表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

なんでもない日常が紡ぐ物語

君の香りは、どこにも。

作者: 夜野 碧

今は、高校生でも香水を付けるのが当たり前。


朝、出掛ける前に香水をつけてたら「お母さん達の頃は、女子でも香水付ける子は居なかったわ。」なんて言われる。


そんな昔話聞かされても知らない。


学校に行けば、女子はみんなお化粧してるし、香水なんか当然だし。男子も自分が楽しむために好きな香りをつけてる。運動部の男子は、汗くさいのをごまかすのにつけすぎで、ちょっとヤだなって時があるけど。男子でも女子でも、この香りは、誰だなって、すぐわかる。


そんな中で、私の彼氏は男くさい汗の匂い以外しない。甘く香る柔軟剤の匂いも、香水の爽やかな香りもしない。この香りはこの人、というものがない。彼を思い起こす香りが、本人以外には存在しない。


「他の子のみたいに、香水つければ良いのに。」

「香水がイヤなら、洗濯の時に柔軟剤入れてもらえば?」

と何度か言ってみた。


けど。


『ゴメン。汗臭いよね。俺、香水の香りが苦手で。』

『柔軟剤を入れたり、香水ほど匂わない制汗剤を付けた事もあるんだけど。実は匂いアレルギーで。洗剤も柔軟剤も、無臭のにしてもらってるんだ。』


「そっか。大変だね。」


アレルギーと言われたら、それ以上言えない。


事実、彼は香水好きで知られるクラブの先輩と話す時、必ずクシャミをして、顔を反らす。話が盛り上がって、先輩と距離が近づくと鼻をすすって、『スンマセン…。』と横を向いて鼻をかむ。香りが強いと辛そうなのが、見ててわかる。


『香りが強くなければ、平気なんだけど。先輩は大好きだし、話したいけど、香水が無理で。』

先輩と別れた後に、私にだけコソッと告げた。



でも。やっぱり。

君の近くに居ると、なんだかくすぐったい気分になる。

他の子達からする柔軟剤や香水の香りが、君からはしないから。


君を思い出せる香りがあれば良いのに。

君の香りは、どこにもない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