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【-1日目~】【15日目まで】

運営-1日目


「学んだ事を役立てて、決して無理はしないようにしてください」

「はい! 迷宮神様! 行ってきます!」


 送り出してくれる迷宮神様に深々と頭を下げて私は出発した。


 今日から私はダンジョンマスター。

 自分の意思で地球とは別の世界で迷宮を運営する職業を選んだのだ。

 よくある異世界物小説の迷宮運営はもっと拉致とか強制とか記憶の欠落とか、そういう危険が危ないデンジャラスなシチュエーションから始まる。


 でも私の場合、というか迷宮神様は違う。

 就活中だった私はもう何社目になるのか数えるのも面倒になるほど面接を繰り返し、その数だけ落ちて……そして株式会社ラビリンスファクトリーにエントリーしたのだった。


 そこで待っていたのが迷宮神様。

 面接は2次、3次と順調に進み、4次面接で私はこの株式会社ラビリンスファクトリーが普通の会社ではないということにやっと気づいた。

 でもここまで来てしまったのだ。もう野と成れ山と成れである。


 そして4次面接……もとい、職場見学――もちろん異世界の迷宮見学を終え、私は見事内定を勝ち取ったのだ。

 ……まぁ職場見学はちょっと生々しい、血や臓物が飛び交い、魔法や剣でドンパチするアレな感じだった。けれど、この厳しい就職氷河期を生き抜いた私にはどうってことない。どうってことないよ! ないってば! 血なんてみなれてらい!


 果たして、研修と言う名の異世界の知識と迷宮の運営法を迷宮神様――社長兼人事部長兼教育係――から教わる事2ヶ月くらい。

 今日、わたくし、七瀬奈菜(ななせ なな)は無事研修を終えた次第であります。


 ちなみに、研修中は1人暮らしのアパートから会社まで通っていました。

 会社は普通のレンタルオフィスでしたよ。



運営1日目



 私に与えられた迷宮は3型迷宮Lv1です。

 迷宮には様々な型があり、その型の数だけ個性があります。

 もちろん最初に選べる型は基本となる物でしかないので、その後の運営次第でいくらでも迷宮はその姿を変えます。


 私が選んだ3型迷宮は、所謂石壁通路部屋混合のオーソドックスなタイプの迷宮です。

 3型迷宮の利点は迷路系のマップを作りやすい点と、通路の大きさを制限することにより人数の絞込みが出来る点です。


 さて、まずダンジョンマスターたる私がやるべきことは迷宮を作ることです。

 迷宮神様の研修で培った迷宮作成テクニックでごりごり迷宮を作っていきます。

 とはいってもSFチックな空中投影型ディスプレイを操作してゲームのようにマップを配置していくだけなんですけどね。

 でもただ配置すればいいというものではありません。

 我が株式会社ラビリンスファクトリーには迷宮作成において厳格なルールが存在します。


 迷宮作成ルールその壱。

 ・入り口と出口は繋がっていなくてはならない。


 つまりどういうことかというと……まぁそのまんまですね。

 入ったはいいけど、物理的にも魔法的にも先に進めないようなマップ配置はだめってことです。


 迷宮作成ルールその弐。

 ・マップ配置にはDP(ダンジョンポイント)を消費する。


 つまりは専用のポイントが必要ってことです。

 研修を最後までしっかりと真面目にこなした私ですので、迷宮神様からボーナスも頂いております。

 ですので3型迷宮Lv1でも最初から飛ばしたマップ構成を出来たりしちゃったりしますですはい。うひひ。


 迷宮作成ルールその参。

 ・低階層における召還魔物の配置はNG。


 異世界といえば魔物! 迷宮運営で魔物といえば召還です。当たり前ですね。はい、ここ研修テストで出ましたよ!


 召還される魔物は基本的に頭がいいです。

 どのくらいかというと、文化的な生活を送り、言語を操るくらいです。

 でも魔物は魔界と呼ばれるかなり過酷な地で生活をしているので、迷宮は彼らにとって実家のような安心感があるそうです。

 文化的な彼らですが、魔界は弱肉強食な過酷な地ですので強くなければ生きていけません。

 ですので基本的に好戦的です。迷宮へやってくる人々に対して容赦などしません。

 実家に勝手に上がりこんでくる盗人どもに制裁を!


