見つけた
今話は、少しばかり書き方が堅いやもしれません。
よろしければ慈悲で覗いて行ってください。
ワタシの存在をあの人はまだ覚えているだろうか。
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ある雨が香る秋の日のこと、大きな木の根元で彼女は泣いていた。
誰にも見つからないように、知られないように。私の目から流れる涙も口から漏れる音もこの雨が消してくれる。醜く歪んでしまった顔は、この黒く染まった雲が隠してくれる。
(胸の奥が・・・痛い。)
火照った体に冷たい雨が沿って流れる。
こんな心地いい雨でも、心に負ってしまった傷は癒すことはできないだろう。
こんな傷見てみぬふりをすればいい。自分を・・・殺せ。
「なぜ、泣いている。」
突然の質問は私を驚かせるのに十分な中性的な男の子の声がした。
「・・・!!!」
(ここに来て人に会ったことなんてないのに。なんで今日に限って。)
勝手に運命を呪いながら私は、うつむいたまま固まった。
顔を伏せている自分の二本の腕の隙間から小さな足が目に映る。
(・・・細くて白い。)
私は、冷静にそう思った。でも今は・・・人と関わりたくない。
怖い。感情で胸が潰れそうだ。顔なんて上がらない。
「・・で。」
「・・・?」
「・・・私にかまわないで!!」
語尾に力が入りすぎて声が擦れる。そんなの関係ない・・・私から離れてくれたらそれでいい。人との馴れ合いなんて・・・。いらない。
どれほど時間が経っただろうか・・・雨とは違う心地よさを背中感じた私は周囲の変化に不安を覚える。
そして、うつむいた目には光が入り。
次の瞬間細い何かが腕に触れた。
手だった。無言で私の手を握っているその手は、振り払えばすぐに折れてしまいそうなほど細く弱々しく見える。思いもよらぬ出来事に私は、上を向かざるおえなかった。
私は知らなかったのだ。
雲間から顔を出して神々しく輝く太陽も。横でずっしりと構えてる木が、銀杏の木だったことも。私の手をつかんだ人が自分と同じくらいの男の子で、この光照らされた銀杏の葉と同じ色の瞳をしていたことも。
知らなかったんだ。
(なんてきれいなのだろう。)
すべてがはじめてな景色に心奪われていた。
言葉なんて出ない。いらない。そう思える。この感情は景色に対してなのかそれとも・・・?鼓動がだんだん早くなって、何とも言えない感情に襲われるのがわかる。
目の前にいる彼の瞳はまっすぐ私の目を見ていて、握られた手は雨のように冷い。でも、それが自分が泣いていたことなんて忘れてしまうほどに心地いい。
その時私は彼が・・・彼が、頬に伝う雨のせいか泣いているように見えたんだ。
お立ち寄りいただきありがとうございます。
まだまだ書いていきたいと思うのでよろしくお願いします。