第七話 その名はチェシャ猫
二人がしばらく歩いていくと湖が見えた。
そして、何やら変な猫が第九を鼻歌で歌いながら湖畔の岩の上に座っていた。
「ふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふーんふんふーん………………‥…歌はいいね。」
と、いきなり有砂に話しかけてきた猫である。
「え?」
「そう思わないかい?有砂さん?」
「どうして私の名前を?」
「有砂、有名人だな」と、佑紀はのんびりと言う。
「知らない者はいないさ、君はかなりの有名人だよ。」
「そうなの?ところであなたはだれ?」
「ああ、僕かい?…僕はチェシャ猫だよ。……君たちには一度会っておきたかったのさ。さて、君たちは王に会うのかな?」
「なぜ、そんなことを聞く?まず、言わせてもらうと答えはNOだ。」と、チェシャ猫に対して応えるも…
「いや、あるわ。」と、有砂は即答する。
「そうかい、じゃあ、また、その時に会おう。」
その後、彼は引き止めるように言った。
「あ、1つ言い忘れていたよ、有砂さん、君は王に命を狙われている。」
「親切にどうもって、なによ!狙われてるって!」
チェシャ猫はその答えを言わずに去っていった。
「答えなさい!この、猫!」
「まあまあ、落ち着けって。な?とりあえず、先に進もうぜ?」と、声をかける流石、兄さん。
「すみませんね!落ち着きなくって!」
「はあ、やれやれだぜ…(なんで俺に逆ギレ!?というか、命狙われてるってどういうことだよ…。俺が守るべきなのか…?)」
二人は、森の中へと入っていった。