 とまぁ、このように召還される魔物はそれなりに強いので低階層に配置すると迷宮にやってくる人々から危険な迷宮だと認識されます。

 つまり、相応の強い人が殴りこみをかけてくるわけです。危険です。デンジャラスです。


 私の前の社員さん達――先輩ダンジョンマスター達の多くはこれが原因で失業しているそうです。明日は我が身なのでルールはしっかり守りますよ!


 さて、今日の業務は大分予定よりも進んだと思います。

 研修中に書いた、私の最強ダンジョン作成計画書を見ても十分な進み具合ですね。

 さてタイムカードを押して退社ですよー。


 あ、もちろんアパートに帰りますよ?



運営2日目



 今日も元気にマップ配置!

 迷宮神様に措かれましては出社して一番に淹れたお茶を大変お気に召しておりましたです。


 昨日配置したマップをさらっと確認して続きを配置です。

 DP(ダンジョンポイント)はまだまだ残っております。ボーナス様様ですね。

 今日中には第1階層を完成させたいところです。


 さて今日の迷宮作成ルールはこちら――


 迷宮作成ルールその(よん)

 ・低階層における高Lv罠の配置はNG。

 これはその参と大体同じ理由ですね。

 危険がデンジャラスな人たちがきます。ベリーハードなモードになりますので失業したくないのでルールは絶対! 厳守!


 なので基本は3型迷宮のメリットを活かした迷路構造と人数の絞込みです。

 特に通路の幅をある程度狭くして、部屋の半数に魔法のドアを設置します。これだけで3型迷宮はかなり攻略が難しくなります。

 もちろんやりすぎると失業の危機ですので研修でしっかり学んだ加減のほどを活かします。


 ちなみに魔法のドアは罠の1種です。

 Lv的には最低Lvに近い罠ですが、その効果はとても高いです。

 ですが致死性が高かったりするわけでもないので最低Lvなのです。

 効果は単純。条件が満たされれば閉じ、条件が満たされれば開く。

 これだけです。


 魔法のドア単体ではあまり意味がないので他の罠やマップ配置でうまく機能するようにしなければいけません。

 でもこれだけで大人数でのごり押しを抑止できるのでとても有効な罠です。


 こんな感じで色々な罠を第1階層に配置しながらマップを作っていきます。

 ちなみに召還以外にも大した知能を持たない本能だけの、動物のような魔物を沸かせる(・・・・)事も出来ます。

 これらは召還する魔物と違って大して強くもありません。

 所謂雑魚キャラってやつですね。

 ですが、迷路と罠だけの構成では当然ながら時間さえかければ踏破は容易です。そのためにも魔物の配置は必須です。

 でも召還魔物はそれなりに強いのでデンジャーな人々がカチこんでこないようにするためにも低階層には配置できません。

 そこでこの動物的な魔物の出番となるわけです。


 動物的魔物を沸かせるための装置を色んなところに設置して偽装を施します。

 ただ設置したら壊されて終わりです。当然ながらDP(ダンジョンポイント)を消費して設置するので壊されたら出費が嵩むわけですよ。

 偽装にもDP(ダンジョンポイント)がかかりますが、そこは必要経費。

 通路を照らす照明だったり、石壁の石の1つだったり、色々とパターンを変えて偽装を施していきます。


 おっと、いつの間にかに定時ですよ。

 ノー残業がモットーの株式会社ラビリンスファクトリーは素晴らしいほどにホワイトな会社なのですよ。



運営3日目



 2日とちょっとでなんとか第1階層が形になりました!

 迷宮神様に提出するための報告書をガチャガチャキーボードを叩いて作成しますよ。

 会社の備品のデジカメを借りているので、迷宮内部の画像付きです。

 素晴らしい報告書が出来そうですねこれは。


 出来上がった報告書をさっそく迷宮神様に提出してきました。

 研修の成果が活かされた良い迷宮です、とお褒めの言葉を頂きました!


 定時までまだ時間がありますので、私の最強ダンジョン作成計画書に従って第2階層を作っていきますよ!



運営4日目



 研修を受けたとはいえ、第1階層は初めて作ったわけなので時間がかかったわけです。

 でも第2階層は第1階層のノウハウがあるのでさくさくさくさく行くわけですよ!


