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再び気が付くと、私はまたあの部屋の入り口に居た。
「やぁ、また会ったね。いらっしゃい。こちらへどうぞ。」
前回と同じく、初老の男性は私をローテーブル前にあるソファーへと導いた。
「君は確か・・・そう。フィナンシェと紅茶が気に入っていたね。」
進められるがままにソファーへ座った私の対面へ座った彼は、
前回同様何処からか取り出したティーセットとフィナンシェ、それとマドレーヌが乗った皿をローテーブルへ並べていた。
「申し訳ない。前回の茶葉を切らしてしまっていてね。お詫びと言うわけではないが、こちらをよろしければどうぞ。」
彼は淡い緑色の液体をティーポットからカップへ注ぐと、私の前にマドレーヌの皿と一緒に並べた。
私は、カップを持つと一口飲む。
薄い色合いから想像できない程の独特の味が広がった後、微かな酸味が口の中を爽やかにしていく。
何故か、私はこの味を知っている気がした。
だが、何処で味わったのかは思い出せない。
私は勧められるままに出されたマドレーヌに手を伸ばした。
マドレーヌは思った以上に甘く、それ単体では口の中に甘さが残る。
しかし、先程の緑の液体を口に含むと、その甘すぎる味が程よい甘未へと変わった。
私が無事食べ方を理解するのを確認した彼は、優しく微笑んだ。
「さて、前回の続きを語るとしよう。良いかい?よし、では物語を始めよう。」
そう言って彼は本を開き始めた。




