第四話 測定開始
「うーん」
伸びをする。久しぶりの快眠だった。
頭がさえた所で、隣のベッドを見ると、寝ていたはずのアレンがいなかった。
「まさか?!」
嫌な予感に襲われる。
装備を付け直し、借りていたベッドを整えもせず、ロビーに向かう。
ロビーに戻ると、アレンの姿が見えたので、一息つくことができた。無事で何よりだ。心配させやがって。
話声から察するに、携帯用の食料をグレードアップさせるべく、アンナさんと交渉している。
さっきの食事は俺の心だけでなく、アレンの胃袋も掴んだらしい。
アンナさんとアレンが俺に気づいた。
「おはようございます。」
「おはよー、よく寝てたね!」
「あ、おはようございます。俺どのくらい寝てたの?」
アンナさんが時計を確認している。
「7時間程度ですね。疲れはとれましたか?」
「もう、スッキリ。最近、熟睡はできない環境だったからなぁ。」
「それは良かったです。」
もう一度、ご飯が食べたいと申し出ようかと思ったが、さすがにカッコつかないので、自重しておく。
「じゃあ能力測定お願いしたいんだけど。」
「分かりました。アレン様もよろしいですか?」
「はい、お願いします。」
「では、能力測定エリアに移動しましょう。その前にこちらを身につけて下さい。」
そう言って白いプレートを渡される。
黒文字で自分の名前が書かれている。
「これは身分証ですか?」
「似たようなものですね。認識票といいます。加えて、色々な機能がついています。」
「無くしたら、何やらヤバい匂いがするな。」
「正解ですね。フロアを移動する際の座標を特定する機能等もありますので、なくさないでくださいね?なくしたら・・」
「なくしたら?」
「なくした方を私たち従業員総出で探すことになります・・・・・」
「お手数お掛けします。」
「では行きましょう。」
受付横の大きな扉から、能力測定エリアに移動するらしい。
移動する際にアンナさんが、身分証をドアにかざしたあと、小声で何かを呟いている。
「お待たせしました。」
ドアが開く。
「なんだそりゃ!」
そこには、運動場が広がっていた。驚くのはそこではない。青い空に太陽があるのだ。
アレンは言葉を失っている。
「なんで太陽が?!」
「塔の中ですよね!?」
「魔法ですよ。空間を目的の場所に繋げているのです。先ほど、時間をいじる魔法を利用していると言いましたが、正確には四次元制御魔法といいます。四次元理論は空間軸に時間軸を加えたものです。ですので、時間をいじる事と空間をいじる事は結構近いのです。裏表と言ってもよいかもしれませんね。」
「さっぱりわからん」
「それにしても、知らない事ばかりですよね~・・」
ここまでくると、疑念よりも感動のほうが先に立つんだな人間って。ということを考えながら、グラウンドを見渡す。
よく見ると、グラウンドの中心に機械のようなものが置いてある。
「あの機械は何だ?」
「攻撃力測定器ですね。個別に質問をうけるのも可能ですが、分かりやすいと思うので能力測定の流れを一旦全て説明をしてもよろしいですか?」
「お願いします。」
「わかりました。歩きながら話しましょう。」
そういって皆でグラウンドの中心に向って歩き出す。
「能力測定エリアでは、攻撃力、体力、器用さ、魔術力の順番で測定し、終了後、体内能力の測定として、あなたの血液を採取、分析させていただきます。」
戦闘に必要な能力の測定か。知識を問われる筆記試験じゃなくて本当によかった。
「血液の採取って何故ですか?」
「人間の血液を分析すると、色々な事がわかります。例えば、病気の可能性の有無などから攻撃力、魔術力等をサポートしているもの、言い換えれば血液の力ですね。それを数値化してみる事ができます。」
「そんなこともわかるのですか?!」
「丸裸にされたほうがマシな気がするのは俺だけか?」
「申し訳ありませんが、これをしていただかないと次のフロアに進めません。」
攻撃力測定器の前で、歩みが止まる。
「わかった。で、何すればいいんだ?」
「それではこの攻撃力測定器を見てください。」
攻撃力測定器とされるそれは、5メートル四方の台の上に、バネの棒が中心に生えている。バネの棒の先端には丸いクッションのようなものが取り付けられていた。
大体バネの高さは胸あたりの高さになっている。
よ~く見ると、クッションに何か書いてある。
トーキー?この機械の名前だろう。肉体言語が必要な機械でトーキーとは笑える。
バネの棒の下部には黒いガラスのようなものが取り付けられている。
「このクッション(トーキー)に向かって、あなたの武器で最大の攻撃をしてください。」