 基本は通路と部屋での迷路構成。

 人数絞ってごり押しを防ぎつつのー……DP(ダンジョンポイント)回収です。


 さてとても大事なDP(ダンジョンポイント)

 回収方法にはいくつか種類があります。


 一番手っ取り早いのが、迷宮内で何かを殺すことです。SATUBATU!

 でも現代日本人の私ですので、そんなひどい手段はなるべくとりたくありません。

 ですのでこの方法は最終手段的なアレです。


 次の方法は迷宮内で活動させることです。

 活動といっても色々あります。

 ただ単純に迷宮内にいるだけでも呼吸をしているわけで、生命活動をしているわけで。つまりは迷宮にいるだけで活動していることになります。

 ですが! 簡単すぎる方法なのでもちろん見返りは極小なのです。最低値にすら到達するのにかなり時間がかかる方法です。

 しかし、活発な活動――主に戦闘行為をさせるとこれがかなりいい感じの稼ぎになるのです。


 研修で学んだ成果を披露するとですね。

 なんでもこの世界の人々は魔力と言うあの魔法的なエネルギー的なアレを誰しも持っているそうです。

 そして基本的に魔力は生命活動にも密接に関わっており、生きているだけで極々微量ながらも魔力が消費されるのです。

 戦闘行為なんかするとこれがかなりの量消費されるそうで、そのお零れを頂戴するというわけなのですよ。


 もちろん魔法が存在しちゃったりするこの世界ですので、魔法を使ってくれるととっても美味しいそうです。

 それでもSATUBATUしちゃった方がごっそり魔力がゲットできちゃうらしいので効率的にはSATUBATUしちゃう方がいいんだそうです。

 あ、ちなみに魔力をDP(ダンジョンポイント)に変換できるのは迷宮の中だけなんだそうです。

 外でアレやコレやしても意味がないのです。なのでしっかり誘い込みましょう。



運営5日目



 花の金曜日ですよ!

 完全週休2日制の我が株式会社ラビリンスファクトリーはびっくりするほどホワイトです。

 なので明日明後日はお休みですよ!


 お休みのためにもしっかり今日も働きますよ!

 引き続き第2階層の作成をさくさくっとですね。

 第1階層よりもちょっとだけ広く複雑にして完成です。

 報告書をカキカキしてばかーんとプリントアウト!


 しゃっちょさーん、できましたよー。


 なんて砕けた態度は取れませんので、粛々と提出です。迷宮神様は社長様です。お給料くれる人です。あ、神様でした。まぁ同じようなもんです。


 今回もお褒めの言葉頂きましたー! ありゃっしゃーす!



運営6日目



 土曜日曜でガッチリ英気を養ってきましたよ。

 具体的には迷宮神様に頂いたスパ券でスパ祭りしてきました。垢すりとエステが素晴らしい。あれは天国ですね。


 さて、お仕事ですよ。

 第3階層は基本的な構想は第1階層と第2階層と変わりません。

 なので無心で作りこんでいきます。

 というか、低階層は基本的に同じ構成です。コピペ機能が欲しいですね。


 第2階層よりはちょっと広く、ちょっと複雑にして完成です。

 まさかの1日での終わりにちょっとテンション高くなっちゃいますね。

 でも定時なので帰ります。

 報告書は明日書きますよ。ちゃんと書きますよ!


 ガチャコンとタイムカード押してそそくさと退社退社っと。



運営7日目



 報告書をがっつり書いて提出してきました。

 またまたお褒めのお言葉いただきましたー。でも構成的には変わってないのでそんなに褒められると図に乗っちゃいますよ。


 さくさくと第4階層を作りながら、第5階層のことを考えます。


 そう、5という数字はきりがいい。

 研修でも教わりましたが、こういうきりがいい数字にはボス的なアレやコレを配置するのが定番なのです。


 でもまだまだ低階層なワタクシの迷宮ちゃん。


 配置する子も強い子はだめです。ルール抵触即失業。あかんです。まだお給料もらってません。


 なので第5階層は私の最強ダンジョン作成計画書に従って、大部屋どーんの動物魔物大群ばーんでなんとかします。

 一度に入室できる人数も絞り込むので動物魔物の大群ならちょうどいい感じでしょう。

 もちろん一度に出てくる数は多すぎず、少なすぎずの絶妙加減を研修で学んでいますよ!

