1.幸せとは何か
前に書いていた物に加筆・修正を行ったものを再度投稿。
「そろそろ儂にもお迎えが来るらしい。リウィよ、儂をアーリアの隣に埋めておいてくれ」
「分かりました」
「これからお前は儂の元から離れて自由になる。まずはこの森から出て付近の村に行き、
世界を見てまわりなさい。」
「捨て子だった私を今まで育ててくださってありがとうございました」
リウィは深く…深く頭を下げた。
「何度も言うが儂に感謝の心を持つ必要はない。儂は幸せな子として育てることをできなかった。
ただひたすらこの世を生き抜く方法を教えることしかできなかったのだから…」
「それでも私は感謝しております。私は親の顔も知りません。私はあなただけが家族だったのですから…」
「お前は自分で考えて行動できる。人を殺すのも良いだろう。魔物を殺すのも良いだろう。
儂はお前の行動をすべて認めよう。自由という翼を授ける代わりに後ろめたい部分を儂がもらって逝こう
だからお前は幸せな人生を歩んでくれ…儂の最後の願いだ…」
ゆっくりと眼を下げ息を引き取った師をアーリアの隣に埋め
この青年には珍しく顔をゆがめ…その場を後にした。
リウィは師から貰った愛刀を腰に差し、暗器を装備し、森から出るべく歩いていった。
森の外に出る前にサーシャとロイに会おうと思い、エルフの集落に向かった。
「お、リウィじゃないか!久しぶりだな。元気だったか?」
私の姿を見かけたロイが声をかけてきた。
「お久しぶりです、ロイさん。私は元気ですよ。」
「そうかそうか、それはいいことだ。この頃は来てくれなかったから心配していたんだぞ。
時にあのじーさんはいないのかい?何時も二人できてただろう?」
「イルさんは…先程天に召されました…。そのことをお伝えしに来たのです。」
「!?…そうか。じーさんも年だったからな…。俺はあのじーさんのことが好きだったんだがなぁ」
昔を懐かしむように目を細めてロイが言った。
エルフは元来長寿の種族であり人間と比べて何世代物の時を生きる種族である。
ロイを含むエルフは死ぬまでに人の死を何回も見る…エルフだからこそ耐えれられる物である。
「そんじゃあリウィはこれからどうするんだ?」
「私はこれから森を出て世界を見にいこうと思います」
「そうか。寂しくなるなぁ。サーシャのことはどうするんだ?リウィも気づいてるんだろ?」
「気づいていますがこのまま消えていこうと思います。それが良いと思うので」
「うーむ、俺は後が怖いと思うからやめたほうがいいとはおも
「リウィ!来たのね!なんで私のところにきてくれなかったの!?」
噂をすれば何とやらというもんだなぁ」
サーシャは私を見て走ってくる。
「リウィ、お久しぶりね。元気にしてたかしら?」
「はい、サーシャも元気のようですね」
私はサーシャに笑顔で挨拶をした。
「わ、私はいつでも元気よ。それよりロイと何の話をしていたのかしら?」
少し顔を赤くしていたが、話をそらすように言った。
「あぁ…イルが亡くなったことをリウィが知らせに来てくれたんだ」
「…イルが…そう。彼もまた逝ったのね」
サーシャは顔を手で隠すようにして涙をふき取った。
「サーシャ、私はイルの願いを果たしていこうと思う、当分ここには戻ってこれないと思う」
「イルが貴方に託した願いって?」
鼻声になりつつもサーシャは聞き返した。
「私は幸せに生きなければいけないらしい、世界を見てまわっていくことにした」
「永遠の別れではないのよね?」
「私はまだ死ぬわけにはいかない、ちゃんと帰ってくる。」
「なら私はあなたを待ち続けるわ…私はリウィのことが…だから」
暫く話をした後リウィは森の外へ歩いて行った。
「リウィはきっとこれから色々大変だろうなぁ、こんなにもお前を思っている女がいるというのに…」
「私のことはいいのよ。別にほかの人間のことを好きになっても私はいいの。幸せになってくれたら…」
リウィは自分が思っているほどに心配されているなどとは思っていなかった。
しかし彼らエルフはリウィのことを親友、また家族のように思っていた。