6-8
外へ向かえば向かう程、まるで誰かが呼び止めている様な声がよりはっきりと聞こえてくるようになった。
「いかないで。」
そう呼ばれるたびに、無視していても僕はなんだか気分が悪くなってきた。
「・・・坊ちゃん?大丈夫ですか?顔色悪くなってますよ?」
僕の調子が悪いのに気が付いて、先程より心配そうにコンちゃんが僕の顔を覗き込んでくる。
「うん、ごめんね。さっきから、少し気持ち悪くて・・・。」
そう、コンちゃんに答えている間にも、僕の耳には「いかないで」という声がずっと響き続いて辛い。
声を無視し続けていたけど、僕はコンちゃんの手を握ったまま、目が回る様な感覚に襲われて、ついに立っていられなくなってしまった。
「坊ちゃん!失礼しますね。」
コンちゃんは咄嗟に僕を抱えると、建物の外へと僕を急いで連れ出した。
「坊ちゃん、何か見えたり、聞こえたりしてますか?」
「・・・うん。誰かがいかないでって言ってる。」
コンちゃんは移動しながら、僕の答えに顔をしかめた。
そんなコンちゃんの顔を見ながら、僕もますます激しくなっていく怨嗟の如く響くいかないでと響く声に耐えていた。
声が酷くなるにつれて、僕は体に力が入らなくなり、自分の体が本当にあるのかわからないような状態になっていく。
そうしているうちにようやく建物から出る事が出来た僕達は、その瞬間、今まで響いていたいかないでという声はぴたりと止まった。
そして、自分の体が無くなって行く様な感覚に襲われ、力が入らなかった体にも力が入り、実感することができる様になった。
「コンちゃん。もう大丈夫。聞こえなくなったよ。」
「すみません、坊ちゃん。まさかここまで坊ちゃんが引き寄せるとは思わなくて、怖い思いをさせてしまいましたね。」
「大丈夫。コンちゃんが助けてくれたから。」
しゅんと落ち込むコンちゃんにそう言って頭に手を伸ばすと、頭を撫でたのだった。