 失業していった先輩ダンジョンマスターの遺産ってやつです。知識の集積は大事。


 第5階層は大部屋だけじゃなくて動物魔物を即補充できるように色々と人が通れないような通路を延ばしておくのも忘れてはいけません。

 動物魔物だってすぐに沸いてくるわけじゃないんですからね。リポップタイムは必要なのですよ。

 ……まぁ順番待ちが出来るほど盛況になったらという前提条件がいりますけどね。



運営8日目



 第4階層の報告書をがっつり提出して、迷宮神様とお茶飲んできました!

 もちろん私が淹れたお茶ですよ! でもお茶菓子は高級なやつでした。さすが迷宮神様太っ腹ー。


 そんなわけでお仕事の時間ですよ!

 そう、今日はきりのいい第5階層でボス部屋ですよ!

 動物魔物がわんさかぽーんなお部屋なので超簡単です。


 動物魔物の沸く設定なんかをちょちょいと私の最強ダンジョン作成計画書に従って調整して完成!


 報告書に載せた画像が動物魔物だらけなのはご愛嬌でしょうねー。

 迷宮神様の和みっぷりが非常に私にとって和みです。



運営9日目



 第6階層はまだまだ低階層。

 なのでやることは大して変わりません。

 基本構成が同じなのでゴリゴリゴリゴリマップ配置ーの、罠配置ーの、動物魔物配置ーの。


 あ、でもちょっとだけ変わります。


 第5階層まではただの迷路でした。

 でも第6階層からはマッピングがそこそこ難しくなるマップになります。

 ちょっとDP(ダンジョンポイント)がかかるのですが、迷路ばっかりじゃつまらないという私の中のダンジョンマスタースピリッツがざわめくのですよ。


 な・の・で!


 じゃじゃーん、可変式通路~。


 えー、可変式通路とは。

 一定時間毎に通路と部屋を繋ぐ配置が変動します。

 変動中は魔法のドアが一切開かなくなるという条件が付与されますので安全です。挟まれてDEADEND! なんてことにはなりません。安全設計です。


 ただまぁ、当然可変式なのでスペースが必要です。

 なので正確にマッピングしていったらどこが動くかわかっちゃいそうですので、この階層からは広さが段違いになります。

 具体的には3倍くらい。


 可変式通路のおかげでDP(ダンジョンポイント)がかかり、広さが増したのでさらにかかり……。

 計算上ではまだDP(ダンジョンポイント)には余裕があるはずなので大丈夫……。大丈夫。


 迷宮開放日はこっちの都合で決められるので、DP(ダンジョンポイント)を食い尽くさないように気をつけてぎりぎりまで作ってから開放するのがベスト!

