5.モフモフ
「おはようございます」
「おはよう、今日も暑そうだねぇ」
起床後顔を洗いテーブルに着いた。
「朝御飯用意するねー」
目を擦っていたリウィはコクリと頷き顔を上げ目の前を見た。
そこには太陽の光を浴びてまるまる太った……ワイルドカーゴがそこにいた。
ワイルドカーゴとはC+のモンスターで愛くるしさが残る顔に鋭い牙があるモンスターである。
大切なことなのでもう一度言おう。モンスターである。
「……!?」
ハッと直ぐにその場から離れ抜刀姿勢になった。
「ガウ? 」
相も変わらずワイルドカーゴは机の上で見繕いしていた。
「神は私にどうしろというのでしょうか…」
リウィは元来愛くるしい物には弱く一般的に言われる可愛い物大好き症候群だった。
「あぁ、可愛い。しかしモンスターなのだから殺さないといけないのだろうか。いや可愛いは正義のはず。可愛ければ許されるという言葉もあるし誠意をもって接すれば…ッ」
リウィの妄想が口から出ていくのを本人は気づかずひたすら言葉が流れていく。
「フィーここにいたのね。勝手に出て行っちゃあダメっていったでしょー」
「ニャー」
居合の姿勢のまま顔を声をしたほうに向けた。
――飼い主……? だろうか。モフモフしていいか頼んでみて良いのでしょうか? モフモフいいですよねモフモフ。あぁあのカーゴに頬ずりしたい。
リウィの脳内でいけない物があふれ出そうなのを我慢し声をかけた。
「此方のワイルドカーゴは貴方が飼っているのですか? 」
「えぇ、そうよ。貴方は?」
「私はリウィと申します。ところでテイマーの方なのでしょうか?」
「御叮嚀にどうも。私はリーゼだよ。その子を飼ってる時点でテイマーしかいないわ」
少しはにかんだようにリーゼは自己紹介をした。
「リーゼさん至急御願いしたことがあるのですが宜しいですか?」
「初対面の私に頼みたいこと? 内容次第だけどその前にそのフードを取ってもらえないかしら? 顔も見えない相手の御願いはさすがに聞けないわ」
頭がトリップしたリウィは躊躇せずにフードを脱いだ。
「これで宜しいでしょうか?それで御願いというものですg
「キャーカワイイッー」
……ハッ! いやあの抱きつかないで頂きたいのですが」
正気に戻り心の中で自分を叱咤するリウィは周りのことを意識していなかった。
「なにこの可愛い子! あぁもうお持ち帰りしたい! いやもう私の部屋に来なさい! 」
「ち、ちょっと待ってください!息が苦しいです、それと私は男です! 」
顔を抱きかかえられた状態で部屋に連れ込まれようとしたリウィは慌てて言い放った
「男の子!? えぇ!? その顔で……」
正気に戻ったように驚いたリーゼはリウィの顔を見ながらぶつぶつ言いだし始めた。
――こんなに可愛いのだし男の子でもいいわよね、いやむしろ男の子ならあんなことやこんなことも、フ
フフ。
「それでリウィ君の頼みっていうのは何かな? 」
「貴方のカーゴを私に少し触らせて頂きたいのです」
「フィーを触りたい? 別に構わないわよ」
リーゼはそういうとリウィに近づきフィーを抱っこさせた。
――あぁ、可愛い可愛い可愛い可愛い。この肉球が愛しい。このモフモフ感が愛しい。
私はこれで後100年は頑張れるんだろう……あぁほんとに可愛いモフモフ
リウィはフィーを抱っこして体を撫で頬を撫で頭を撫でくまなく全身に触れて幸福感に包まれた。
「あぁ可愛い、なんて可愛い子なのかしら。ただでさえ可愛いのにフィーと一緒のところを見ると……もう何とも言えないわねこの気持ちは」
リウィ+フィーの様子を見たリーゼは頬を赤く染めてぶつぶつ呟いていた。
一方その頃厨房で働いていたコックの方々は……。
「なぁ、さっきからホールのほうがうるさくないか?」
「だなー。朝っぱらからいったい何があったのやら」
「ちょっと見に行かないか?」
「いやいや作り終えてからならまだしも駄目だろ」
「なら俺一人で見てくる」
「おいおい……後で怒られても知らないからなー?」
厨房から一人のコックが出てリウィたちのほうを見た。
「……わっつはーぷん?」(……何があった?)
全身黒尽くめだった冒険者がフードを外すのはまぁ置いておこう。普通だからなうん。
しかしなんだ。あの、その、うん。
「美少女!?い、いやいやその前になんでワイルドカーゴと戯れてるんだ…っ…?」
そんなコックの言葉は風化されていった。