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1-ED
「こうして、彼女は彼と出会う事になる。長い長い年月を待ち望んだ彼を。」
私は手にした本を戸棚に収める。
その本は、とても生き生きとしていてる。
隣に置かれた本が、色々な本を呼び寄せ、また、彼の本を輝かせるのだろう。
「さて、この出会いは果たして良いものだろうか?はたまた厄災だろうか?実に楽しみなものだ。」
本棚から一歩引いて見る光景は、素晴らしい。
一点では見えない相互関係が映し出される。
この本棚一つで、一つの世界が作られるかのように・・・。
「彼女は、無事に契約の対価を得られるだろう。さて、契約の対価(愛しき人)を手にした彼女は、どうするのだろうか?」
私はこれから味わう極上の味わいに、期待を膨らませ本棚に背を向けた。
「是非、最高の熟成をしてくれ給えよ。おっと?そうだ、お茶を切らしていたのだった。」
私はスタンドからコートとハットを取ると、書斎の奥の扉から外へ出かけるのだった。
「そう、これは彼らの物語だからね。次の話が楽しみだ。」
私の言葉を聞いたのか聞いていないのか、扉が背中越しに閉まる音だけが響いたのだった。