 開放が早すぎるとさくっと失業の危険があるし、遅すぎるとDP(ダンジョンポイント)がなくなって動物魔物や罠なんかの維持ができなくなって失業の危機。


 見極めがとても大事です。研修でとても大事です、と2回言われました。



運営10日目



 あっという間に花金です。

 さて我が迷宮はというと――


 現在第6階層の報告書を提出し終わり、スパ券をゲットして第7階層へと着手しております。

 ちょろっとだけ可変式通路の数を増やすだけの簡単な作業です。

 事前の計画がとても大事だとわかる瞬間ですね。私の最強ダンジョン作成計画書さまさまです。


 でもやっぱりコピペが欲しいです。

 あ、でも迷路が単調になってはいけないのです。

 コピペじゃだめですね。ランダム生成機能が欲しいです。あ、別にフリーツール落としくればいいか。


 というわけでいったん会社に戻ってダウンロードしてきました。

 迷宮の方には当然インターネット回線なんて通ってませんので。だって異世界ですよ、異世界。世界観的にもあかんですよ。


 第7階層はある程度進んでしまったのでランダム生成は次の階層から使っていきませう。


 さぁ地道に作りますよー。コツコツが大事ですよー。日本人魂みせますよー。



運営11日目



 スパ最高。

 もう私はスパ行って電気風呂入ってジャグジー入って垢すりしてエステしてぐーすか寝て、友人とその彼氏さんとばったり会ってリア充空中分解しろって念じます。


 さてお仕事ですよー。


 第7階層の報告書は可変式通路が増えたのでDP(ダンジョンポイント)は大丈夫ですか? と聞かれた程度でした。

 収支報告書は迷宮開放日以降の提出となっているのですが、一応いつ言われてもいいように帳簿付けだけはしっかりしてあります。

 まぁ今のところ収入ちょぴっとで、支出ごっそりですしね。

 収入は沸いた動物魔物の生命活動のお零れです。えぇ、ご存知の通りに雀の涙ですよ。

 動物魔物達は本能だけの存在だけど、お互いに食い合ったりしないのですよね。というか動物魔物は迷宮内であれば食事の必要性がないんですけどねー。


 そんなわけでタブレットでつけてる帳簿を迷宮神様にお見せして、計画書関連も併せて説明タイムです。

 いつも穏やかな迷宮神様ですけど、この時ばかりは真剣モードです。凛々しいですね。でも和みます。


 説明タイムが終わって穏やかモードに戻った迷宮神様とお茶してお仕事復帰です。

 ガリガリやりますよー!



運営12日目



 第8階層をゴリゴリ配置して報告書カキカキ。

 第9階層の着手ですよー!


 いやぁランダム生成ツールは素晴らしいですね。

 時短なんてもんじゃないです。もっと早く使ってればよかったですよ、ほんと。


 第9階層もランダム生成ツールのおかげでかなり早く完成しそうなので、第10階層という記念すべき低階層終了のお知らせを、ですね。

 基本的にこの世界では10階層以降は低階層とは呼ばれません。

 とはいっても低階層と呼ばれているからといって油断していいわけではないですけどね。そういうのはデンジャーなナイトメアモードの人達が来るからあっさりSATUBATUされちゃうけど。


 ルールをしっかり守っている私ですので、第10階層は基本に則りちょっと強い子が受け持ちますよ。

 さてそこで問題なのがどんな魔物を召還するか、です。

 もちろん第10階層という記念すべき階層ですので、動物魔物の大群ツアーなんてやりません。そんなのは第5階層で十分です。


 召還魔物にとって迷宮は実家のような安心感ですので、居心地の良い迷宮を土足で荒らす蛮族どもを駆逐するために全力でSATUBATUします。

 でも召還魔物といえど、やはりピンからキリまでいます。

 記念すべき階層とはいえ、強力な召還魔物を配置してしまってはデンジャーご一行がSATUBATUしちゃうのであかんです。


 見極めです。大事です。


 しかして、問題が色々と。

 召還魔物はSATUBATUされちゃうと動物魔物と同じように魔力を迷宮にプレゼントしつつもゴートゥーヘルオアヘブンです。

 SATUBATU苦手な現代人のわたくしとしましては、やはりここは一計を案じるわけですよ。


 実家のような安心感は伊達じゃない!



運営13日目



 第8階層、第9階層の報告書をまとめて提出してお茶でほっこりしてきました。

 今日のお茶菓子は某有名和菓子屋さんのなんとも素敵なアイツでした。具体的には生八ツ橋美味しい。


 さて今日からDP(ダンジョンポイント)がとても減ることになります。

 これまでも赤字だったのが、さらにごっそり赤字になります。

 でも仕方ないのです。これは先行投資。必要経費なのですよ。


 迷宮作成ルールその()

 ・魔物を召還するにはDP(ダンジョンポイント)を消費する。


 このルールのせいなんですけどね!

 でも先輩ダンジョンマスター達よりも私は多くのDP(ダンジョンポイント)をもらっています。研修がんばったボーナスです。

 その大半を注ぎ込みたいと思います。

 かなりの量です。大盤振る舞いです。可変式通路なんて目じゃないです。迷宮神様からちょっと心配されたほどです。でも大丈夫。ワタシ、ゲンキ。


 さてそれではさっそくやってみましょうか。


 THE召還!


 といってもいつものように空中投影型ディスプレイをちょちょっと操作するだけなんですけどね。


 私の目の前に魔方陣がクルクルと回転して現れ、上から下へと降りれば召還完了です。お手軽ですね。

 でも見ごたえありました。


「わっちを呼ぶとはなかなか度胸がありんす」


 高そうな着物を着崩してとても艶やかな雰囲気を振りまいているこの美人さんが召還された魔物です。

 同性の私から見てもとてもエロイですね。えぇ、エロイです。

 その9本ある尻尾がとてもエロイですね。もふっていいですか。いいですよね。

 あ、逃げないでください。逃げんなこら!



