怖気が走った声で叫ぶ。

 ケルベロスは口から炎を吐きながらウィリアムに近づいていく。 


「犬コロの親玉か! 」



 大剣を水平に構えて腰を低くする。

 ケルベロスがウィリアムの左へ左へと円を描く様に周りこもうとする。

 いきなりケルベロスが炎を吹いた! 莫大な熱量の火炎をウィリアムが横に跳び交わす。着地と同時に横に大剣を振るいケルベロスの首を薙に行くが、剣を噛み掴み、そのまま剣ごとウィリアムを投げ飛ばした。背中から地面に打ちつけられて口から血を吐く。



「やるな! 犬コロふぜいが!! 」



 すぐさま体制を整えて嬉々としてケルベロスに上段から凄じい一撃を叩き込んだ! ウィリアムの神霊力が刀身に伝わり、発光した刃は、ケルベロスを一撃で真っ二つにした。

 それを見たヘルハウンドは一斉にウィリアムに向かってきたが、その時左側から馬の群れの足音が大量に聞こえてきた。



「全騎突撃体制!! 」



 九郎の激で二千騎もの騎馬がヘルハウンドの群れに旗を掲げて突撃を開始した。



「あの旗はアリストラス軍旗だ! 」

 国境警備の兵達から歓声が上がる!



「一っ匹も逃すな! 」



 騎馬隊は二手に分かれる。九郎が先頭の一団を前方から、もう一つの一団が右側面から突入した事でヘルハウンドの群れは恐慌をきたす。

 九郎はそのままヘルハウンドの群れの中心を薙ぎ払いながら、後方まで抜けて二つに分断し、そのまま今度はゴブリンの群れに突入した。


「あの鋭い軍の運用はかなりの指揮官がいるな」

ウィリアムはそのままゴブリンの別の一団に切り込んで行く。



「覚えたての技を喰らえ! 魔戦剣! 」



 九郎が太刀を抜くと紫に太刀が輝き出す。そのままゴブリンの群れ目掛けて突きを放った。

 紫色の波が発生してゴブリンの群れを襲う。

 数十体が一瞬で細切れになった!



「隊長! なんすか? その魔戦なんとかって……」

 副長のジレが、あまりの威力に唖然とした。



「かっこいいだろ? 昨日夜なべして考えたんよ! 」



「なんか神霊力が強いとデタラメな技をだせるんすね? 」

 そんな事を話している間にこの男も数体のゴブリンを屠っている。



「シリウスのおっさんから見せてもらったモンスターの図鑑だっけ? あれに載ってたドラゴン族とか用に考えた技だ! 」

 簡単に言ってのけるところが恐ろしい。



「そんなのと戦う状況にはなりたくないっすよ」



 九郎の遊撃大隊は渦巻の様にゴブリンの先遣隊を囲いながら削っていく。九郎は武田信玄(タケダシンゲン)の使う巻狩戦法は当然時代が違うので知らないが、同様の戦術を実地で行った。




「掃討戦に移る。各自手柄をたてろ! 」



 趨勢は決っした。あとは時間の問題だった。

 こうしてゴブリンの先遣隊を殲滅し九郎はトンパ村に凱旋した。



◆◇◆



「英雄共が揃い始めたか……」



 黒ずくめの騎士は小さく独り言の様に呟く。

 巨大な剣を背中に背負っている。



「あの程度の低級モンスターでは歯が立たないかと。魔導帝国などと言ってもこの程度では……」



「侮るなよ。軍を寄せ集めたとて魔神は普通の人間では太刀打ち出来ぬ。それより我等は奴らより先に宝珠を集めねばならん。アリストラス軍が良い目眩しになる」



「はは。カロッサの塔への突入を開始いたします」



「塔の主は我が直々に倒す。魔導帝国が来る前にかたをつける」



 黒衣の騎士はマントを翻してその場を立ち去った。


「我が主が出陣される。露払いをするぞ! 」



 辺りに伏せていた黒の一団から歓声があがる。

 数は三十人ほどだが、皆それぞれが強力な兵達だった。クラインが4つ、グラウスが2つ、そして我が一つ……さてどうするか……馬に跨りながら黒衣の騎士は思案する。あとカロッサの塔にある宝珠で全てが出揃う事になる。後は彼奴等と血みどろの奪い合いか……あとは召喚者共がどう動くかだが。エレクトラ嬢め、余計な事を……千年前と同じ事を繰り返すつもりか。




 ヒロト達の先方隊が国境に差しかかったのは次の日の昼前だった。

 先触れを走らせて軍が村に到着する事を告げる。

 大部隊の為全ては村に入り切らない。村の外周に野営の準備を敷く。

 さらにその周囲に柵の設置も同時に行い、塹壕も掘り進める。この地を最前線の要塞に作り変える事がヒロトの最初の目的だった。



「空の騒めきが酷くなってきましたね」



 マーリンは魔導団の魔法発動の最終段階の調整に入っていた。

 本当の戦いはまだ始まっていない。









 私が好きな小説はアルスラーン戦記、銀河英雄伝説、三国志、聖刻群龍伝などですかね。京極先生のミステリーも大好きです。

 かなり影響を受けてます。

 アニメはガンダムで育った世代なのでアニメの歴史を見続けている気概がある様な無い様な。

 という訳で(どんな訳?)物語はやっと本編に入って行きます。同時並行で様々な事件、物語が発生します。

お付き合いして頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[良い点] 合戦は、描き方が上手だととても面白くて良いですね。とても楽しかったです。騎馬隊の突撃がもう、かっこ良かったです。そして敵側の思惑も浅くなく、さらなる謀略の匂いがしてきてこの先も楽しみです。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