運営14日目



 基本的に召還魔物は召還主に逆らえません。

 召還に応じた時点でそういう風になるそうです。そういう風になるのが嫌なら召還を拒否すればいいのです。でも迷宮は実家のような安心感なのでほとんどの場合は喜んで召還されるそうです。


 私に尻尾をもふられているこの美人さん――白面九尾のきゅーちゃんも昨日はふてぶてしい態度をとっていましたが今ではとても従順に尻尾を差し出してくれてます。うむ、素晴らしいでありんす。

 ちょっと涙目なのがまたいいですね。私のドSスピリッツが擽られます。


 さておふざけはこの辺にしてお仕事ですよ。


 きゅーちゃんにもお仕事してもらいます。ただで実家のような安心感を得られるなんて幻想ですからね。ぶち壊しますよ。

 きゅーちゃんは白面九尾なので幻術とかそういう系統の魔法のエキスパートってやつです。

 伊達にDP(ダンジョンポイント)大量喰いしてないです。


 きゅーちゃんのお仕事は至って単純。

 第10階層以降の召還魔物を幻術で保護すること。

 しかしこれが白面九尾という魔界においても最強の一角とされる魔物でも無理な所業なのです。

 なのでダンジョンマスターとして、迷宮のシステムをフル活用して実現させるのです。


 きゅーちゃんにはちょっと大変なお仕事になるけれど、軌道に乗ったら彼女の眷属とかも召還して手伝わせるから最初だけ最初だけ。先っちょだけだから!


 第10階層全域を1つの罠として作成し、その罠をきゅーちゃんの幻術でフルサポート。

 きゅーちゃんちょっとヘロヘロですが、まぁ1回幻術走らせちゃえばあとはシステムがサポートしてくれるから大丈夫。大丈夫、たぶん。


 ばたんきゅーしてしまった魔界最強の一角な子をお昼寝用に設置しておいたベッドにポイして私はお仕事です。

 第10階層はそんなに広くないのに、まったく使えない子ですね。面積が広くなればなるほど大変になるのに第11階層以降の階層の作成大丈夫なのかなぁ。



運営15日目



 出社したらきゅーちゃん復活してました。

 そーっときゅーちゃん用に用意した部屋を覗いてみたらとてもリラックスしていたので、大きな声で挨拶をしてあげたら飛び跳ねんばかりに驚いてました。涙目きゅーちゃん可愛いです。


 さぁお仕事ですよ。


 あ、でもその前に第10階層の報告書をカキカキです。

 タブレットで報告書書いてたらきゅーちゃんが物珍しそうな目で見てくるので、ちょっとだけ触らせたらものすごく驚いてました。驚いてるきゅーちゃん可愛いです。涙目はもっと可愛いです。


 きゅーちゃんにとって現代の電子機器は珍しいようです。

 というか研修で習った魔界の文明は、文明レベルがチグハグすぎて場所場所で発展度合いの落差が激しいようです。

 きゅーちゃんがいた場所では現代日本の文明レベルは高すぎたようです。どっちかっていうと安土桃山とかその辺?


 会話の相手が出来たのはいいのですけど、いちいち説明するのが面倒ですね。でもきゅーちゃんは好奇心旺盛なようで質問が多いです。涙目どこいった。


 いつもより報告書の作成にちょっと時間をとられたけれど、さくっと提出してお茶してきました。

 その間きゅーちゃんはお留守番です。

 当然ですが、私しか世界間の移動はできません。きゅーちゃんがついてこようとしてたけど思いっきり世界間転移門――これで移動してる――で弾かれてました。

 涙目きゅーちゃん可愛いです。


 あ、ちなみに迷宮神様がきゅーちゃんを召還できたことを驚いてました。アレでも一応魔界最強の一角ですからねー。

 やっぱり事前にお稲荷さん買って来ておいたのがよかったのかな。結局私が食べたけど。


 でもDP(ダンジョンポイント)の消費が凄まじいことになっているので、その辺を心配されました。

 でも大丈夫。


 だってもうすぐ迷宮開放するからね!


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